認たま乱太郎さん

公認会計士試験2005年度合格体験記

テニスサークル満喫して失敗・・・その後、根性の独学で合格! 受験勉強のスス〆

by 認たま乱太郎

1.こんなやつでも合格します

 私は慶應義塾大学経済学部2004年卒業の23歳です。私がTACの公認会計士講座を申し込んだのは、大学三年生の1月でした。しかし、学生時代はサークル活動に熱中していたため、実際にTACで講義に出席したり答練を受けたりしたことはありませんでした。

 そして、ほぼ独学で受けた大学卒業後最初の短答式試験に2問足らずで落ち、8月にTACの夏上級を申し込みました。また、初めてアクセスの存在を知り、申し込みました。私は大学受験の時、半年間独学で勉強し慶應に現役合格したので、予備校の講義に出る習慣がありませんでした。そのためレジュメだけ受け取って自習室で勉強することが多かったです。また、私は記憶力が悪く、膨大な量のテキストの内容を覚えられるはずないと確信していたため、講師の作ったレジュメを中心に勉強し、テキストは辞書代わりに使っていました。ちなみに講義に出ないので読み方のわからない漢字が多く、「社債発行差金」のことを「しゃさいはっこうさしがね」と読んでたりしてました。

 私はモチベーションがあまり上がらず、1日6時間くらいしか勉強しないという状態が短答式試験の3ヶ月前まで続きました。それまでの答練の成績はほとんどがE判定、アクセスも平均以下でした。こんなんじゃだめだと心を入れ換えたのが3月下旬、ようやく本気になって勉強をしました。それまでは午後2時にTAC東京本校へ行って昼のアクセスを受けていたのを、朝6時半に行って朝のアクセスを受け、その後は夜9時まで自習室で勉強することにしました。絶対的に足りていなかった勉強時間も13時間に増やすことができました。すると次第に成績も良くなっていき、全答練1回目は1600番台だったのが2回目には800番台になり、TACの奨学生試験(論文式)で3位になることができました。最終的には、本試験も突破することができたのです。

2.いまからでも間に合う

 それでは次に、私の勉強方法を紹介します

① 一日のタイムテーブル
      5:00 起床
      5:15
           TACへ 電車の中で勉強
      6:30
           TACで自習
      7:45
           アクセス
      9:15
           TACで自習(休憩15分)
     12:30
           昼食
     12:45
           TACで自習(休憩2時間)
     21:00
           帰宅 電車の中で勉強
     22:15
           食事 風呂等
     23:00
           睡眠
      5:00

 3月下旬以降、平日はこのような生活を送っていました。休日は自宅で休養しつつ、8時間程度勉強しました。ちなみに3月以前は、夜遅くまでインターネット麻雀をやり昼頃に起きる、典型的なダメ受験生でした。

② レジュメ中心の生活
   簿記 李先生
   原計 近藤先生
   財表 塩川先生
   監査 中里先生
   商法 阿部先生
   経済 鏡先生
   経営 藤沢先生


 私は前述の通り、講義を受けませんでした。そのためレジュメをコピーし、それを繰り返し読んで理解を深めました。テキストはほとんど使用していません。

③ 質問コーナー大好き
 質問コーナーを利用しまくりました。私は常に「なぜこうなるのか」という疑問を持ちながら勉強しており、自分で解決することのできなかった場合には必ず質問に行きました。また私は、試験は下書きの書き方で点数が決まると考えていたため、問題を解いた時の下書きを講師に実際に見せ、考え方のプロセスを話し合いました。これによって、商法の答案構成力が上達しましたし、簿記の下書きにも無駄がなくなりました。この「下書きの書き方」を質問するということが、合格答案への近道だと思います。でもこれをやっている人って、案外少ないのではないでしょうか。ぜひ質問コーナーを大活用してください。

勉強量と勉強法総論2
④ 各科目の勉強量
  1位 簿記
  2位 原計
  3位 財表
  4位 商法
  5位 経済
  6位 経営
  7位 監査

 得意科目にしたかった簿記と原計には特に多く費やしました。また、財表と商法はレジュメの量が多いため、マスターするまで相当の時間を要しました。一方、経済と経営はそんなに時間をかけませんでした。監査はレジュメが14枚しかなかったので、全く時間がかかりませんでした。

⑤ 短答対策?
  簿記  7点
  財表  7点
  原計  8点
  監査 10点
  商法  4点
   計  36点

 2006年度から試験制度が変わるのでなんとも言えませんが、私は短答対策をほとんどしませんでした。商法が著しく悪いはそのためだと思います。また、勉強量の最も少なかった監査論の点数が一番良いという、皮肉な結果となりました。短答試験1ヶ月前からは、経済学と経営学の勉強をせずに短答5科目に特化し、短答答練を1日1回分解きました。

