本町さん

公認会計士二次試験 <2005合格体験記> 退職専念 2年で合格

by 本町

1 自己紹介&はじめに

執筆者:本町
年齢:26
出身大学:私立大学
職歴:大学卒業後、銀行に就職するが、その後退職。
利用予備校:大原
受験歴: 2005年 短答式 37問 合格
         論文式 合格
    →12月より監査法人勤務予定

 はじめまして、この度公認会計士第2次試験に合格いたしまして合格体験記を書かせていただきます本町と申します。私の受験期間は約2年です。勉強方法のほうが相当我流なものとなっており、参考にならないところも多いとは存じますが、合格にはいろんなパターンがあるということをご認識していただきたく投稿させていただきました。
以下、私の受験勉強の内容を時系列で書かせていただきました。

2. 私の時期別学習法 その1

2003年10月~2004年9月-過去の答練を入手して計算科目を強化
時間配分:簿記・原計・経済(5:4:1)
私の目標:簿記・原計については、過去の早朝答練を直対期まで完璧に解けるように。

 私はこの時期90%以上簿記・原価計算に注力していました。私は大学時代に簿記2級を勉強し、取得していたこともあり、授業の進捗度は度外視してテキストを読み進めるとともに過去の答練を入手し、おそらく各問題を最低5回転はさせていたと思います。
 この時期は簿記・原計について絶対的自信をつけ、本試験は計算偏差値65、理論偏差値50くらいで合格しようと考えていました。
 一方理論科目については、簿記・原計を1日各4・5問解いていたこともありまったく復習はしていませんでしたし、授業すらまともに聞いていませんでした。しかしながら、テキストを見てもまったく理解できていないので感じ焦りは感じていました。

2004年10月~2004年12月-引き続き計算強化、余った時間で一番ヘビーな商法、12月より肢別チェックに着手
時間配分:簿記・原計・商法・短答(5:3:1:1)
私の目標:簿記・原計については答練で上位10%。商法についてはまとめノート作成。

 私はこの時期も大半を計算科目に当てており、しつこく過去の答練を回していました。確かにおかげで答練上位10%の目標を達成しましたが、今振り返ると計算科目にしろ理論科目にしろ答練の順位に固執しすぎた感があります。特に理論科目については答練前のインプット段階が非常に重要ですのでそれを意識して点数は後からついてくると思ったほうが良いと思います。

 一方理論科目については財表・監査等の科目は答練が始まっておらず相変わらず放置状態でしたが、商法についてはテキストでは理解・暗記がしにくいし、計算2科目の柱では年明けから心もとないと感じた私は商法の論証例をまとめていました。その過程で私は入門生が持ちやすい商法アレルギーを払拭できたと思います。

 加えて12月半ばから短答対策として肢別チェックを電車の通学時間を使いまわしていました。これは論文式より短答式のほうにリスクを感じていたからです。短答のレベルは近年上昇しています。特に2006年からは、短答免除の導入によりその重要性がさらに上昇すると思います。短答対策について早い時期に考えてみてください。

2005年1月~2005年3月-計算のウェイトを大幅に下げ、理論科目は答練にあわせず何回も読み込む
時間配分:簿記・原計・商法・財表・監査・経済・経営・短答(1:1:3:2:1:1:0.5:0.5)
私の目標:簿記・原計については答練で上位10%。他の理論科目については平均ちょっと上を確保

 この時期は入門生にとっては最も過酷です。全体を見渡すことができなくなり、破綻してしまうことが多くなる時期です。
 計算については、私の場合ほとんど予習等はしていませんでした。つまり、答練以外で計算問題を解くことはほとんどしませんでした。しかし、答練の難易度は年末までの比ではないし、理論の予習もしなくてはいけないしで徐々に成績は低下。年末までの貯金で何とか上位20%確保という感じでした。

 理論科目については、1月2月3月で各科目を2回転するという超過酷な専門学校の答練日程が組まれ、ほぼ毎日何らかの答練がありました。私は、1月は専門学校の日程に従い予習を行っていましたが、2月上旬ごろに、「本試験はテキスト全部から範囲指定なしで出題があるのに、大学の考査みたいに範囲を与えられて必死に暗記して吐き出すだけの答練に意味があるのか」という疑問を持ちました。そして「今は答練でいい点を取るよりも、論文前にテキスト全部を暗記できるようにすることのほうが大切である」との結論に至り、専門学校のカリキュラムを完全に放棄。各科目のテキストをじっくり読んだり、覚えやすいようにまとめたりしていました。そうしていると、短時間では覚えられないテキストも5回、6回、7回と回すといやでも理解して覚えられるという確信を持てるようになり、徐々に自信を持ち始めました。

