Yさん
公認会計士二次試験<2003合格体験記>
by Y- その1
- (スポック注)
大学卒業後、金融機関に2年勤めた後、退社し受験勉強に専念し
見事一発合格されました。
合格年度:2003年度
受験回数:1回
出身学部:某国立大学経済学部
専門学校:TAC通学
全国模試成績:上位5%以内
模試の成績もすごく優秀です。無駄のない勉強法の神髄を感じてください。
なお、文中の赤文字強調などは、スポックにて行っております。ご留意ください。
- はしがき
そして私が合格してからもう2 年が経ちました。もともとレポートを書き始めたのは、「今まで自分が考えてきたことを自分の中にしまっておいても意味がない。もし自分が考えてきたことを知ることがそれを知った人にとってプラスになるのであれば是非その機会がほしい」という思いからです。当初の目的であった受験仲間へのアドバイスという点では、一定の役割を果たしたと自分では思っています。このまま、徐々に役割を終えていくというのもそれはそれでよいかなとも思ったのですが、やはり見知らぬ誰かにプラスになる可能性があるのであればこれを公開する価値はまだ十分にあるだろうと思い直し、インターネット上で公開することに決めました。
会計士試験も新制度へと移行し、私が受験した当時とは環境は大きく変わりました。確かに制度は変化しましたが、その本質的なところは変わっていないと思います。そのため、当初のレポートに若干の付け加えをするにとどめています。
せっかく勉強する機会があるのですから、楽しく勉強してもらいたい、知識を得ることそしてその知識を使うことの楽しさを少しでも分かってもらいたい、そう思っています。結構偉そうに書いている割に稚拙な文章で申し訳ないのですが、皆さんの一助になれば幸いです。皆さんが思い思いの方法でこのレポートを活用していただけることを期待しています。
2005 年10 月
目次
第1 部 全体事項
第1節 密度の濃い勉強
第2節 講義はきちんと聴く
第3節 継続するということ
第4節 応用力とは
第5節 間違えた本当の原因
第6節 人に対して説明をしてみよう
第7節 7 科目をやること
(第2部各論、第3部については、その2につづきます。)
第1 部 全体事項
まず総論として全体事項を述べた後で、各論として各科目の勉強について述べていきたいと思います。それぞれテーマを設定して書いたつもりです。とりあえず自分が受験勉強をしている際に、考えていたこと・気をつけていたことなどですので、気に入ったら取り入れてみてください。どんなにいい勉強方法でも継続してやらなければ全く成果は出ません。取り入れるのであればしっかりと継続して行ってください。
第1節 密度の濃い勉強
よく世間で言われる密度の濃い勉強とは何でしょうか?私の考えではおそらくどれだけ頭を使っているかだと思います。それでは皆どれくらい頭を使っているのでしょうか。
答練を受けているとき、人は頭をフルに使っていると思います。だからこそ全答練など一日中答練を受ければヘトヘトになるわけです。では普段の勉強においてそこまでヘトヘトになるかといえば、ならないことがほとんどです。でもこれはおかしいですよね。
なにがおかしいか?だって仮に全答錬で最大に頭を使うとすると、なぜ普段の勉強でそこまで頭を使わないのか?ということになりませんか。つまりそれだけ普段の勉強では頭を使っていない時間が多い、時間を無駄に使っていることになるといえると思うのです。本来毎日帰るときにはヘトヘトになっていなければおかしいわけです。でも実際にはそこまでなる日はそう多くはありません。では、どうやって頭を使うか?ということが問題になるわけです。
一般に計算科目は頭を使い易いものです。問題演習が多いからでしょうか(もちろん問題演習でも頭を使わない場合はありますが)。ネックは理論です。これが難しい。読んでいるだけでは大抵頭を使っているとはいえません。では、なぜ答練は疲れるのでしょうか?おそらくアウトプットを行うからだと思います。そうであればいかに普段の理論の勉強を答錬に近づけるかを考えるべきでしょう。例えば自分で問題を作るなどです(第3 章第2 節御参照)。そしてその際には頭だけではなく書くことにも注意すべきです。というのも人は往々にして怠け者なので書かないでいるとウヤムヤにして次に進むことが多々あるためです。これをしっかりと防止するように勉強する必要があります。
