Whiteさん
<公認会計士第2次試験合格体験記 2004>
by WhiteⅠ.始めに
はじめまして。私は2004年に公認会計士第2次試験に合格した者です。以下、私が考えるより良い勉強法などについて述べていきます。自分に合う方法や知らなかったものがあれば是非参考にしてみてください。
勉強法を述べる前に、私のプロフィールを簡単に述べたいと思います。
・国立大学卒業、現在23歳
・予備校:大原簿記学校
・受験回数:3回
2002年:短答不合格(29問)
2003年:短答合格 (42問)、論文不合格
2004年:短答合格 (44問)、論文合格
・12月より監査法人勤務
Ⅱ.目次
・ 勉強法総論
・ 勉強法各論(科目別)
・ 成績の推移
・ 就職活動体験記
Ⅲ.勉強法総論
1.技術編
<科学的な勉強法を取り入れる>
科学的な勉強法とは具体的に言うと、科学的に記憶の定着率の高い方法で復習を行うということです。この復習方法を徹底する(これが大事)ことで記憶(一時的な暗記ではない)することが各段に楽になります。
復習を行う場合には回数ももちろん重要になりますが、もっと重要なのがそのタイミングです。5回復習を行う場合であってもそのタイミングによっては記憶の定着率に雲泥の差がつきます。
ではどのようなタイミングで復習を行えば良いのでしょうか?本によって様々な意見がありますが、私は1回目を翌日、2回目をその1週間後、3回目をその2週間後、4回目をその3週間後、5回目をその1ヶ月後、6回目以降は1ヶ月間隔というタイミングで復習を行っていました。このような復習サイクルはエビングハウスの忘却曲線に基づいたものであり、この復習方法を取り入れてからは記憶の定着率が各段に上がりました。
このように記憶の定着率が上がるにもかかわらず、なぜ多くの受験生がこのような復習方法を実行していないのでしょうか。理由はただ1つ。全てのテキスト、答練において復習のタイミングを管理するのが非常に面倒だからです。逆に考えると、その管理さえ比較的簡単に行うことができれば、多くの人が実行するはずです。復習のタイミングを間違えて、時間を無駄にすることを選ぶ受験生がいるとは思えないからです。
そこで私が実際に行った復習タイミングの管理方法を紹介したいと思います。この方法が簡単な方法か否かについては人それぞれかとは思いますが、私は比較的簡単な方法であると考えています。それは「手帳」を使うという方法です。答練を受けた日やテキストの勉強をした日にその科目とその内容を記入すると同時に次回の復習日を記入すれば良いのです。
具体的に言うと、例えば2月15日に商法の第1回応用答練を受けたとします。その場合には、2月15日の欄に 商法:応用Ⅰ と記入すると同時に、翌日の2月16日の欄に ①商法:応用Ⅰ と記入します。そして2月16日に1回目の復習が終わったら、今度はその1週間後である2月23日の欄に ②商法:応用Ⅰ と記入します。
このような作業を全ての科目で行うことで、適切なサイクルで全ての復習を行うことができ、勉強の計画も立てやすくなります。毎日手帳を見て、その日の欄に書かれている内容を勉強すれば良いからです。
このような作業を続けていくと、ある日に大量に復習すべき内容が集中する場合があります。そのような場合には優先順位をつける必要がありますが、復習回数の少ないものを優先させるようにします。特に復習1回目である翌日の復習は何よりも優先して復習するべきです。このタイミングを逃すと格段に記憶の定着率が下がるからです。逆に5回目や6回目など、ある程度復習が進んだものについては数日の誤差は問題がないので、優先順位を下げても良いでしょう。
手帳を使った復習方法を実践するにあたり、私は例外も作っていました。それは計算科目です。計算科目については翌日に1回目の復習を行っても解答を覚えていて、あまり意味がないと思ったからです。この方法が正しいのかどうかはわかりませんが、個人的には計算科目は第1回目の復習が1週間後で良いと考えています。
復習のタイミングは想像以上に重要なものです。必ずしも手帳を使う必要はありませんが、忘却曲線を意識した復習方法を是非実行してみてください。すぐに効果が現れるものではありませんが、会計士試験のように数ヶ月先に焦点を合わせて記憶をする場合には絶大な効果を上げること間違いありません。
<メモを有効に活用する>
