チロたんの不合格勉強法

氏名:チロたん(20代後半)
予備校:クレアール
受験回数:3回

 このたびスポックさんより合格体験記を書かせてもらうことになった、チロたんと申します。
 ぼくは三度目のチャレンジで、ようやく公認会計士試験に合格することができました。

 一度目は短答で×。二度目も短答で×。そして今回は一括合格いたしました。短期合格のコツはお教えすることはできませんが、これだけはやってはいけない勉強法、題して『不合格勉強法』を書いていこうと思います。
 まず、不合格だった過去の受験時を振り返ってみると、失敗の原因は二つあります。

・一つは計算力不足。
・もう一つは粗い暗記です。

ということは、ぼくの不合格の原因を調べてみれば、ぼくが合格するために必要な事は、【計算力の強化】と【精密な暗記】だ、ということが分かったわけです。

【計算力の強化】のコツ

 計算力の重要性についてはいうまでもありません。今年は租税法が加わったことから、計算科目は、簿記と管理会計と租税法という三つになりました。

 新試験になって、計算よりも理論が重視される、と言われていましたが、今回の短答・論文試験を見る限りでは、やはり計算の比重は大きかったと思います。特に簿記に関しては、短答・論文ともに計算力が合否を分けたのではないでしょうか。管理会計(かつての原価計算)も、論文試験ではかなりの計算量が必要であり、また、結局租税法も計算力で勝負が付いたと思われます。

 ぼく自身、あまり計算力が無かった方なので、計算が苦手で苦手で苦手でどうしようもない人の気持ちがよーく分かります。できる方は、ここからはすっ飛ばして構いません。できない人へのアドバイスです。

 結論から書けば、計算問題(簿・管・租)は、おそるるに足らず!です。

なぜなら結局、個別問題の集積が、総合問題に過ぎないからです。

 個別論点は、テキストレベルの問題を完璧にこなし、論点の穴をなくせば、後は何度も何度も解けば自然と身に付きます。そして、総合問題の中で解ける問題から解いていけば、自然と合格点に達します。ほら、そう考えたらちょっと気が楽になったのではないですか?

え?なってない??

 ではもう一つ、

 当たり前の事ですが、満点をとる必要はありません!

 解けるものから解いていけば良いのです。

 上から解く必要も下から解く必要もなく、真ん中から解いても良いのです。できない箇所があれば、復習段階でその都度フォローすればよいだけです。

 もし、総合問題が苦手な人がいるならば、それは、個別論点に習熟していないだけです。

 あいまいな理解のままだからです。試験では、えっと・・・・これどう解くんだったっけ?という迷いは論外です。

 迷う問題は捨てる、とにかくそれに尽きます。

 そして答練で解けない問題があったのなら、テキストに戻り、該当箇所を解く。そして復習の際にできなかった問題はチェックをしておき、何度も解く。忘れた頃に解く。五回も解けば、自然に解けるようになります。(まるで入門コースの講師が言うようなセリフですね)

 計算問題ができない、ということは、問題量に圧倒されて、理解の薄い点を突かれてあたふたしている内にドンドン時間だけが過ぎていく、ということに原因があるのだと思います(現に自分はそうだった)。ですので、総合問題でつまずかないために、まず、テキストレベルでの個別論点問題を完璧に解けるようにしておく必要があります。

 そして総合問題の中から自分ができる論点を探し(できない所は無視)、できた所から解答用紙を埋めていけば良いだけです。あとは、復習の段階で、できなかった所だけをピックアップし、苦手な論点が無くなるまで、繰り返し解けば良いのです。そうすれば、自然とスピードも上がります。

 もう少し具体的に、簿記の総合問題(他の計算問題も同じですが)を例にとって、解法のコツをお教えします。

-まず、問題全体を見渡します(1分)。
-これでざっと出題傾向や問題の枚数などをチェックします。
-次に、解答用紙をチェック(1分)します。たとえば財務諸表作成なのか、後T/B作成なのかなどを見ておきます。解答形式をチェックすることにより、おおよその手順も分かるようになります。
-そして、小項目の中で解ける論点を探します(ざーっと)。簿記の問題は大概、小項目毎に見出しが付いている(例:商品・固定資産・有価証券・デリバティブなど)ので、その見出しを見て、自分の得意な論点を探します。

