enferさん、テレビを捨てて社会人一発合格

すべてはテレビを捨てることから始まった。社会人経験一発合格。

■ 学習に対する考え方(私見)

 学習に対する姿勢は十人十色だと思います。講師を信じて邁進される方、自分に合わせて講師を利用する方、自分に合わせて専門学校を利用する方、独学が中心の方など様々です。私はどちらかというと、自分の脳ミソを講師に合わせる立場に立っております。

 したがって、「どの講師が受かりやすいか」とか「どの講師が人気なのか」といったゴシップとは無縁でした。上級期にほとんどの科目で講師が変わっておりますが、これは講師の方の退職や、自分の学習計画に適合する講義日程を組み合わせた結果です。その意味では、「自分の方針に合わせて講師は誰でもいい」という形だったのかもしれません。

 短答本試験後に、TACの休憩室で「おれの最大の失敗は入門期に○○講師を選んでしまったからだ」と嘯く学生が散見されましたが、たとえ授業料を払うお客様としての立場があっても、このように勉学において講師や専門学校に敗因を転嫁するのは甘えだと考えます。

受験体験記 by enfer

1 序章

 おかげさまで、平成19年度公認会計士試験に合格することができました。本稿では、受験を志してから、合格に至るまでの学習経緯についての総論及び各論を記すことで、皆様の学習の参考として頂くことを主眼としております。

まず、本稿の前提として以下に私の略歴を紹介致します。

・年齢:20代半ば
・学歴:大学卒業(合格時無職)
・職歴:民間企業(SIer)にて数年の業務経験(非会計系)あり
・資格等:日商簿記2級合格
・※日商簿記1級の勉強(独学)を一通り修了(業務都合により未受験)
・受験:平成18年度短答式 不合格(お試し受験)
・平成19年度論文式 合格
・TAC受講コース: 新宿校 1.5年L本科(Cクラス)
・新宿校 アクセスコース(朝クラス)・・・出席率70%程度
・TAC受講講師(全て新宿校にて登録):

科目 入門基礎期 上級期 上級カリキュラム
簿記 (TACを退職された方です) 李 先生(VTR) 夏上級
財務諸表論 (TACを退職された方です) (TACを退職された方です) 夏上級
管理会計論 稲田 先生 近藤(希) 先生(VTR) 秋上級
監査論 原  先生 中里 先生(VTR) 夏上級
企業法 田崎 先生 田崎 先生 秋上級
租税法 梅木 先生 木戸 先生(VTR) 夏上級
経営学 桑原 先生 藤沢 先生(VTR) 夏上級

※また、本稿では「暗記」という言葉を多用しておりますが、これは私なりの暗記スタイルを確立した上で、その方法を意味しております。いわゆる一字一句暗記するものではございません。詳細については、3-2-(3)-4の財務諸表論の項をご覧ください。

2 基本的な考え方

■ 学習に対する考え方(私見)

 学習に対する姿勢は十人十色だと思います。講師を信じて邁進される方、自分に合わせて講師を利用する方、自分に合わせて専門学校を利用する方、独学が中心の方など様々です。私はどちらかというと、自分の脳ミソを講師に合わせる立場に立っております。したがって、「どの講師が受かりやすいか」とか「どの講師が人気なのか」といったゴシップとは無縁でした。上級期にほとんどの科目で講師が変わっておりますが、これは講師の方の退職や、自分の学習計画に適合する講義日程を組み合わせた結果です。その意味では、「自分の方針に合わせて講師は誰でもいい」という形だったのかもしれません。

 短答本試験後に、TACの休憩室で「おれの最大の失敗は入門期に○○講師を選んでしまったからだ」と嘯く学生が散見されましたが、たとえ授業料を払うお客様としての立場があっても、このように勉学において講師や専門学校に敗因を転嫁するのは甘えだと考えます。

■ 学習のサイクル

 入門期・上級期を通じて、基本的な学習サイクルは

「計画」→「実施」→「フィードバック」

の繰り返しでした。

 インプットの勉強か、アウトプットの勉強かの違いはありましたが、基本的にこの流れは直前期においても変わりません。論文式本試験の1週間前でも、Excelでちまちまと計画を作っておりました。

 上述の学習姿勢とも通じますが、合格を勝ち取るためには、やはり

「継続すること」

なのだと実感しました。

 各論については以降で述べますが、多少非効率的な愚直なやり方であっても、きちんと計画を立てて実行し、計画自体の内容や論点の理解に関する課題を事後にフィードバックして次の計画に活かすこと、そしてそれを継続することがキーとなると思います。もちろん最初は完璧じゃなくたって構いません。

 私は2週間ごとに日曜日に親のPCを使用して、14日間の詳細なスケジュール(何を何ページやるか)をExcelで立てました。そして、計画を立てた上で見積もり時間を積算し、12時間程度になるように調整します。

 この方法のメリットは、自分のやるべきことが明確になることにより、

「次何しようかな」と考える暇を与えないこと、

 そしてスランプに陥って勉強のモチベーションがなかなか上がらないときでも、(あまり良いことではないですが)機械的にノルマをこなすことで、後で精神的に安心感を持てることです。