復習のタイミングは手帳で管理するとして、では一体何を復習すれば良いのでしょうか?全ての内容を復習することが可能ならば全て復習するのも良いでしょうが、時間的な制約があるのが一般的です。そこで私は次回に復習したいと思った内容をやや大きめのポストイットにメモして答練などに貼りつけ、次回の復習はその箇所を中心に復習するようにしました。言うなれば、将来の自分にメッセージを残しておくわけです。
「そんなことをしなくても復習すべきところはわかる」と思うかもしれません。けれど、人間の記憶というのは曖昧なもので、いざ復習しようとするとどこが復習すべきポイントなのかを忘れていることが多々あります。そのような無駄な時間を作らないためにもメモは非常に有効です。簿記の総合問題などでは、個別論点のみの復習でよい問題を全て解いてしまうという無駄もなくなります。
<復習の回数>
復習のタイミングはわかった。メモを使った復習内容もわかった。では、一体どれくらいの回数復習をすればよいのでしょうか?多ければ多いほど良いと言ってしまえばそれまでですが、それでは全く参考にならないので経験上必要と思われる回数について述べていきたいと思います。
まず結論から言うと、最低でも5回。理想的には覚えたと思ってからさらに数回、というのが復習回数の目安だと思います。2回や3回やったからといって覚えられないのは当たり前のようです。記憶力が悪いわけでも何でもないのです。早い人でも7回くらいで覚えられるというのを本で読んだことがありますし、実際に勉強をしてみると平均的にこれくらいの回数で覚えられること実感します(もちろん、中には数回で覚えられるものもありますが、そのようなものは例外であると捉えています)。何かを覚えるためには覚えてやろうという意欲よりも反復する回数が絶対的に重要であるということです。
覚えたと思ってからさらに数回というのは、科学的な検証結果に基づいたものです。覚えたと思ってから全く復習をしない場合とさらに数回復習を重ねた場合では、記憶の定着率に大きな差が生じるということです。意味がないと思わずに、覚えたと思ったことでも復習を数回積み重ねることで、より強固な記憶になっていきます。
<勉強計画の立て方>
勉強計画の立て方については千差万別で、私の計画方法を提案する必要はないかとも思いましたが、この合格体験記の趣旨が多様な勉強方法の提供ということなので、私の勉強計画の立て方についても紹介したいと思います。
私が勉強計画を立てるにあたって注意していた点は以下の通りです。
・ 計画は時間ではなく量で立てる
・ 1つ1つの勉強量は少なめにする
・ 1日あたりの勉強計画量は少なめに設定する
・ 優先順位をつける(説明は省略)
・ 勉強が進んだら、より効率的な計画に組みなおす。
・ 本試験に焦点を当てた勉強計画にする。
・ 答練のための勉強計画は立てない
それでは一つ一つの項目について簡単に説明していきたいと思います。
・ 計画は時間ではなく量で立てる
これは、受験勉強において今や当たり前のことになっているのかもしれません。そのため詳しく説明する事はしません。どんなに時間を費やしても内容がなければ意味がないことは自明だからです。時間で計画を立てることが良い人もいるかもしれませんが、少なくとも私の場合には量で計画を立てたほうがわかりやすく、勉強が効率的に進みます。
・ 一つ一つの勉強量は少なめにする
これはこの後で述べる「1日あたりの勉強計画量は少なめに設定する」というものと大きく関連するのですが、要するに達成感を大切にするための一つの方法です。具体的に言うと、例えば財務諸表論の勉強をするという場合に、テキストの1章~4章を一度でやるのではなく、1~2章と3~4章という風に分割してやるというものです。前者の方法で計画を立てたとしても量的には不可能ではないかもしれません。しかし、他の科目や答練との兼ね合いで、計画が達成されない可能性が高いことも事実です。計画が達成されないと、人間と言うのはやる気を損なわれるものです(少なくとも自分はそうでした)。
このような事態に陥らないための方法が「一つ一つの勉強量は少なめにする」というものです。自分が出来ると考える最大限の勉強量の70%ぐらいに意図的に設定することで、計画を達成しやすくするのです。余裕があれば、当初考えていた量をやれば良いのです。これはあくまでやる気を長期的に継続させるための1つの方策であるので、計画が達成されなくても全くやる気を損なわない人には無意味な方法かもしれません。