まずは頭を使うことに慣れることが大事。そして頭を使う時間を徐々に増やしていく。こういうことは急に変えられるものではありません。時間に捕らわれず焦らずにゆっくり問題を考える、この積み重ねがすべてです。もちろん同じ問題をずっと考え続ければいいというわけではありません。思考が止まっては意味がないですよね。分かりそうになければしばらくやらないのもまた大事なことです。大切なことはしっかり頭に働いてもらうことです。
意識すれば今自分が無駄な時間を過ごしているか否かは分かってきます。それをもとに計画を立て直すようにできると良いのではと思います。
第2節 講義はきちんと聴く
授業をしっかり聞きましょうとよく聞きますが、なぜ大切なのでしょうか?一対一の会話において人の話を聞かないというのは失礼なことで、実際そんな人はあまり見かけません。もし話を聞かずにいれば途中から話が分からなくなることも容易に想像できますね。基本的な構造は授業でも同じであり、一対一が一対多になるというだけです。すなわち、会話であろうと授業であろうと同じことです。聞いていなければ分からなくなることは当然です。しかし、会話と異なり授業にはそれをフォローするものが存在します。テキスト、レジュメなどですね。
授業とテキスト、レジュメにおいては大きく異なるところがあります。まず授業は見てそして聞いてというように受講者は視覚・聴覚を使うため、その分単にテキスト・レジュメを読んでいるのに比べ印象に残ります。印象に残ればしめたものです。当然印象に残るほうが定着しやすいというのは想像できることですよね。またそれだけではなくニュアンスという点でも授業はテキスト、レジュメなどと異なります。人は説明をするときに「大体こんな感じ」的な言い方をします。実は理解をする上でこれが最も大事なことだと思います。理解をするためにはまず大きなイメージをもつことが大事だからです。ではこのイメージをどちらが持ちやすいかといえば圧倒的に授業になります。テキスト等では文章で表現するがゆえにアバウトな表現がしにくいのです。授業の言葉の一言一言にはその人の理解が詰まっています。聞き逃すことの代償は大変大きいのです。
では授業に集中するためにはどうすればよいのでしょうか?初めて習う分野であれば予習をしないことです。今まで習ったことがしっかり理解できていれば予習など必要なく授業内で大部分の理解は可能であり、残りの分からない部分については復習をすれば足りるでしょう。個人的には予習は無意味どころか有害であるとさえ思います。人は自分が分かっていることほど集中力を欠き、授業を聞きません。その結果その人の理解は最も大切な授業ベースでなく、テキストベースになってしまうのです。これは絶対に避けたいところです。
よくVTR の授業で講義録を横に見ながら授業を受けている人を見かけます。授業を理解するためには授業の話の流れに乗る必要があることはこれまでの話から分かるでしょう。しかし、講義録では話の流れに関係なくすべての板書が記載されているため、講師が板書する内容が先に分かってしまいます。この状態で話の流れに乗るのはかなり難しいことだと思います。そのため板書の内容を確認する程度に講義録は使うべきでしょう。板書は結果も重要ですがそれ以上に書かれたタイミング、すなわちどのような説明のもとで書かれたかが重要なのです。決して講師の話よりも先走ることがないようにしたいものです。
また、授業中に寝てしまう人も多いと思います。授業に集中できていないのは明らかですが、睡眠不足によることが原因となっている人も多いと思います。私は、無理して朝早くTAC に出てくるくらいであったら、きちんと寝た上で授業中絶対に寝ないぞという気持ちでいて欲しいと思います。先ほども言いましたが、授業を聞き逃すことの代償はとても大きく、これを他で補うにはかなりの時間がかかるものです。それが分かっていながらきちんと睡眠をとらずに授業で寝てしまうのでは愚の骨頂だと思います。授業をきちんと聞くということの重要性を認識していただければ、それに備えきちんと睡眠をとるということを自然と考えると思います。