 ここで大切な事は、普段から、『何の項目が、どういう費目と関連するのか?』という点に着目して学習を行うことです。

 例えば、「有価証券」という項目なら、損益項目→「有価証券運用損益・有価証券利息」・B/S項目→「有価証券・投資有価証券・投資有価証券評価差額金・繰延税金資産負債」という費目に影響するな・・・というようなトレーニングをしておくことです。

 そうすれば、解答用紙のどの部分の何に数値を書き込めば良いのか、ということを、本番で迷わなくなります。

 一つの項目が終われば、次の項目、それが終わればまた次の項目・・・といった風に埋めていけば、自然と解答用紙は埋まっていくはずです。大切な事は、一つの項目にとらわれすぎてはいけないという事です。それをやってしまうと、時間切れという最悪の展開になってしまいます。従って、分からなければさっさと次の項目に行きましょう。

 このような手法は、ごく当たり前の事ですが、なかなかできないと思います。

 簿記のみならず、どの科目も同じ要領なので、テンポ良く解くコツを身につけて下さい。しつこいようですが、そのためにもまず、テキストレベルでの個別論点の問題は完璧に理解し、繰り返し解いて下さい。

 そして論点の穴をできるだけ作らないようにしてください。そうすれば総合問題で解ける箇所は、必ず増えていきます。それでもできなかった問題は、テキストに戻って、何度も解き直す。それによって一つ一つの論点に習熟し、スピードも上がっていきますよ。地道できつい作業ですが、この山を越えたところに、ゴールはあります。

【精密な暗記】は必要か?

 それでは、次に理論対策について書きます。

 理論対策は簡単です。

 しっかり理解して、きちんと暗記すればそれでOKです。暗記は、細かければ細かいほど良いです。

 これだけだとあまりにも役に立たないアドバイスなので、もう少し具体的に書くならば、『定義と重要ワードは完璧に』書けるようにした方が良いです。

 監査論や財務諸表論のように、基準があって、基準内に定義づけがなされているならば、一字一句書けるまで正確に暗記すべきです(漢字も含めて)。そのようなものがなければ、テキストで提示されているような説明ができれば十分でしょう。

 たとえば、監査論で出てくる「公正不偏の態度」というワードを、(公正普遍)と書いても(公正不変)と書いても×ですし、もちろん(公正不倫)と書いてはいけません。

 笑い話のように聞こえますが、もし、こんな間違いをしていたならば、大幅減点は避けられないと思いますよ。なぜなら、こういう間違いをするということは、そもそもの「公正不偏の態度」という意味を全く理解していない、という事を示しているからです。

 大学教授の某監査論講師によると、大学の先生は、こういった理解を伴っていない解答を最も忌み嫌うと言います。たった一つの漢字ミスにより、

あ?あコイツ全然分かってないな、

という心証をもたれてしまい、以後の採点も辛めになってしまうという事にもなるそうです。

 ですので、暗記をするにはまず、しっかりとした理解が大前提となります。理解とは、「公正不偏の態度」とは、何たることか?を腹の下でしっかりと分かるということです。

 それが分かれば、不偏が普遍でも不変でもなく不倫ではありえない事が分かります。

 そしてその上での、定義の暗記があるのです。理解があって暗記があり、暗記があって初めて解答に書く事ができるのです。

暗記か理解か、という議論は実に不毛だということが分かると思います。これらは決して切り離されるものではなく、一体です。

 では、理解をするためにはどうすれば良いのか?

 それは、良い講師につく事です。一部の秀才受験生を除く大多数の凡人受験生(ぼくも含みます)にとって、講師の善し悪しは合格可能性に大きく影響すると思います。

 これは一つの目安ですが、会計系の講師は、公認会計士、または会計士試験合格者が望ましいです。

 また、租税法については実務家、監査論・経営学については、大学教授または学識のある実務家が望ましいです。

 要するに、その道のプロフェッショナルであることが、優れた講師の最低条件だと思います。

 たまに大手予備校でも、未合格の受験生がそのまま教壇に立ったりしていますが、これは実に恐ろしい事だと思います。合格経験も実務経験もなく、まして一定の知識量もない人が、何の知識もバックグラウンドもない人を教える事ができるのでしょうか?できれば、そういう講師が何人もいるような専門学校は避けましょう。

 では、暗記をするためにはどうすれば良いのか?それは、お好きな方法で、という事です。某講師が提唱するようなスピーチ法でもよく、書いてもいいし、テープに吹き込んで聞くという方法でも何でもよいと思います。

 要するに、定義や語句がしっかり書ければ方法は何でも良いです。ぼくは大概、通学の電車の中で、テキストを暗記していました。別に声を出さなくても十分暗記できますよ。

 暗記をするメリットは何?