ちなみに私は大原の理論科目の勉強をする際に、財務諸表論は全体を5つ、監査論は全体を10つ、商法は11つ、経営学は8つに分割していました。こうすることで1つ辺りの勉強範囲が狭くなり、精神的に非常に楽に勉強をこなすことが出来ました。
・1日あたりの勉強計画量は少なめに設定する
これは上に述べたものを1日単位で考えたものです。通常、1日に複数の科目を勉強する計画を立てると思います。それぞれの科目で立てた勉強計画が全て達成されて、初めて1日の勉強計画が達成されるわけです。科目ごとの勉強量が多少少なめに設定されていたとしても、項目が多くなれば当然1日の勉強量は多くなります。これでは1つ1つの勉強量を少なくした意味がなくなります。達成感を味わい、明日に繋げることが目的なので、1日辺りでの勉強量についても、自分が考える最大限達成可能な勉強量の70%くらいに設定するようにしていました。こうすることで計画が非常に達成されやすくなります。
・勉強が進んだら、より効率的な計画に組みなおす
一度決めた勉強方法・計画はある程度継続して行わないことには成果が出ません。しかし、ある程度継続して勉強した結果、勉強の進み具合によって、より効率的な勉強方法に組み替えることは必要であると思います。
具体的には、勉強が進めば当初よりも復習のスピードは上がるはずなので、1回あたりの勉強範囲を多少増やす方向で組み替えるという方法や、試験に近づいたら、山あてランクの高い項目の復習頻度を上げるという方法があげられます。
・本試験に焦点を当てた勉強計画にする(答練のための勉強計画は立てない)
本試験に焦点を当てた勉強計画を立てるというのは当たり前の話ですが、本試験が数ヶ月先にあるため、ついつい目先の答練や模試に標準を当てた計画になってしまいがちです。
具体的には、本試験の日程から逆算して計画を立てる方法が有効かと思います。忘却曲線を使った復習方法で5回の復習を行う場合には約2ヶ月半かかるので(1+7+14+21+30=73日)、短答式の勉強であれば、3月の半ば辺りから始めて、5月の末までに5回の復習が終わるように計画を立てるという方法を私はとっていました。
特に上級生については答練対策の勉強計画は立てないことをお勧めします。答練の前日あるいは直前に短期的に知識を詰めこんで良い得点を取ったところで、その知識は長期的に保有されるものではないからです。答練の目的の1つは自分の理解していない、又は覚えていないところを知るということなので、直前に答練の範囲の勉強をしないほうが自分の弱点をより明確に知る事ができます。
<覚えることと書けることは別もの>
これについてはどれくらいの人が意識しているのかはわかりませんが、私はこの点を強く意識していました。テキストを読んで覚えたと思ったことでも、いざ答案を書こうとした時に書けないということが多々あったからです。
この点を意識し始めてからは、何かを覚えるためには出来る限り紙に書くようにしました。声に出して確認するという方法もありますが、答案の作成が「書く」という形で行われる以上、「書く」という方法によって確認することが大切だと考えました。テキストをただ眺めて覚えようとするくらいなら、紙とペンを片手に覚えようとしたほうがはるかに効率は良いと思います。書く事を避けている人は面倒でも書く事によって覚えるようにすると良いのではないでしょうか。
<一字一句にこだわらない>
予備校の答練では、定義などは一字一句同じでないと得点が来ないことがよくあります。そのため、普段の勉強においてもかなり精度の高い形でのインプットを心がけることになりがちです。定義や趣旨を正確に書けることが望ましいことは言うまでもありませんが、膨大な量の定義について精度の高さを求めることについては弊害のほうが多いと思います。
そこで私は定義については精度よりも、理解を重視し、一字一句にはこだわりませんでした。このようなインプット方法をとると答練での得点が下がりますが、本試験への対応力は各段に上がります。本試験では定義を書け、という問題はあるものの、テキストや法規集通りに書かなくても点が来ると考えるからです(採点基準が公表されていないため断言することは出来ませんが、会計士試験は単なる暗記テストではないので、法規集通りの解答のみが正解とは思えません)。
全く違う定義を書いても良いと言っているわけではもちろんありません。定義の重要な部分、意味をきちんと理解し、その場である程度正確な定義を作れるようになれば良いということです。
