社会人短期合格ゴッパチ太郎丸さんの合格体験記
勉強期間1年8ヶ月、社会人ゴッパチ短期合格の太郎丸さんの合格体験記。社会人受験生には大いに役に立つものと思います。
略歴
大学卒業後新卒で事業会社に就職、数年間勤務後、公認会計士試験を目指し、会計事務所に転職。働きながら勉強し2年弱で合格。2021年1月より公認会計士試験勉強を開始(簿記2級程度の知識と経理実務経験あり)
2021年12月短答式試験不合格、2022年5月短答式試験合格、2022年8月論文式試験合格。
年齢:20代後半 予備校:CPA会計学院通信校
得意科目:管理会計、監査論
苦手科目:特になし(12月短答までは財務計算)
公認会計士を目指した理由:
会社・組織のために与えられた業務に取り組むというよりもっと自分自身に軸をもって1プレイヤーとして働いていきたいと考えたため。一方で自分の地頭と能力だけを頼りにコンサルや外資にそのまま転職して勝負していくのは不安があったため資格を取って軸を作ろうと考えた。会計士資格は集中すれば短期で取得可能でありその後の選択肢も広いことから決めた。
どんな方向けか
今から公認会計士をめざそうという大学生の方は多くの体験記がネットにもありますし、周りに聞ける方もたくさんいるかと思いますので、私は社会人になって会計士を目指そうと考えている方向けという形で書きたいと思います。また勉強方法に関しては後半で書きますが基本的に専門学校が想定する勉強方法に則り特別なことをやったという意識はありません。
そのため、「勉強をはじめるに当たっての心構え」と「社会人としていかに勉強する環境をつくっていくか」という部分を中心に書いて行きたいと思います。
また、よくNoteなどでみる体験談風の武勇伝や合格者としてのポジショントークにならないよう最大限客観的に書くよう注意しますが、あくまで一個人の体験でしかないという点に関してはご容赦いただきますよう、お願い致します。
はじめに
令和4年公認会計士試験の合格率は7.7%、そのなかで社会人の合格率は2.9%にとどまっています。まず一般論として理解していておくべきなのは、社会人を続けながらの受験は学生や専念にくらべ遥かに大変ということです。
一方で公認会計士試験そのものは多くの諸先輩方が語っているように「やればできる試験」です。
特別なひらめきや自頭を要する選ばれた人にのみ合格できる試験ではなく、時間をかけて基礎を積み重ねれば合格できる試験です。その点に関しては実際に試験を受けた私も大いに同意しています。
そのため働きながらの受験を目指す場合の基本方針はいかに勉強時間を最大化するかであると私は考えています。
特別な勉強方法をすれば普通の受験生の半分の時間で覚えられるなどの魔法はありません。常に勉強方法を見直し効率化を図るのは当然としても、効率だけでは時間は補うことはできないというのは勉強を始める上で肝に銘じるべきだと思います。
1.時間を確保するために
学生であれば勉強時間を増やすために重要なのは動機づけなどのモチベーションの部分のように思います。つまり勉強以外の時間、遊びやダラダラする時間を削れば自ずと勉強時間は確保できます。一方で社会人は日中の多くの時間を自分ではコントロールできません。社会人である以上、勉強の最大の障害はいうまでもなく働いている事自体です。
そもそもになりますが、社会人で会計士を今から目指している方がいればよく考えていただきたいのは、本当に今の仕事を続ける必要があるかということです。
公認会計士を取った後はほぼ100%現在の仕事は辞め監査法人への就職を目指すはずです。金銭的な理由であるなら会計事務所や税理士法人など関連する業種でアルバイトでも経験を積みながら働けないか、現在の仕事への想いが理由なら会計士を選ぶ必要があるのか、その点は勉強を始める前に整理するべきだと思います。
そのなかで会計士にならなくても働けている環境から、働きながら勉強することを前提とした環境に変えるのは有効な手段です。
自分の場合は、「前職の事業会社では時間の確保が不可能」・「少しでも合格後に向けて経験を積みたかった」・「最短でも1年半以上かかることから専念するにはやや長いと感じた」、等の理由から会計事務所に転職し勉強を行っていました。
事実、データでみても会計事務所員の合格率は学生の10%に次ぐ9.4%、合格者数も会社員94人に対し72人と同じ選択している人は少なくないようです。
勉強 総論
前段が長がったですがここから勉強の話をしていきたいと思います。最初の方にも書きましたが私の基本方針は、質だけでは時間を補えないということです。予備校ごとの教材や講師の違いは気になるところですし、事実私も直前期は他予備校の模試なども受けましたが、何をやるか・どのようにやるかは程度の差でしかなく、結局のところ勉強において大事なのは覚えるまでやりきれるかに尽きます。
とはいえ、これではあまりに乱暴なので私が勉強する上で意識していたことを整理して行きたいと思います。
勉強開始~12月短答