第3節 継続するということ
どれだけいい勉強をしていたとしても、それに継続性が伴っていなければ大して効果は出ないと思います。個人的な感覚でいえば、多少非効率的な勉強の仕方であってもバカ正直にその勉強法を継続していれば、実力はある程度ついてくるものだと思っています。これが効率的にかつ効果的な勉強法であればなおさらです。
勉強方法に悩めば悩むほどさまざまな勉強方法を試みてしまうものだと思います。それ自体は致し方ないことかと思いますが、自分で考えた勉強法は継続して行うことが何よりも大事かと思います。どんなに良い勉強方法であっても、短時間で成果が出るものではありません。自分が納得した勉強方法であれば、最低3 ヶ月程度は継続して行う必要があるのではないでしょうか。今おこなっている勉強の成果が出るのは1 週間でも1 ヶ月後でもありません。私の経験上、もっと時間がかかるものだと思います。短期間で成果を挙げようとあせることなく、一つの勉強方法を継続的に行うことが肝要かと思っています。
第4節 応用力とは
「応用力がない」と嘆く人がいます。しかし実際には応用力のない人は単に基本ができていないというだけのことが多いようです。逆に言えば、応用力がある人ほど基本に忠実に考えています。自分に応用力があったかは別として、自分の出会った頭が良い、応用力があると思われる人たちは物事を考える時にいつも基本に立ち返っていました。基本的なことから徐々にいろんな要素を積み上げて複雑な物事を考えようとするのです。応用力がない人は、逆に基本的なことに立ち戻ることなく、いきなり複雑な物事に飛びついてしまうように思います。
では、基本というものはどんなものでしょうか。私に限らず人は「基本を大切にせよ」とよく言います。しかし基本という言葉、言うのは簡単なのですが、なかなか説明は難しいものです。うまく説明できるか分かりませんが、基本というものは別に簡単なものというわけではありません。たとえば数学では公式というものがありますがその公式自体は基本ではありません。その公式を導き出す方法、これが基本というものではないかと私は思っています。というのも、そこには公式の考え方が詰まっているわけでありますし、それをいつでも導き出せるような状況にない中でいくら応用問題を解こうとしても解けないのは当たり前ではないでしょうか。応用問題はあくまでも「公式を導き出すような考え方についての」応用問題であって、「公式を使うことについての」応用問題ではないと思います。
なんだか分かったようでよく分からない説明の仕方で恐縮であり、第6 節で自分が書いていることを踏まえると自分もまだまだ基本というものをどこかで疎かにしてるのかなと改めて感じるのですが、おそらく説明の方向性は間違っていないと思います。難しい問題に困ったら、真正面からモロにぶつかるのではなく、基本というものに立ち返ってその分野のテキストに書いてある導入説明のあたりから読んでみると、今まで分からなかったそもそも「何が難しいのか?」ということが分かってくるのではないでしょうか?
第5節 間違えた本当の原因
会計士試験においてみんなが悩まされるのはケアレスミスだと思います。簿記や原価計算では「なんでこんなミスしちゃったんだろう」と悔しい気持ちになるのは本当に良くあるかと思います。もちろん本当に単なるケアレスミスで今後注意するしかないようなものもあるかと思いますが、必ずしもそれだけとはいえません。
ケアレスミスをした場合にはよくその原因について考えてほしいのです。本当に単なるミスなのですか?他に原因はありませんでしたか?その前に基本的な問題に手間取ったりしててちょっと焦ったりしていませんでしたか?解く順番を間違えて時間がなくて焦ってしまったりしなかったですか?ミスしたとしてもそれをカバーするためのチェック方法は何もありませんでしたか?