 私は高校の時から速読の本を読んだりして、文章をできるだけ速く読めるような訓練をしていました。集中力と目の筋力を鍛えることによって、一度に知覚できる文字数を増やすのです。そうすると、「読む」というより「見る」という感じになってきます。すごい人だと一瞬で1ページ知覚できるそうですが、私は1行程度しか知覚できません。しかしこの程度の速読力でも、理論の問題を解く際に非常に役立ちました。

 短答の問題を解く際は、財表→監査→商法→簿記→原計という順序で解きました。まず理論を1問2分程度で1時間以内に終わらせて、簿記と原計を残りの時間で解くという感じです。本試験では、一通り解くのに2時間40分程度かかりました。その後は時間いっぱいまで見直しをしました。


⑥ 最小限の暗記と最大限の思考
 論文試験で重要なのは、どれだけ合格答案が書けるかということであり、どれだけ覚えたかということではありません。したがって、合格答案が書けるようになるにはどうすれば良いのかを常に意識して勉強することが大事だと思います。とはいうものの、やはり基礎的なことは覚えなければなりませんが。しかし基礎さえできていれば、応用的な問題なんてよく考えれば解けるはずなのです。

⑦ 私の理論の覚え方
 まずレジュメの中で覚えたい部分=重要だと思う部分にマーカーで線を引きました。そして、その部分を重点的に繰り返し黙読したり暗唱したりしました。覚えるときに大事なのは、考え方のプロセスや理由を理解したり、何かに関連付けたりしながらやるということです。私は繰り返し書いて覚えるようなことはしませんでした。書くことに集中してしまい、ただ手が疲れるだけで何も覚えられないということが経験上多いからです。

 また、最初から全て覚えようとするのは無謀です。例えば、ある場所に初めて行きたいとき、いくつかの目印となる地点を覚えておくでしょう。道中にある家の表札ないし店の名前を一軒一軒全て覚えるということはしないはずです。それは勉強でも同じことです。まずは重要な部分から覚えて根幹を作り、そこに枝葉をつけていくような感じでやると、覚えやすいと思います。

⑧ 最後まであきらめるな
 特に初年度受験者は、本試験直前まで実力が伸びます。私も8月に入ってから理論科目が劇的に伸びました。途中、成績が伸びずに悩むこともあるでしょう。短答試験で失敗するかもしれません。私も短答試験がボーダーぎりぎりだったので、毎日が不安でした。しかし、それでも毎日早朝からTACに通いましたし、勉強に集中できないときは講師にアドバイスをもらったりしたこともありました。

 もうだめだと思った時点で終わりです。それは試験本番でも同じことです。たとえ失敗した科目があったとしても、最後まで合格を信じて全力で問題を解いてください。

3.科目ごとの勉強方法

 続いて、各科目ごとの勉強方法を紹介します
① 簿記(財務会計)
ⅰ 簿記はスピードが命
 もともと簿記は一番の苦手科目でした。問題を解くスピードがあまりにも遅かったからです。アクセスを1問解くのに通常は1時間のところ、2時間もかかっていました。原因は下書きを書きすぎていたためでした。問題の解説に書いてあるような仕訳を全て書いて問題を解いていたのです。そこで、できるだけ仕訳を書かないことを意識して問題を解くようにしました。下書き用紙を使わず、問題用紙にメモする程度にしたのです。

 問題を解き終わったら、答え合わせをして講師に下書きを見せに行きました。無駄なところがないかチェックしてもらうためです。最初の頃は無駄だらけで、かなり駄目出しされました。その都度改善し、問題を最短距離で解けるようにしていきました。

ⅱ 同じ問題を何度も解く
 私はアクセスを1日当たり3回分解きました。大体約2週間で1周する程度です。1回分を8回くらい解いたのではないかと思います。2時間以上かかっていたアクセスも、1時間半、1時間、50分、40分、30分・・・と、最終的には当初の4倍以上の速さで解けるようになりました。同じ問題なのだからスピードが速くなるのは当たり前じゃないかと思うかもしれませんが、初見の問題でも50分以内には完答できるようになったのです。また、同じ問題を何度も解くことによって間違いやすいところや時間のかかるところがわかるようになり、正答率もアップしました。

