ヒロさん、社会人経験&一発合格!

社会人経験&一発合格を果たした勉強法-ヒロ

1 はじめに

 ヒロと申します。私は5年間の社会人生活を経た上で、2006年7月(28歳)に退職し、受験専念の形で会計士試験を志しました。
 受験予備校としてはTACのみに通いました。そして、2007年の公認会計士試験に合格しました。

 したがって、勉強期間は1年4ヶ月のいわゆる一発合格の形となります。社会人経験を経て、会計士試験に挑戦している、その挑戦を検討している方、もしくはそれ以外の方の参考になればと思い、今回、体験記を執筆させていただくことになりました。

2 会計士試験を志した理由

 まず、私が公認会計士試験を志した理由ですが、前職においては、企業の基幹システムにERPを導入するシステムコンサルティングの仕事をしており、私の専門分野は、販売管理や在庫管理でした。

 ERPシステムというのは、販売、購買、経理、財務といった企業の事業活動を1システムで構築するのが通例です。

 そのため、たとえ販売管理や購買管理を担当領域としていても、販売や購買活動によって、会計上どのような処理がなされるかを知らなければコンサルティングを行なうことは出来ず、会計についての知識も要求される業務内容でした。当業務を5年行い、さらに自分がステップアップするためには、制度会計という基準を深く理解する必要があると認識しました。

 具体例を挙げるとすれば、例えば販売プロセスにおいて、売上の計上基準は出荷基準なのか、検収基準なのか、それとも別なのかについて、制度会計的に正しい基準を知らなければ、クライアントに対して正しい提案することなど出来ないというイメージで考えてください。そして、その制度会計の基準を理解するためには、現場実務を重ねることよりも、むしろ理論的に体系だった学習をする必要があると考えました。そこで、私が考えた選択肢は、以下のとおりです。

(1) 会社の研修、ビジネススクール、大学院等で習得する。

(2) 制度会計の基準に照らして会社の財務活動の適正性を評価することを職務とする公認会計士資格をとり、試験勉強および実務において習得する。

そして、28歳という年齢を考え、(2)を挑戦することも決して遅くはない、今挑戦しなければ、一生後悔するかもしれないと思い、(2)に挑戦すること決めました。

 そして、挑戦するにあたっては、試験のレベルを知る必要があると考え、検討したところ仕事を続けながら挑戦することは私にとっては難しいと判断し、退職し、受験専念の形でこの試験に挑戦いたしました。

3.全般的事項

 ここでは、私が受験勉強中に感じた後に続く方にアドバイスできる項目を挙げさせていただきます。

3-1 【全科目を平均的に高い水準に持っていく】

 この試験を受験するにあたっては、試験についてよく調べる必要があると考えます。どんな科目があるのか、各科目の内容は当然ですが、短答式、論文式の試験の合格基準を理解した上で勉強を進めることをお勧めします。

 具体的には。この試験のゴールは論文式試験の全科目合格であり、その基準はあくまでも総合の得点比率で決まるということです。また、科目ごとの足きり基準も存在しています。したがって、1科目でも足きり点を取ってしまっては、合格を勝ち取ることは出来ません。

 そこで、私の取った方針は【全科目を平均的に高い水準に持っていくこと】です。

 この方針は当初から一貫していました。私の場合、受験1回目ですので、当然、短答式試験を合格しなければ論文式試験は受けられません。けれど、短答式科目に特化するような事はなく、租税法も選択科目(経営学)もしっかりとこなしました。常に論文式を見据えて学習を進めることは、短期合格を狙う上では大切な事だと思います。
 今回の合格体験記の中で私はこの事が最重要事項と考えております。

3-2【+DVD(Web)のすすめ】

 これは通学コース受講生に対するアドバイスです。

 講義を聴くことによって理解が早まることは周知の事ですが、講義を聴いて答練を受けただけでは、好成績を取り続けることは難しいと思います。

 大切なのは、講義が終わってから、それをどうまとめるかです。TACの場合、一度聞いた講義は再受講できない制度になっているのですが、全部が全部でないにしても、もう一度聞きたい講義というものがあると思います。

 例えば、簿記の税効果など、科目をまたぐ論点について、各科目の講義時期が異なる場合に、先に終わった科目をもう一度聞きたい場合が該当します。

 私は、当初からそれを見越して「通学+DVD」コースを選択しました。もちろん、全部を見直す時間はないのですが、見直す価値のある講義が絶対にあるはずなので、通学コースを選択している人には一考してもらいたいと思います