2. 私の時期別学習法 その2

2005年4月~2005年5月-計算科目は短答形式の問題を、理論科目はテキスト・原典の読み込み
時間配分:簿記・原計・商法・財表・監査(1:1:2:2:2:2)
私の目標:短答式答練毎回30問以上、短答式本試験合格

 この時期から計算も理論も100%短答モードです。
 計算科目については、この時期も1時間答練を解くという方が多いのでしょうが、私は短答形式の問題のみを2日に10問ほど解いていました。なぜなら、こののころから計算科目を受験戦略の柱にする方針を転換し、あまり計算には力を入れず平均点をとることを目標にすることにしたからです。

その理由は
  自分の計算能力に限界を感じたこと
  それほど時間を費やさなくても平均点維持くらいの力は保てると判断した
ことがあげられます。

について、受験勉強の過程の中ではさまざまな壁が存在します。それらの壁の多くが越えなければならないものでしょうが、超えなくてもいい壁もあります。ぜひ広い視野で考えてください。

 次に理論科目については、4月初旬までに各科目肢別チェックを5回転ほどしていたので楽勝だと思っていましたが、短答答練や模試を受けるにつれ肢別チェックは本当に知ってて当たり前の知識であると感じました。そのため私は4月からは商法・監査はテキスト・条文を中心にみっちりインプットしました。委員会報告書についてはどうも量的に不可能と判断し1回読んだだけです。財表についてはなんといっても法規集をひたすら読み込みです。来年からは短答も考えさせる問題が多く出題されると聞きます。ぜひテキスト等の重視を徹底してください。

2005年6月~2005年8月-計算は手をつけず、理論科目のテキスト回転スピードを上げる
時間配分:簿記・原計・商法・財表・監査・経営・経済(0.5:0.5:2.5:2.5:1.5:1.5:1)
私の目標:理論各科目1週間でテキスト1回転、論文式本試験合格

 短答合格をある程度確信し、直後から論文対策をスタート。理論特化です。
 計算科目については、6月の半ばから8月の本試験まで模試以外は答練すら受けずに挑みました。簿記は感が鈍るといいますが連結以外はそれほど力が落ちた感はありませんでした。そもそも平均以上狙いでしたのでこの程度でも本試験で狙いどおり簿記・原計とも自己採点100点前後に落ち着きました。経済については非常にアレルギーがあったので、この時点で基本問題集を繰り返し解いていました。

 理論科目については、ほとんど手をつけていなかった経営を含め、答練はほぼ無視してテキストをひたすら読み込むことに専念しました(財表・監査・経営については論文総まとめテキストも使用)。この読み込む作業については答練期にじっくりテキスト読み込みを行っていたのが幸いしてスムーズに行うことができ、7月半ばくらいには10日くらいで理論4科目を1回転(暗記含む)できるようになりました。その結果大原公開模試で336位とまずまずの順位でしたが、私にとっての収穫は順位よりも計算科目が平均点付近で理論科目が偏差値50台後半と狙い通りの得点となっていたことでした。

3. 読み込みについて

 私も含めよくテキストを「読み込む」という表現がなされますが、はたして「読み込み」とは何なのでしょうか?「読み込み」とは、文字通り何度もテキストを読むということです。以下私が受験経験で感じた「読み込み」について書かせていただきます。私の基本スタンスは『自分で考え判断する』ですので、こういったことを自分で突き詰めて考えることのほうが重要だったりするのかなぁとか思ったりしながら書いています。

「読み込み」、その中で重要なことは以下の4つであると私は考えます。

丸覚えでは決してない。
テキストに書いてある内容を理解する。
テキストを自分で覚えやすいように工夫する。
1回転の期間をできるだけ短く、回転数を重視。
丸覚えはしようと思いませんよね。というか無理ですね。やめておきましょう。

について、理解とは何なのでしょうか。私は会計士試験に必要とされる理解はそんなに難しく考えるものではないと考えます。

 私の思う理解とは「テキスト・法規集等の筆者の言いたいことが分かる」ということです。すなわち必要とされる理解は文章の要旨の把握です。テキストの単語・用語レベルまで知識を詰め込み、初めて理解だと思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、それは理解とはまったく関係ないと思います。

について、私が行った工夫をあげてみます。

・文章の単語化
 私は長文を見てもまったく頭に残らなかったため、文章は極力単語化していました。単語化すると暗記の負担が軽い上に丸暗記になることがなくなり、論文作成にあたり単語ををつなぐ必要が生じるので、覚えようとする文章の構造・要旨の理解につながります。また、論述する上でのキーワードをつかめるので効率的得点が期待できます。