ⅲ 本試験を常に意識して
 本試験の問題を完答することは至難の業です。答えがあっているかどうかは別として7~8割くらい解答欄を埋めれば良い方でしょう。ところがアクセスや答練は本試験に比べて量が少ないので、時間内に完答できるという方も多いのではないかと思います。したがって、本試験を意識してアクセスや答練を解くようにするためには、完答できないことを前提にしなければなりません。そこで、解答時間を6~8割程度に短縮するのです。アクセスでしたら40分程度でしょう。このように”縛り”をかけることによって、問題を解く順序や問題の解き方等が本試験仕様になってくると思います。

ⅳ サブノートその他の教材について
 講義に出ていないので、ノートはとりませんでした。他の科目でもサブノートは一切作っていません。テキストは一通り読みましたが、基本的にアクセスを解きながら論点をインプットしていきました。個別論点もアクセスを解きながら覚えました。私にとって個別論点は最大の武器となり、全答練2回目の個別論点の問題でも、上位200位の平均点が46.8点なのに対し、私は60点でした。また、間違いノートのようなものは面倒くさいので作りませんでした。基本的にアクセス以外の問題集を使用していませんが、論文試験の1ヶ月前に基礎答練から直前答練まで、一通り解きました。最初に解いたときは半分すらできなかった答練も、そのころには8~9割解けるようになっていたのでびっくりしました。過年度のアクセス等も使用していません。

ⅴ 私の論文式本試験の点数
 まず第1問を40分くらいで解きました。自己採点では8割程度の出来でした。現金預金の問題は苦手なので捨てました。残りの時間で第2問を解き、自己採点で6割程度でした。相当難解な問題でしたが、出来るところだけ解きました。売上原価率を求められたことが大きかったと思います。
② 原価計算(管理会計)
ⅰ アクセス中心
 原価計算も当初は苦手な科目でした。そのため、簿記と同じようにアクセスを1日に3回分解きました。解き方や講師への質問等、簿記とほとんど同じやり方で勉強しました。

ⅱ 理論
 理論はあまり手をつけませんでした。基本的には、アクセスや答練で理論問題を解く際に、暗記していることをそのまま書くのではなく、「どうしてそうなるのか」を考えながら解くように心掛けました。

ⅲ 原価計算は指示が命(byアクセス小島先生)
 当たり前のことですが、問題文を良く読みましょう。指示を確認せずに勘違いして間違えるのが一番痛いです。先入先出法か後入後出法か、度外視法か非度外視法か、小数点第何位で四捨五入か切捨てか等、しっかり確認しましょう。私はこのようなケアレスミスをして、全答練1回目の原価計算2問目で6点という記録的な数値を出してしまいました。

ⅳ 私の論文式本試験の点数
 原価計算はあまりできませんでした。計算はできたのですが苦手な理論が多く出題され、全体で5割程度しかとれていません。
③ 財務諸表論(財務会計)
 財務諸表論は最も苦手な科目だったので、あんまり伝えられることがありません・・・。全答練の成績は、1回目が偏差値49、2回目が偏差値44でした。本試験では前日に勉強したところが出てくれたので、結構できました。

ⅰ ビバ!塩川レジュメ!
 財務諸表論はテキストをほとんど使用せずに、塩川先生のレジュメを何度も読み返しました。会計法規集も短答前に読んだ程度です。前述の通り私は記憶力が悪いため、本試験ギリギリまで財表をマスターできませんでした。答練でも毎回レジュメを見ながら答案構成を考えていました。

ⅱ 定義をおぼえる
 記憶力の悪い私がしたことは、まず定義をおぼえることでした。塩川レジュメに定義としてでている語句を抜き出し、単語帳のようにして電車に乗っている時や歩いている時、ご飯を食べている時などに、暇さえあれば覚えていました。実際は市販の小さな単語帳ではなく、パソコンのWORDに語句とその意味を打ち込み、それをA4の用紙にプリントアウトして持ち歩いていました。
④ 監査論
ⅰ 勉強時間が最も少なかった科目
 監査論は中里先生のレジュメのみを何度も読みました。レジュメはB4が14枚しかなく、基本的なことを中心にコンパクトにまとまっていました。私は、「監査論なんて所詮、監査人としての実質的な判断ができるようになるための科目なんだから、委員会報告書を重箱の隅をつつくように事細かにおぼえる必要はなく、基本的なことさえ理解していれば応用論点や細かい実務的なことなんて考えればわかるはず。」と考えました。中里先生には、「しっかりテキストをやりなさい」と言われましたが、結局テキストを開くことはありませんでした。それでも私の監査論の成績は良かったですから、このような勉強法もアリなのではないでしょうか。

ⅱ 答練で応用力をつける
 レジュメでは基本的なことしかおぼえられないので、応用的な問題が出題される答練では頭を使わなければなりません。「基本的なことを前提に、自分で考えて問題を解く」ということによって、本当の力が養われると思います。暗記したことをそのまま書いているようでは、いつまでたっても応用力はつきません。

ⅲ 短答対策?