 もちろん、追加料金はかかりますが、次年度に受け直した時にようやく理解するのでは、貴重な1年を無駄にすることになりかねませんので。 また、企業法など、暗記的な要素が強い科目でもDVDは力を発揮します。

4. 時期別留意点 

ここでは、私の受験生活の各時期の過ごし方、及びその際アドバイス等を記載いたします。

4-1 入門期 【簿記入門Ⅰ、Ⅱについて】

 私の開始時の簿記、管理会計のレベルは日商1級レベルであり、その他の科目については、知識ゼロでした。私は専門学校としてTACを選びました。

 そしてTACでは自己申告で、簿記入門Ⅰ、Ⅱを省略することによって、多少受講料を抑えるプランが用意されていました。私は受講料を少しでも抑えるために、簿記入門Ⅰ、Ⅱを省略するプランを選択しましたが、これが第一のつまずきとなりました。

 自分では簿記の基礎は理解していると誤解しており、今思うと、私は簿記一巡の処理を正確に理解していませんでした。(もちろん、後になってその事に気づき、最初からやり直すことになるのですが・・・)。

 簿記という科目は、本当に知識の積み上げであり、簿記入門Ⅰ、Ⅱは、簿記の学ぶ上でのベースであり、ベースが無いままでは、その後の基礎マスタ、上級を学んだとしても力はつかないと思います。

 そのため今後、会計士試験を始める方には、簿記入門Ⅰ、Ⅱを疎かにせず全力で理解するようにしてほしいと思います。本試験まで1~2年ある中でそのモチベーションを維持することが非常に難しいことですが、大切にしてほしいと思います。また、簿記入門Ⅰ、Ⅱは省略することはお勧めしません。

これから会計士試験を志す方は、簿記入門Ⅰからスタートすることをお勧めします。

4-2上級期 【答練の成績】

 この試験は、結果が振るわず、受験回数が多くなってしまった受験年数の長い受験生(上級生)が存在します。そして上級期に入って上級生と同じ答練を受けることになった当初は入門上がりの受験生と、実力はありながらも運悪く過年度の論文式試験を失敗したような一部の上級生では実力の差は歴然で、その時点では、まったく歯が立たないと思います。

 ただ、そこでしてはいけない事は、自分はダメだとか落ち込み、まず成績の悪かった短答式科目から優先して勉強しようとすることです。

 なぜなら、入門上がりと実力上位の上級生の力の差があったとしても、現状の試験制度では、短答合格済の上級生は短答式試験を受けないので、あせる必要はないからです。

 今考えると、その時点の力の差の要因の多くは入門・基礎マスタではやっていない論述の典型問題であり、暗記しているか否かに過ぎず、この部分はそれ以降の学習で追いつくことは十分可能だからです。

 したがって、もしも、上級の答練を受けて成績が振るわなかったとしても、【全科目を平均して高い水準にもっていく】という当初の方針を変えることなく続けることが最良と考えます。

4-3講義終了後~直前期 

Ⅰ.【各科目のつながりを考える】

 私はTACで短期目標のコースを受講したため、講義終了から短答式試験までの期間が短かったのですが、この期間が受験期間のうちもっとも大切な期間にあたるのではないのかと思います。

 というのは、この期間は講義もなく自習の時間が確保できるし、試験までまだ期間があるので、具体的な勉強内容として下記のような選択肢が考えられるからです。

・短答式試験対策に特化する
・短答式科目の各科目のテキスト、問題集をもう一度回す
全科目のテキスト、問題集をもう一度回す

 私はこの中で、上述の当初の方針どおり、3を選択しました。そして、各論点の本質を理解するとともに、各科目のつながりを意識しながら勉強を進めました。

 例えば、監査論で「会計上の見積り」を例に挙げるならば、会計上の見積りの本質的理解を進めながら、財務諸表論の引当金や偶発債務等を並行して抑えることなどです。

他にも

・会計学と企業法で「企業結合」の論点、財務会計と管理会計で「管理会計で求めた原価が財務会計上、どうつながっていくか」、

および、

・財務会計と租税法で「税効果会計」など、

 これ以外にもたくさんあります。この試験の科目はそれなりにつながっていることに気づくとさらに知識の定着が早まると思い、その点に注力するとよいと思います。

Ⅱ.【論文式科目を一旦仕上げる】

 租税法と選択科目については、短答式試験の範囲外であるため、直前期には手を付けられない事態を想定し、3月時点で一旦仕上げることを目指しました。

 仕上げるといっても租税法と選択科目(経営学)は試験範囲が広いため、もちろん完全に仕上げることは出来ませんが租税法については法人税の計算、消費税の計算、所得税は各種所得の計算までは完璧に覚えました。