自分は始めた時期が若干遅く、通信生だったことからとにかく大量の講義のビデオを見るのがまず優先でした。仕事後夜に講義受講・復習して翌日計算・復習というサイクルで進めていたように思います。再生速度は1.5~2倍で流していました。理解できなくなるのは話す速度についていけなくなるから起こるのではなく、理論の展開に追いつけないときに起こるものだと思うので早めで流し疑問に思ったら少し戻すというのをおすすめします。
この時点では完璧を目指すのではなくある程度理解したら次々見ていくので問題ありません。ただ理論に関しては勉強しているうちにその科目特有の考え方がわかってきて、以前はピンとこなかったものが理解できるようになるということがありますが、計算に関しては分からないものは分からないままです。そのため、理解の穴は作らないようにするのは意識すべきです。
今振り返って1点だけ後悔していることがあるとすれば財務・管理の計算演習を講義一巡後あまりしなかったことです。
すぐに企業、監査の講義に進み計算をやり込まなかった点は明確に失敗でした。計算・理論のどっちで点数を引っ張るかは戦略次第ですが計算に不安を抱えた状況は避けたほうがいいかと思います。
計算だけで一日かけるような勉強ができるのは財務・管理の終了後の期間なのでここは計算を集中するべきというのが私からのアドバイスです。事実12月短答式試験の不合格の最大の要因は財務計算でした。
12月~5月短答
12月の不合格を計算の演習不足と原因付け、5月の短答までは計算は定期的にやりながら論文の勉強を中心に行っていました。おそらくここでどこまで論文に比重をおくかは5月-8月合格の上で難しい部分かと思います。
私の経験で言えば、ノータッチの範囲があるというレベルでなく多少基礎の理解に不安があるという程度であれば論文に集中するのがいいかと思います。
間違いなく企業・監査・財務理論に関しては論文の勉強をすること自体が理解を深めるのに役立ちます。また企業・監査は論文の書き方にお作法のようなものがあり、早い段階でなれておいたほうがいいです。これは5月の短答式後に集中してやるというのではかなり厳しいものと思います。またいずれの科目も理解の根底には暗記があるので、論文を勉強することと短答レベルの知識を維持することはそれほど異なる作業ではありません。
また租税に関しても5月までに理論以外の範囲は終わらせていました。もちろん短答に特化する期間のうちに忘れるのですが講義を見終えておくのは精神的には大きなアドバンテージになります。
5月の試験を前にどの段階で短答に特化するかはチキンレースのような部分があるかと思います。
論文の勉強を続けるほど、次の8月の可能性は高まりますが5月の試験を受からないことには次はありません。
自分の場合は、1ヶ月前に租税は終了、財務の理論は1ヶ月前から知識重視、企業法・監査は2週間前から短答問題集をやり直し、原価計算基準は1週間前からという大まかなスケジュールでした。
この頃には計算にすでにある程度自信があったため理論の細かい部分までやらないといけないという強迫観念がなくギリギリまで論文の教材を使いながら短答も意識するという勉強方法でした。都度短答式の答練があるのでその結果を踏まえ切り替える時期は探ることになるかと思います。
5月~8月
ここから租税の理論及び選択科目の経営学の勉強、並行してやっていなかった答練の提出を行っていました。このあたりから電卓をたたくような計算演習は答練以外ではほとんどしていませんでした。答練で解くときも時間配分やメモの精度などの見直しを中心に行っていました。逆にいうとこの短答までに計算の習熟度は論文を見据えたレベルまで上げておくのが重要と思います。理論科目に関しては過度に体裁に拘り過ぎないのが重要だと思います。模範解答のレベル感を目指すとなるといくら時間があっても足りませんし、最優先は論点を抑え込むことです。もちろん最低限の論理的な文章の展開はパターン化すべきですが、この点は日々業務で文書の作成に慣れている社会人であれば学生に対してアドバンテージを取れる部分かと思います。
社会人で5-8というとかなりハードなイメージもあるかと思われますが感覚としては時間が足りないというのはありませんでした。もちろん数ヶ月余分にあればより精度の高い記憶ができたようには思いますが、ここから先の伸びはかなり緩やかだろうというのが実感でした。
勉強法 科目別
・財務計算
短答・論文:財務の計算は最も短答・論文で勉強方法に違いがないものかと思います。全体を占める割合も大きく中心となる科目のため、予備校からかなり細かく勉強方法の指示があるかと思いますが、問題集の例題を中心に反復していくことになります。
まとめのノートをつくるべきかというのは意見が分かれるところかと思いますが私の場合は論点ごとに計算時の下書き集を作っていました。慣れてきたら電卓は叩かずに頭で計算するのみの勉強をするのも良いですが、下書きの書き方はパターン化していつでも迷わずかける状態にするのが重要です。