<答練の受け方>
これについても自分の最も良いと思う方法を取れば良いと思いますが、参考までに私の方法を紹介したいと思います。
答練の主な目的は2つあると考えていたので、その目的に焦点をあてた答練の受け方をしていました。1つ目の目的は「自分の弱点を知る(理解不足、記憶の未定着)」ということであり、もう1つの目的は「戦略的に解答を作成する練習をする」ということです。
一つ目の目的に対応した答練の受け方というのは、先に述べたように答練のための勉強はしないというものです。あくまで本試験まで保持できる長期記憶を多く作ることが目的であるため、短期的な記憶を覚えているものと勘違いしないために答練の直前に勉強することはしませんでした。こうすることで理解したと思っていたことでも、実際はまだまだ理解が足りなかったことなどがはっきりとするため、答練から多くのことを得ることができました。
「戦略的に解答を作成する練習をする」という目的に対応した答練の受け方というのは、解く順番や捨て問を考えながら答練を受けるというものです。これについては毎回の答錬で確実に実施するか否かによって、本試験までに相当の差がつくと思います。漠然と答練を受けている人は一度是非試してみてください。
具体的に何をするのかというと、解く順番を決めて解答を作成し、解けなくても良い問題(捨て問)については時間がなければ解かないということを心掛けるだけです。特別に難しい事はしません。ただ最初のうちはどこから解けば良いのか、どれが捨て問なのかがわからないため難しく感じるかもしれません。毎回自分なりに考えることで最終的には自分なりの基準が出来、スムーズに優先順位をつけられるようになってくると思います。
2.短答編
短答式試験についても論文式試験と基本的には勉強方法は同じです。しかし、短答式試験の形式上、論文式試験と異なる点があるのも事実です。そこで短答式試験を受けるに当たって、もしくは短答式試験の勉強をするに当たって注意すべき点・大切だと考える点についていくつか述べたいと思います。
<精神力の勝負>
短答式試験を受けたことのある人はわかると思いますが、短答式試験というのは持ち合わせた知識もさることながら、本番における精神力が合否に大きく影響します。私は1回目の試験で短答式試験に落ちたのですが、その時に精神面を鍛える必要性を強く感じました。そのため、2年目の短答式試験では知識面だけではなく、本番で実力を発揮できる精神力を鍛えることにも力を注ぎました。
こんな風に書くと精神力を鍛えるために何か特別なことをしたように思えますが、決して特別なことはしていません。実行したのは本番を想定したイメージトレーニングと音楽を使ったピーキングだけです。イメージトレーニングについては詳しく説明する必要がないと思いますが、音楽を使ったピーキングについて簡単に説明したいと思います。
ピーキングというのは自分の気持ち(やる気)を特定の日や時間に向けて高めていくことをいいます。本試験当日に気合いの入った状態へと意図的に導く方法と言っても良いかもしれません。ピーキングについて専門的なことはわかりませんが、私が昨年及び今年の本試験において実際に実行したピーキングの方法を紹介したいと思います。
私が実行したのは、自分の好きなアップテンポの曲を用意して、それを家を出る前、試験の直前に聞くというシンプルな方法です。2000年のシドニーオリンピックで高橋尚子選手がレース前にLOVE2000を聞いていたのと同じことです。これによって私の場合はかなり気合が入り、試験を受けるに当たりポジティブな気持ちになれました。
気持ちを理想的な状態に持っていく事が目的であるため必ずしも音楽を使う必要はありません。その他のものを使って自分の気持ちを高める事ができるのであれば、それも良いと思います。精神面に不安のある人は答練や模試を利用して、自分に適した方法を探してみると良いのではないでしょうか。
<簿記と原価計算を分けない>
短答式試験での目標を立てるに当たって、簿記で7問、原価計算で7問などという風に科目別に目標を立てることが多いように思います。けれど、理論科目も計算科目も配点は同じ。簿記の1問でも原価計算の1問でも1問は1問です。当たり前ですね。