それは、解答に書けるという事です。知ってる、理解している、分かっている、というのでは解答に書けません。

 解答用紙に書いた事しか評価されないのですから、いくら分かっていても、書けなければ話になりません。また、しっかり暗記していれば、思い出す時間を短縮でき、時間を有効に使えるというメリットもあります。さらに、短答式試験では、定義などをきちんと覚えていると、微妙な選択肢にひっかかる危険性がグンと減ります。これだけのメリットがありながら、まだ、暗記より理解が重要だ!と言えますか?

最後に・・・

色々と書いてきましたが、結局、

【復習と暗記】

という二点に集約されると思います。

 確かに、聞いてみればごくごく当たり前で、かつ地味なアドバイスにとどまっているのは否めません。しかし、

この地味でつまらない作業が、実は合格への近道ではなかったのか?

と今更ながら思っています。

 そういえば、自分の周りでの短期合格者(一発合格を果たした人たち)は、このすごく地味な勉強法をひたすら繰り返していました。

 決して手を広げず、手に入る範囲の教材を繰り返し繰り返し解き、そしてそれを完全に理解し暗記する方法を実践していました。なかなか合格できない人たちが電車でマンガを読んでいるときに、一方はテキストを暗記し、のんきな受験生が朝寝坊をしている内に、一方は学校に来ては問題を解き授業後にはそれを復習する、そういった意識の持ち方という点で、彼らはすでに合格の栄冠をつかんでいたのだと思います。

 こんなえらそうな事を言っている自分は、、、“なんとなくの理解”で満足しており、テキストの一字一句暗記を軽視していました。

 また、教材の復習をおろそかにし、たまに良い点をとってラッキーだと思っていたくらいです。
 悪い点をとったら、それは伏せ、良い点の時だけは持ち上げる、そういった勉強法を繰り返し繰り返しやっていました。

 その結果が、短答一年目の結果です。二年目にもその反省は活かされる事なく、結局、二年目も短答で自滅。これら二回の失敗の原因は、計算力不足・理解力不足・暗記不足でした。いずれも、微妙な選択肢を完全に切り分ける事ができず、まんまと出題者のワナにひっかかっていたわけです。

 ですので、皆様には、ぼくの『不合格勉強法』を繰り返してほしくないと願います。おそらく、周りのデキる人たちは、自然と『合格するための勉強法』をやっている人たちだと思います。できることならば、成績の良い人たちにお近づきになり、『不合格勉強法』実践グループにはお近づきになられない事をオススメします。

皆様のご健闘をお祈りいたします。

付録:各科目についてのコメント

・簿記・・・テキスト・答練の問題は全てできるようにするべき。マイナー論点含む。短答答練は練習に最適。今年の論文本試験では、本社工場が出題されるものの、難易度は短答レベルだと思う。

・管理会計・・・伝統的な原価計算の欠点と、それを克服するための最新理論(たとえば、間接費配賦の問題点を克服するための直接原価計算、スループット会計の登場など)を、つなげて理解する事が重要。「従来の○○の欠点を克服するために、××の方法が考案された」という点に注目。

・財務諸表論・・・定義・重要語句は暗記。会計処理も流れで書けるようになると良い。

・監査論・・・とにかく良い講義を受けて、理解を徹底する事。定義は絶対暗記。

・企業法・・・論証の仕方を身につけること。ポイントは論証の核となるキーフレーズを覚える事。条文の趣旨と、ある制度と他の制度の相違点は特に重要。

・経営学・・・定義はテキストに書いてある通りに覚えればよい。余裕があれば基本書を読むべき。また、普段から新聞を読んでおくと、意外とイイ事があるかも?

・租税法・・・計算構造を必死で覚える。まずは計算の構造(流れ)を思い出せるように。ちなみに今年の理論は、ほぼ白紙。でも合格。

以上