単なるミスでしたら今後注意するしかないかと思いますが、他に何か原因があったりするのであれば本来改善すべきなのはその別の部分です。人は焦ったりすれば簡単にケアレスミスをします。その場合、ケアレスミスをしたこと自体を考えるのではなくなぜ焦ってしまったのか、もしくはなぜ注意散漫となってしまったのかをよく考えてください。そうでなければ今度はまた違った形でケアレスミスをすることになります。またケアレスミスをしたとしても時間内になぜそれを発見できなかったのかも考えてください。ケアレスミスを完全に撲滅することは不可能ですから、それを発見できなかったことにも最終的に間違えてしまった原因はあると思います。単に「ケアレスミスしちゃった」と言って済ますのではなくその真の原因を突き止めなければ、その人のケアレスミスはいつになっても少なくなりません。
第6節 人に対して説明をしてみよう
自分が本当に理解しているかということを試すには人に説明をすることが最も良い方法だと思います。それもしっかりと相手に理解してもらう事が必要です。説明を受ける側は説明をしてもらって理解できなくてもその原因のかなりの部分は説明をする人の理解不足にあると思います。私の場合よく人に説明をしていましたが、実は説明をしているうちにようやく本当の意味で理解できたと言うことも少なくないのです。大体自分の中で理解できていない場合には、説明を受けている相手の表情も微妙なものです。「分かる気もするけど、しっくりとはこない」そんな感じではないでしょうか。逆に自分の中でしっかりと理解できたときにはきちんと相手方にもそれは伝わるものです(具体的には表情がパッと明るくなります)。
「分からないなりに説明をしてみる」これは頭の中を整理して本当に分からない部分を浮き彫りにするのにも有効です。単に分からないといっているだけではなくて自分から相手をつかまえて「ちょっと聞いてもらってもいい?」と言うくらいであってほしいと思います。確実にその方が理解は深まります。人に説明をするのが苦手な人が多いように思いますが、試験は採点者に対し答案を通して説明をすることといえます。人に説明をすることが苦手な人はなおさら自ら説明をするようにしないとどんどんその能力は落ちていってしまうのではないでしょうか。
意外に口に出して考えていると随分頭の中がすっきりしてくるものです。時間は少々お互いにとられますが、説明をする方・説明をされる方ともに会話をすることで新たな発見はあることが多いので積極的にやってもらうとよいのではないでしょうか。
第7節 7 科目をやること
会計士試験は選択科目含め7 科目トータルで合否を判定します。もちろんトータルで競うわけですから別に苦手科目があったとしても得意科目で挽回できれば良いことではあります。しかし、得意科目が常に安泰と言うことはありませんので、そんな場合にはトータルの結果も悲惨な状況になります。財務論で言えば、期待収益率は変わらないのにリスクばかり大きいわけです。リスク分散効果により安定した成績を残すためにも、やはり苦手科目を無くしつつ全体の底上げを図ると言うのが賢いやり方だと思います。
「そりゃそうだ」と言われてしまいそうですが、なかなか皆さんそういったやり方をやっていないように思えます。それは一日にやる科目が少ない人が多いと言うことです。私の場合、一日最低5科目はやると決めて勉強をしていました。やはり7 科目を全体的に底上げしようとしたら毎日その科目に触れるようにするのが良いかと思います。「なんで?」と聞かれても合理的な説明はなかなかできないのですが、一つには知識の定着というものがあるのではないでしょうか。
まず、みなさん自分の頭を過信してはいないでしょうか?よく「すぐに自分は覚えたことを忘れてしまう」といった内容のことを聞きます。しかし、よくよく話を聞いてみると「それは忘れて当然なのじゃないだろうか」と思わざるをえないことがよくあります。つまり、自分の知識というのは何もやらなければどんどん忘れていくものだということをきちんと理解していない方が多く、せっかく覚えた知識をフォローすることなく当然のように覚えた知識を忘れていってしまうのです。どんなに頭が良い人であろうとも習得した知識に対して1 週間後、2 週間後・・・ときちんとフォローをしないのであれば1 ヵ月後にはほとんど忘れてしまっているものだと思います。知識を定着させようとして、そのフォローを行おうとすれば当然一日にやるべき科目数は多くなってきます。無論、一日に勉強に費やすことができる時間は限られているのですから、知識の定着を目的とする勉強は浅く広くさらっとレジュメを見てみる程度のレベルにとどめておく必要があるでしょうが、勉強内容に強弱をつけながらまんべんなく科目をこなしていく方がよいのではないでしょうか。
それでは、次に各科目についてコメントしていきたいと思います。
Yさん第二部に続く