けれど、実際に問題を解くにあたって、無意識のうちの簿記の問題と原価計算の問題を分けている人が多いのではないでしょうか。つまり、簿記が簡単であるにもかかわらず、原価計算にも必要以上に時間を配分したり、簿記を一通り解いた後ではないと原価計算の問題に取りかからなかったり、という風な問題の解き方をとる人が多いのではないのでしょうか。計算科目と理論科目では明らかに要する時間が異なるので分けることは必要かと思いますが、計算科目については簿記と原価計算を合わせた20問を1まとまりと考え、両者を区別せずに解く順番を考えると良いと思います。この点は言われたら当たり前のことなのですが、意外に気づかない点かと思います。
<答練ではわからない問題は空欄にする>
これは実際に実行している人も多いと思います。答練はあくまで本試験に合格するための練習に過ぎません。その練習で偶然当たっても何の意味もありません。適当に解答して当たってしまったがために、本当は理解していない箇所を復習し忘れるという結果にもなりかねません。本試験で空欄を作ることは絶対にしてはいけませんが、答練では時間内に解けたもしくは納得して解答したもののみをマークし、その中での正当率を高めるようにするのが良いと思います。
<模試の結果を気にしない>
これは短答式試験に限ったことではありませんが、短答式試験の場合には特にあてはまると思ったので簡単に触れたいと思います。
短答式試験では、最後に行われる公開模試から本試験まで約1ヶ月程度あります。本試験に焦点を当てた勉強を行う場合には、模試の段階では短答対策が万全ではありません。そのためラスト1ヶ月で大きく伸びる可能性が高いのですが、模試などで客観的に確認することができないため多少不安になったりもします。 けれど、1ヶ月前の模試までに全てを仕上げるような勉強法は取らない方が良いと思います。一度ピークに持っていったものを維持することは非常に難しく、多くの場合下降線を辿ります。
模試の結果は確かに参考にはなります。判定も出ます。けれど、たかが模試です。本試験とは別物です。自分のやり方に自信を持ち、あくまで本試験に焦点を合わせた勉強をするべきです。私は模試でどんなに良い点をとっても「これで本試験は大丈夫」だとは思わないようにしていましたし、逆に少し悪い点をとっても「本番で間違えなくて良かった」と思うようにしていました。何度もしつこいですが、全ては本試験のため。模試を捨て駒としてうまく使えるようになることが必要です。
最後に参考までに、私が短答式対策に使用した問題集等を紹介しておきたいと思います。
簿記&原価計算・・・特別な対策はなし(大原の答練、新会計基準対策特別講座教材のみ)
財務諸表論・・・肢別チェック、会計法規集、大原のテキスト
監査論 ・・・肢別チェック、委員会報告書(テキストにない項目のみ)、
大原のテキスト
商 法・・・短答対策会社法1 各種会社v.2.0(長瀬範彦)
短答対策会社法2 株式会社平成16年版(長瀬範彦)
商法総則商行為法対策 逐条解説テキスト(長瀬範彦)
Ⅳ.勉強法各論(科目別)
総論で述べた勉強法は基本的に全ての科目にあてはまると考えています。但し、科目によっては特定があるのも事実なので、より具体的な勉強法、問題の解き方を述べたいと思います。(簿記、原価計算、商法のみ)
1.簿記
<総合問題中心の勉強法をやめる>
「計算科目は総合問題を最低1日1題は解きましょう」と一般的には言われており、多くの受験生が1日1題は総合問題を解いているのが現状だと思います。このような勉強方法は総合問題という形式に慣れていない入門生には当てはまるのかもしれませんが、総合問題という形式に慣れている受験生(上級生)にとってはあまり効率的な勉強方法とは言えません。
総合問題が解けるようになるには①個別論点ができる②総合問題特有の処理能力を備える、という2つのことが必要になります。この点については多くの受験生が認識していると思うのですが、総合問題が苦手な受験生の多くが②に重点を置いた勉強方法を取っているのではないかと思います。確かに総合問題特有の処理能力を備えるために、総合問題を多く解く事は有効ですが、②はあくまで①が前提となったものであることに注意しなければなりません。
つまり、個別論点ができない段階では、総合問題の処理能力向上は臨めないということです。総合問題を解いたほうが勉強をした気になり、簿記のレベルが向上しているように感じるかもしれませんが、個別論点が出来ない時には何よりもそれを最優先にし、その論点をクリアにしてから総合問題を解く事をお勧めします。そうすることで、自分に欠けている②の要素が自ずと見えてきます。