 また、経営学については、一通り理解するように努めました。論文式科目を一旦仕上げることのメリットは後述の「4-5短答後~論文まで」をご参照ください。

4-4短答直前期 【この時期のライバルは短答式受験者】

 この時期になると短答式答練を受講および復習が主を占めることになり、私はこの時期になってはじめて短答式受験者の中での自分の位置づけが固まってくると思います。

 短答式答練では平均して70問前後を取れる成績になっており、A判定で二桁順位でした。(論文式答練はB~D判定でしたが前述のとおり、上級生との差が埋まりきっていないので、あせらずにいました。)

 短答式試験はあくまでも短答式受験者の中で競うものであるため、その時点では、短答式のA判定を拠り所に勉強を進めました。

4-5短答後~全答練 【短答式免除者に追いつくためには】

 短答式試験は5/28,6/4に行なわれ、合格発表は6/28でしたので、短答式からの受験者はこの約3週間は短答式試験が合格していることを前提に勉強をしなければなりません。

 この時期はボーダーラインの予想や怪情報が出回り、一喜一憂し、モチベーションのコントロールがもっとも難しい時期でした。

 合格していると信じて、勉強を離れていた論文式科目(租税法、選択科目)のレベルを3/E時点まで戻すことに注力しました。

 この時期だけは、その2つの科目に特化しました。私は前述のとおり、短答式に特化する前にこの2科目を一旦仕上げたつもりでいましたが、それでも3週間かかってしまい、短答式合格発表までの期間でなんとか間に合ったのです。

 現行の試験制度では、短答式試験免除者がいるため、この免除者は短答式試験の間も論文式試験科目の勉強を進めています。

 同じ方向に進んでいる人に追いつくためには、当然前を行く人(免除者)よりも早いペースでなければならなりません。そのペースを作るためには短答式に特化する前に論文式科目を一旦仕上げておくことが望ましいと考えられます。短答式受験者の方は、ぜひともこの点を一考願いたいと思います。

4-6全答練~論文 【上位者との差を埋めるために】

 短答式合格発表までの3週間で租税法、選択科目(経営学)をキャッチアップしたことにより、その後全答練では、A判定(100番台)の成績を取ることができました。

 けれども全答練の成績を見たところ、成績上位者のレベルははるかに高いと実感しました。この時点で合格可能性はある程度あったと思いますが、短答免除者の存在を意識し、この成績上位者に追いつくためにはどうすればよいかを考えながら残された期間を過ごしました。といっても、特別な方法ではなく、各科目とも各論点を1つ1つ抑えていくだけでした。そして本番を迎えました。

4-7論文式本試験 【いざ本番】

 2007年度の本試験は3日間にわたって行なわれました。私の全般的な印象としては、各科目とも足きりを食らうような点は取っていないはずであり。上述3-1のとおり、【全科目を平均的に高い水準に持っていく】ことができたというものでした。そして、発表までの期間は合格していることを信じて待つことになります。そして3ヶ月後、合格することができました。

5.総括

 私の受験生活については上述のとおりですが、自分自身を振り返って、私が合格した要因は、

前述の【一貫して全科目を平均以上】の勉強方針と、

もう1つ、【どんな試験問題が出ても合格するレベルを目指す】

という高い目標にあったと考えます。

 私は、受験を決心した時は既に28歳になっており、努力よりも結果が問われる年齢であることは重々承知していたので、どうしても一発合格を強く願い、入門期から、あせらず着実に歩を進め、論文式本試験までには成績上位者に追いつくことを目標に勉強していたことにあると、今思います。

 この想いが、日々の講義を受ける姿勢や、自分への甘えの防止へつながったのだと思います。これからこの試験の目指す方には、この点を参考にしていただけたら幸いです。