・テキストの構造・要旨をまとめる
を元にテキストの筆者の言いたい事、すなわちテキストの構造・要旨を書き出し、基本的にテキスト本文ではなく、それを覚えていました。
具体的には、財表はテキストの1ページを大きめのポストイットにまとめた上で、テキストの余白に貼っていました。商法については論述問題1問につきノート2ページくらいを使い自分で構造・要旨を書き出す作業を行っていました。

以上のを踏まえて以下の 「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」から抜粋した文章を例として私なりにまとめてみました。
『これらの開示基準等の整備により金融商品に係る時価情報の提供は広範に行われてきたところであるが、最近の証券・金融市場のグローバル化や企業の経営環境の変化等に対応して企業会計の透明性を一層高めていくためには、注記による時価情報の提供にとどまらず、金融商品そのものの時価評価に係る会計処理をはじめ、新たに開発された金融商品や取引手法等についての会計処理の基準の整備が必要とされる状況にたち至っていると考えられる。』    (「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」より一部抜粋)
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 まず、上記文章を一読し「企業会計の透明性を高める必要があり、そのために新たな会計処理基準の整備が必要」という要旨をつかみます。その後、その要旨を基本軸に論理が成り立つために必要な最低限の単語等を書き出し、それをまとめます。このときまとめる形式にも文章の構造を反映させます。たとえば、対比形式の文章であれば上記のようなフロー形式ではなく左右を区切った対比形式にしたほうがより文章の構造を反映できビジュアル面でも覚えやすくなります。

 よく、「単語のフローチャート形式では単語間の文章や接続詞が思い浮かばなくて整った文章が書けない。」という方がいますが、それは私もはじめはそうでした。しかし、慣れればできるものですし、本試験で少し応用的な問題が出たときに通用するのは制度や論点のロジックとキーワードです。また、テキストの高速回転が可能となります。私はこの方法をとってよかったと思っています。
の(1回転の期間をできるだけ短く、回転数を重視。)について
 私が理論の学習を始めてからかなりの間懸案事項であったことがありました。
 それは読んでもすぐに忘れてしまうということです。それを克服するためにとった手段が前述した文章の単語化と回転数重視でした。具体的には、テキストを7つくらいの範囲に分割し、1日1範囲を暗記精度を度外視して読みます。一応覚えようとしますが、それほど期待せずにとりあえずスピードを重視します。ここで私は1日で同一範囲を3回転くらいさせていました。私のような記憶力の悪い人にとって一番の大敵はブランクのようです。暗記の精度よりもいかに慣れ親しんでいるか?こちらのほうが重要だと感じました。しかし、この方法でも1範囲を1日で終えることはまれで、初めのころは7範囲を2週間以上かけていましたが、とにかく何度も何度も繰り返していました。暗記は根気です。必ず各科目テキストを並行して1週間で1回転、1ヶ月で4回転できるようになります。

 加えて紙に書くか否かという問題ですが、私のように回転を重視する場合は普段はひたすら黙読というほうが効率的だったと思います。そして私は答練や本試験前などにフローなどを書く練習を行うというやり方をとっていました。

 以上読み込みについて長々と書きましたが、私が行ったことは、テキストを大事にした事。答練や模試よりもテキストをです。そしてそのテキストが何を言いたいかをつかみました。簡単です。財表・商法等のテキストを要約しました。これが私なりの理解というやつです。そしてそれを高速回転する。5回6回でお腹いっぱいではなく、精度が低くてもいいのでとにかく読み続けました。テキストが何を言いたいかを知っていれば、日々触れ続けて本試験前に詰め込みするだけでOKだと思いました。

4. この試験を振り返って思うこと

 私は、今年一発で合格したわけですけれども、その最大の要因はひとえに「受験勉強に関することにつき自分で考え判断し続けた」からだと思います。その中で自分で出した結論が、すべてシンプルにすることです。具体的にいえばテキストおよび条文等の原典の重視です。予備校では答練を必ず受けなければ受からないという風潮がありましたが、答練は半分近く受けていません。その代わりテキストを読み込み、最終的にはテキストのほとんどを暗記・理解(人に質問されて答えられる)しました。

 上に記載したすべての文章の、根本となるものは「受験生活を通じ講師、上級生、友達、その他(私も含め)からの意見に頼らず、自分で考え判断する」ことです。自分でいろいろな合格パターンをシュミレーションし、その中で自分の状況や時期にあわせ、どのパターンが合理的かを考え、実行してください。周りの短期合格者もそのようなことをしてきた人たちでした。

最後に、この体験記をご覧になっている会計士受験生の皆様が来年の会計士試験に合格されることをお祈りしております。ありがとうございました。