<総合問題の解き方>
総合問題の解き方は人により千差万別だとは思いますが、私なりの総合問題の解き方を参考までに示したいと思います。
① 問題全体にざっと目を通す(量、難しさを判断)
→どこが取るべき所で、どこが捨てる所かを判断。
時間がかかるor処理が煩雑であれば捨てる問題であると判断することが多い。
② 解答用紙・問題をみて、配点箇所をチェック(配点のない所に力を注がないため)
③ 蛍光ペンで問題の全体像を把握
(有価証券、退職給付引当金など、個別論点がいくつあるのかをチェックする。
チェックすることで、問題を解く上で探しやすくなるというメリットもある)
④ 他の項目に影響を与えない個別論点(退職給付引当金など問題により判断)をまずは解いていく(ex.キャッシュ・フローならば、投資活動&財務活動に係るもの)
→個別論点が終わるごとに、解き終わったことが分るように印(×をつけるなど)をする。こうすることで、解き終わっていない問題が何なのかが一目で分り、検索時間が短縮できる。
⑤ 他の項目に影響を与える論点を解いていく。
私はこのような方法で総合問題を解いていました。このように自分なりの解き方を確立することで、無駄な箇所に時間や労力を費やすことも少なくなりますし、何より、漠然と解いていては感じることの出来ない総合問題への対応能力の向上を感じることができます。
毎回の答練を漠然と解いているのであれば、是非一度この方法を試してみてください。戦略的に問題を解けるようになると思います。
2.原価計算
<理解なしの反復練習をしない>
理解を伴った勉強が必要であるというのは原価計算に限ったことではありませんが、特に原価計算については計算の根拠の理解が重要になります。計算科目であるがゆえに、慣れで解いてしまうことが多く、気づいた時には全く計算の根拠を説明できないという事態に陥る可能性が高いからです。全ての問題において理屈を考えながら解くという必要はないと思いますが、普段は当たり前のように解いている問題の理屈を時には考えてみるという習慣をつけておくことが大切です。
<取るべき問題への嗅覚を持つ>
原価計算という科目の最も恐ろしいところは、1つの問題で間違えると、それに連鎖してその後の問題や周りの問題も間違えてしまうことが多いという点です。また、本試験において、時間内では絶対に終わらない量の問題が出題される可能性が高いというのも大きな特徴です。
この点から考えて、他の科目に比して、取るべき問題と捨てるべき問題の取捨選択が重要であると言えます。どんなに計算力があったとしても、取捨選択を誤った場合には時間が足らないばかりではなく、比較的簡単な取るべき問題も落とすことにもなり兼ねません。
そこで取るべき問題とは一体どんな問題なのか?という疑問が湧きます。これについては問題によって違う、としか答えようがなく、絶対的な基準はありません。毎回の答練や模試において、自分の判断と他の受験生の正答率などとを比較し、徐々に感覚を掴むしかないと私は考えています。この作業は楽ではありませんが、これを行わない限り、本試験において、原価計算を効率的に解く事は難しいと言ってよいでしょう。
3.商法
<LEGOブロックの要領で>
商法はテキストの論証例などの数が多いですが、論述のパターンはある程度決まっているので、勉強が進むと比較的得点はしやすい科目だと思います。ただ、論証例を丸暗記するような勉強法では答練の点は取れても、本試験では点が取れない可能性が高いです。問われ方を少し変えられたら対応できなくなるためです。
そこで商法では、丸暗記ではなく、定義、趣旨などを分けて覚え、それらの組み合わせとして1つの大きな論証を行えるように訓練すれば良いと思います。こうすることで問われ方が変わった場合にも必要に応じて書く内容や書く量を増減させられ、要求された解答を作成しやすくなります。LEGOブロックを組み合わせて色々な建物を作っていくといったイメージです。
各々のブロックが書けるようになったら、今度はそれらを図にして現してみるとよいでしょう。商法は論理性が求められる科目なので、図に表す方法はロジックを理解する良い方法になります。わかっていないものを図にすることはできないからです。
このような方法をとる事で、基本的な流れの論証は出来るようになります。一通り出来るようになったら、完成した形を壊さない程度に一つ一つのブロックに色づけをしたり、うまく加工したりすればよいのです。
Ⅴ.成績の推移