 前述のように、監査論は基本ができていれば考えればわかる問題がほとんどです。それは短答試験にも言えることだと思います。委員会報告書の細かい内容を暗記する必要性はないのです。
⑤ 商法(企業法)
ⅰ 条文・・・
 私は阿部先生のレジュメに載っている条文は大体覚えましたが、条数を1つ1つ暗記することはしませんでした。というかできません。でも暗記する必要もないと思います。だって、本試験では試験用条文集が配られるのですから。お目当ての条文が試験用条文集のどこら辺に書かれているのかさえわかっていれば、あとは目次やタイトルを見れば条数はすぐにわかるのです。

 たとえば、「監査費用」の条数がわからないとしましょう(私は新会社法のことをよく知りませんが、TACから企業法新条文の資料集をもらったので実際に調べてみたいと思います)。監査費用は監査役のところに書いてあるでしょうから、目次から監査役のことが書いてある部分を探します。すると「第二編株式会社 第4章機関 第7節監査役 P.106~」とあります。そこでそのページを開いてみると・・・、P.108の第388条に「費用等の請求」とありました。

 とまあ最初はこのように少し時間がかかりますが、問題を解く都度このようなことをやっていくとだんだん慣れてきて、最終的にはどのような条文がどこら辺に書かれているのかがわかってくると思います。また配布される試験用条文はページを折り曲げたり、マーカーでチェックしたりすることができますので、自分なりに工夫してみてください。

ⅱ 答案構成力をつける
 商法で最も重要なのは答案構成、すなわち下書きの書き方です。しかし、講義ではこれを詳しく教えてくれません。私は、阿部先生のレジュメに載っている問題を使って答案構成を考え、それを質問コーナーに持っていって添削してもらっていました。答案構成を考えるときは、上記ⅰのように条数を探していました。以下は、本年度本試験商法1問目の私の答案構成です。ちなみにこの問題は典型論点なので、できて当然の問題です。
 甲株式会社(以下、甲会社という)の取締役会は、A,B,C,Dの4名の取締役で構成され、Aが代表取締役として選任されていた。登記簿上も、前記の4名が取締役として、Aが代表取締役として登記されていた。Cは、常日頃、甲会社専務取締役の肩書きで行動していた。甲会社との契約を望んだ乙は、Cに代表権があると信じ、甲会社の登記を確認することなく、Cとの間で契約を締結した。この契約について、甲会社は責任を負わなければならないか、論じなさい。

 1. C→代表権なし
        ↓
      甲に帰属せず
        ↓
     C=専務取締役
        ↓
       262で責任追及?
        ↓
 2.   権利外観法理
       存在→262
       帰責性→名称使用の黙認
       信頼→善意 *無重過失
 3.   12
      あてはめ
 これを大体10分~15分程度で考え、あとは本書きを一気に書き上げます。ここで注意したいのは、答案構成に時間をかけすぎないことです。したがって相当程度省略していかなければなりません。例えば「*無重過失」は、「法文上無過失まで要求してないけど、重過失は悪意と一緒」ということだし、「12」は、「262条と12条との関係を論じろ」ということです。所詮下書きなんて、自分だけが理解できればそれでいいのです。そのためには解答や解答プロセスを暗記するのではなく、日頃から答案構成を「自分で考えて」作成する訓練をすることが重要です。しかし、実際に本書きする必要はありません。時間がかかりますから答練だけで十分です。それよりもできるだけ多くの問題に触れ、答案構成を自分で考えるようにしてください。

ⅲ 短答対策
 私は短答対策をしなかったおかげで本試験は4問しかできず、顔が真っ青になりました。教えられることは何もありません。
⑥ 経済学
 1日2回分のアクセスを解いていました。計算問題を多く解き、理論は論文試験の2日前に鏡先生のレジュメをコピーして一通り読んだ程度です。そのため計算問題は良くできましたが理論の論述問題はあまりできませんでした。しかし、全答練では1回目、2回目共に偏差値55程度でしたし本試験も7割程度とれたので、割と安定していたと思います。
⑦ 経営学
 経営学は何度かテキストを読んで全体的な流れをつかんでから、藤沢先生のレジュメで重要な部分を覚えました。また答練では、他の理論科目と同じように基本的なことを踏まえて考えることにより、応用力を身につけました。