問題文を読むというより、問題を見た瞬間にその論点に関連して解くのに必要な条件を探して拾い、下書きのパターンに落とし込んでいくというイメージが理想かと思います。仕訳に関しては仕訳を覚え込むというより、どこの条件の変化がBS,PLの各勘定科目にどういうインパクト与えるかを把握しておくというのが重要です。
論文に向けてという部分では論文になると、最短で答えだけ出す短答と違い中問のなかにいくつか小問がある形式になるため下書きの書き方を少し見直すというところだと思います。
くだらないところでは、当初はシャーペンで問題を解いていたのですが、読みにくさからフリクションの3色に変えたところ視認性があがり下書きの精度が上がりました。
・財務理論
短答:講義受講後、12月短答まではコンサマ(予備校の論点まとめ用の小型テキスト)を中心に短答問題集を回していました。短答レベルでは体系的な理解は不要なため暗記科目という理解でいいと思います。というよりある程度暗記して知識が定着することで体系的な部分が見えてくるのでそのなかで「つまりこういうことでは?」、「この基準とこの基準で同じ考え方をしているな」と理解を深めテキストと予備校への質問で方向を修正するということでいいと思います。
論文:論文に関しても求められる水準は高くなく典型論点をどれだけ抑えているかになります。勉強法は短答と同様に各基準の理解、似た基準間でのつながりを意識という流れです。ただ論文用の問題集というのが結構各基準の論点を把握し理解するのに便利で、5月の短答に向けてはかなり直前まで論文問題集を回していました。
管理会計
短答・論文:管理会計は受験戦略上で言えばコスパの悪い科目です。短答では100%解ききれない量の計算問題が出ますし、論文も解ききることより時間配分に気をつけて効率よく点数を拾うことが重要になります。ただしそのような他科目とのバランスや力の入れ方を意識するのはせいぜい全科目が1周終わり直前期の答練が始まった時期で十分です。なぜなら、管理は財務以上に計算に慣れが重要でありそのためには初期はある程度集中的にやったほうが効率は良いためです。管理で稼ぐというような戦略はリスクがありますが、少なくとも点数が少ないからと苦手意識をもったまま望むのは避けたいです。
勉強方法に関しては財務の計算と同様に自分なりの下書きのパターンに落とし込むという点は同じで、その点では下書き集も有用だと思います。財務計算との違いでいうと管理会計の場合は、より細かいところで足すのか引くのか、どの数値を使うのかなどの判断が多くなります。
そのため財務のように例題ですべてのパターンを毎度練習するのは極めて効率が悪くなります。予備校の論点まとめなどを使った、手を動かさない頭のなかでのパターンの精緻化は定期的に行うのが重要です。
また、キャッシュフローや総合原価計算などの短答の計算ではほとんど使わないが論文では使う論点の習熟をどこまでやるかという点ですが、私としては全範囲終わったあとでも早いタイミングで一度は習熟しておくべきだと思います。そうしないとそもそも講義を受けた意味がないですし、理解したけど忘れたものをやり直すのと短答で切った論点を後でやるのでは全く意味合いが違うためです。
短答・論文ともに理論は範囲が多くないためやるべきことはほとんど迷わないかと思います。
企業法
短答:短答の段階で条文をどこまでみるかというところですが私としては不要だと思います。というより短答の段階で条文をみたところで、実際に自分で記述する段階にならないと条文の重要性を理解できないように思います。短答の注意点としては短答問題集にこだわらないという点です。よく短答での定番の引っ掛け方まで覚えると聞きますがあればやりすぎだと思います。基本はテキストを読み込んで体系的に理解することがはるかに重要です。論文:論文対策は仮に12月で落ちても早い段階で必ずやるべきだと思います。企業法そのものへの理解度がはるかに上がりますし5月の短答にも良い影響があるように思います。まず手を付けるべきは典型論点の理解です。完全に覚えられなくとも論点を知らないなかでは記述の書き方や解説の講義もほとんど理解できないかと思うので、少なくともどの典型論点に紐づいているか問題をみて分かる程度にはまずやるべきかと思います。
監査
短答:短答の監査は、最も理解から解ける状態までの差が少ない科目であると思っています。講義が終わって2周程度し理解ができていれば短答問題集をやってなくとも試験問題が解けるはずです。そのため企業法同様に基本はテキストになります。テキストを読む際は漫然と文章を読むのでなく、よく言われることですが次のことを思い出しながら点と点を結びつける意識が重要です。論文:企業のように論文で大きく変わるということはなく基本テキスト中心でやっていきます。その際にテキストの表現のまま理解していくというのを意識していました。つまり、難しい表現を自分なりの言葉で表現できるようになるのも理解の一つのですが最終的に目指すのは難しい概念を監査特有の難しい表現で説明できるようになるということです。そのため読み下して理解するのも最初は重要ですが、徐々にその監査特有の表現に違和感がないように理解して行くのが重要です。