短答式答練総合偏差値
本人 | 第2次 | 第1次 | |
応用1 | 61.9 | 57.2 | 50.2 |
応用2 | 60.5 | 57.7 | 53.5 |
応用3 | 46.3 | 56.9 | 50.8 |
直対1 | 59.8 | 57 | 50 |
公開1 | 59.9 | 57 | 51.3 |
直対2 | 55 | 56.4 | 50.8 |
公開2 | 68.6 | 56.6 | 50.5 |
論文式答練 公開模試:上位約10%(受験者1271人)
ファイナル模試:上位約10%(受験者1559人)
Ⅵ.就職活動体験記
昨年度から論文式合格者よりも大手監査法人などの求人数が少ないという状況にあり、就職活動も大変な状況にあります。来年からはどういう状況になるのかは現時点ではわかりませんが、来年の就職活動に役立つように私の経験を述べたいと思います。
今年は昨年とは異なり、監査法人の面接が合格発表日後に行われるというスケジュールになっていました。そのため、面接の予約が合格発表日から電話予約により行われました。この電話予約が最大の難関と言ってもよく、合格発表があった9:00から電話をかけ始めてもなかなか繋がりませんでした。人気歌手のコンサート予約状態で、運を天に任せるしかありませんでした。私は運良く40分後に電話がつながり、予約を取ることができましたが、人によっては全く繋がらなかったようです。来年度はこの電話予約の方法についても何らかの改善が行われれば良いと個人的には思っています。
合格発表が8日で、面接日が12日だったのでその間の短い時間を利用してエントリーシート及び面接対策を最大限に行いました。なかでも志望動機と自己アピールはしっかりと出きるように出来るだけ準備を行いました。
面接は1次面接と2次面接があり、1次が1対2(面接官が2)、2次が1対1で行われました。想像していたよりも非常に和やかな雰囲気で行われ、個人的には自分の考えや志望動機などをアピールしやすかったです。1次面接と2次面接では特別異なったことは聞かれません。ただ、2次面接では将来自分が何をやりたいのかについて詳しく聞かれました。普段から将来何をやりたいのかについて考えている人は問題ないと思いますが、全く考えたことのない人は漠然とでも良いので考えてみるとよいかもしれません。
採用の通知は翌日の午前中までに行われるということだったのですが、幸いにも面接終了後数十分後には連絡を頂く事が出来、無事就職することが出来ました。
私は幸運にも採用されましたが、どのような理由により自分が採用されたのかは正直わかりません。1つだけ言えることは、面接官との相性が非常に良く、とてもスムーズに面接が進んだ点が良かったのではないかということです。相手の話を真剣に聞き、自分の言いたい事を自分の言葉で語ったことが良かったのかもしれません。
いざ面接を受ける時の思ったのは、受験勉強をしているときから少しずつでも良いので自分が将来どんな業務をやりたいのか、なぜ会計士を目指そうと思ったのかという点について深く考えておけば良かったということです。これは面接に必要だからというだけではなく、受験勉強をするうえでモチベーションを維持する上でも有用だと思います。
Ⅴ.終わりに
以上、長々と色々なことを述べてきましたが、全て試験に合格したからこそ言える結果論であると思っていますし、そのことは私も自覚しているつもりです。そのため、ここで示した勉強法をとれば絶対に合格するなどとは思っていません。この合格体験記の趣旨が、出来るだけ多様な勉強方法を受験生に提供するということなので、その1つの方法として自分の勉強方法を述べたということです。この趣旨を理解し、私の勉強方法を取り入れた受験生が少しでも合格に近づくことができれば幸いです。長文を読んで頂きありがとうございました。
(スポック注 2005/9/22)
Whiteさんの勉強法は、公認会計士試験だけでなく、社会保険労務士、司法書士、行政書士、弁理士、そのほかの資格勉強すべてに通ずるものがあると思います。いや資格のみならず、勉強法一般の法則が多く含まれているのでしょう。
公開以後、会計士受験生だけでなく多くの資格受験生から、このページは参照されていることが、それを証明しています。
なお、Whiteさんが、勉強スケジュールを管理するために使っていた手帳の一部を提供していただいています。
ぜひご参照ください。
White式勉強手帳のページ