租税
租税は全体像の把握が一番大変な科目です。一つの考え方に基づいて説明できるのではなくとにかく例外の例外が多く論点ごとの個別性が高いです。そのため短いスパンで反復していくことが重要になります。私が他の計算科目以上に意識していたのは覚えることの濃淡です。管理の計算などは細かい部分で曖昧なところがあると計算を解く上で一切数字が合わなくなるため比較的細かい部分も覚える以上は完璧にする必要があります。
一方で租税は問題が独立して点数が取れる部分が多いため、細かいところは捨てても総崩れのようにはなりません。そのためテキストを高頻度で反復すべきこと、計算演習通じ下書きのパターンで覚えること、直前に確認しておくことに分けて少ない時間で回転できる状況を作っておくのが重要です。
まとめ
どこかで聞いた話の受け売りですが、結果を出すために重要な要素は、①環境を変えること、
②時間の使い方を変えること、
③付き合う人を変えること
の3つ、最も結果につながらないのは意識を変えること、だそうです。
社会人で会計士を目指す場合、勉強以前の部分でその成功は大きく左右されるように思います。どこまで合格のためにリスクを取れるのかきちんと見極めたら後は、淡々と日々こなして行くだけです。この記事がこれから目指される方の一助になることを願っています。
備考
働きながら会計士を目指される方で転職や働く環境を変えたいと思われるかたは以下が多少参考になるかもしれません。・CPA会計学院:受講生向けにアルバイトや契約社員などの案内を積極的に行っています。一度校舎で話を聞けばそのような紹介やアドバイスがあるかもしれません。
・マイナビ会計士:公認会計士でなく勉強中の方であっても求人の案内などがあると聞いていいます。
・EYトレーニー採用:大手ではおそらく唯一、短答合格以前の無資格での採用があります。かなり倍率は厳しいと聞きますが環境的には一番恵まれていると思います。
・USCPA:監査業界が人手不足ということもありUSCPAであっても現在であれば監査法人への転職は現在容易です。会社を辞めるほどのリスクは取れないという場合、比較的取得の時間がかからず場合によっては社内でのキャリアアップにも有用なUSCPAは選択肢になると思います。また会計士に対して格落ちのイメージを持っている人もいるかも知れませんが、会計方面にキャリアチェンジするという意味では十分な資格だと思います。
開示答案
・全体感
試験直後の実感と成績通知の得点率、また開示された素点でかなり感覚に差異がありました。原因としては、あっているつもりだった計算がかなり外れていたことと、手応えのなかった理論問題で思ったより点数が来ていたことです。このあたりの得点の感覚は、理想をいえば勉強中から講師やチューターへの質問や受験生全体のレベル感を把握することで身につけられれば最高ですが、実際には難しいのではないかと思います。
特に記述に関して、本試験は良く言えばこっちの趣旨を読み取ってかなり好意的につけてくれたような印象です。予備校ではテキストにいかに沿って記述するかに拘りかちですが、実際は大筋を押さえて構成が破綻していなければ十分加点されているように感じました(予備校ごとにテキストは違うので当然いえば当然ではありますが)
結果として本来想定していた全ての科目で安定させ大きく取りこぼさないという方針とは異なる、大きく稼いだ科目で計算の穴を埋めるという形になってしまいました。安定して合格したい人は計算で絶対取りこぼさないことを目指すべきだと思います。
個別反省
会計学午前
焦りから検算よりも時間一杯計算問題に時間を費やしてしまったが、結果としては比較的計算で稼ぐことが出来た。開示答案 会計学 午前(管理会計)
会計学午後
管理会計が時間配分に成功した一方こちらは完全に時間配分を誤った。初見の問題や方向性が見えない記述に時間を費やしすぎ落としてはならない計算を落とすことになった。開示答案 会計学 午後(財務会計)
監査
実感に反して点数が上ブレした。四半期に関しての第2問はもちろん、典型問題に関してもさほど高い精度で書けたとは思わなかったが点数を見る限り要点は押さえていたのだと思う。相対試験であるという意味を最も感じた。開示答案 監査論
企業
どちらも見覚えのある問題であり、その点は正直予備校選びの運が良かった面もあると思う。第2問は終了間際に大幅に結論を変えて書き直してしまい、結果として点を落としてしまった。開示答案 企業法
租税
試験直後の実感では租税が一番できているはずだった。解きながら手応えがある分、検算がおざなりになったのだと思う。中途半端な計算の習熟度は過信を生み、試験上もっとも怖いと感じた。開示答案 租税法
経営学
結論からいえば直前期に時間をかけすぎたのだと思う。あまり稼げている実感はなかった。開示答案 経営学