 学習計画の立案の際には、

(1)前々回講義以前の学習範囲を少しずつ網羅的に復習する、「復習ルーティン」と

(2)直近の前回講義の内容を繰り返し反復する「答練対策ルーティン」の

 2つの車輪をつねに組み入れておりました。さらに、復習ルーティンでは、科目の分野ごとに分割して、例えば、租税法であれば、「法人税法」、「所得税法」、「消費税法」、「理論」の4つの車輪を設けて、「毎日」4つ全てをちょっとずつ回しました。他の科目でも、経営学であれば「組織論・戦略論」と「マーケティング論」と「ファイナンス論」の3つになります。

<<イメージ図>>
enfer.gif

■モチベーション

 職業選択の自由は認められていますが、会社を辞めるということは、簡単なことではありません。退路を断って受験に専念されている方はモチベーションで悩むことはないと思います。

 一方、学生の方は一般事業会社に就職するという退路や、高校生や大学1、2年生の方は3、4年次に受かればよいという退路があるため、必ずしもモチベーションが維持できない苦労があるかと思います。

 私は、学生時代には学校の勉強でさえも今ほど集中して勉強しておりませんでした。ですから、学校に通いつつ、TACで勉強されている学生さんを尊敬します。

是非、TACの門を叩いた時の初心を忘れないようにして頑張って下さい。

 以下に私が実施した、禁欲方法を列挙しますが、少々極端なものもありますので、参考程度に胸に留めておいて下さい。

・必要以上に金を持たない(厳密には持てなかった(泣)
・テレビ廃棄及びPCでのテレビ閲覧を防止するため、同軸ケーブル切  ⇒プレステは息抜きでも言語道断 エミュもNG
・物理メモリ破損によるPC起動不可(学習計画等は土日に親のPCにて作成
・携帯電話解約
・TACで友人を極力つくらない(キズの舐めあい防止)
・彼女に熱い決意を力説(理解を得られなければ別れる)
・クラス内の優秀な人を一人探して、影ながらその人の成績を逐次ウォッチする
・早めに監査法人などのパンフレット又はTAC-NEWSを入手し、熟読
・半日かけて人生について熟考
「得意科目」、「苦手科目」を作らない
・禁酒禁煙
・モチベが上がらないときに息抜きをするのではなく、息抜きをする日程も事前に計画する(つまりできるだけノリで行動しない)
・2ちゃんねるやStartPage及び各種大学専用掲示板群等のポータルサイトにて匿名で虚勢を張っている投稿やブログに惑わされないようにするため、上記のサイトはできるだけ閲覧しない(但し、論文後自己採点のときは見ました)⇒精神衛生上も良くありません。聞きたいことは講師の先生に聞きましょう。

 「得意科目、苦手科目を作らない」というのは、少々逆説的ですので解説を加えます。

 TACで実施される答練は直前期になればなるほど難しくなっていきます。ですから、基礎答練レベルで得意科目だと思っていた科目で偏差値が伸び悩んだとき、モチベーションの落ち込みは激しいかもしれません。

 逆に苦手科目だと思っていた科目でよい成績を修めて調子に乗ることもあるでしょう。このように、モチベーションが乱高下する状況は学習時間のバランスにも影響して最も危険だと思います。

 ですから、得意不得意と言わずに、「一時的に偏差値がよかっただけ(悪かっただけ)の科目」と割り切って、失点箇所を明確にするとともに、基本的な学習時間のバランスを崩さないことが重要だと思いました。

3 科目別学習方針と成績推移及び反省点

3-1全体総括

(1)学習方法の概観
具体的な方法論の前に、全体的な学習の取り組み方について述べます。まず、学習科目7科目を以下のように分類しました。

  (a)学習範囲が広い(又は、上級期の知識の上乗せが非常に多い科目)

     簿記、財務諸表論、租税法

  (b)学習範囲は比較的狭いが、思考力が要求される科目

     監査論、企業法

  (c)その他    管理会計論、経営学

以上の分類を元に、大まかではありますが、概して以下のアプローチをとりました。

  (a)の科目に対して・・・回転数を重視

  (b)の科目に対して・・・細かい暗記+教材の文章の意味内容の理解+文章構成の練習

  (c)の科目に対して・・・それぞれ

 これらのアプローチは、あくまで方針であって、実際には異なる勉強方法を実施したものも多々あります。詳細は3-2以降の各論に譲ります。但し、2007年度の論文式本試験を見る限りでは、今後は特に財務諸表論や租税法の理論部分など、回転数重視だけでは対応できない試験になる(というか既になっている)のではないかとも思いました。
(2)答練の取り組み方と総合成績
 私は、入門期の最後に講師の方が「目標は本試験で合格することであって、答練で良い成績をとることではない」とおっしゃっていたのを鵜呑みにし、第1回と第2回の基礎答練に向けては、通常の復習ルーティンだけで対応し、それ以外はほぼ準備なしで臨みました。もちろんそれでは成績も上がりませんでした。そこで3回目以降は「復習ルーティン」と「答練対策ルーティン」の両輪で計画をプロットし、答練に慣れてきたことも相俟って徐々に成績も上がってきました。

     以上の経験より、私は次のことを強く意識しました。

(a) 例え基礎期であっても、時間がないからといって答練の出題範囲だけ限定的に勉強したのでは、応用答練期、第1回全答練前の総確認の時期が単なるインプットになってしまい学習が効果的なものにならない。しかし、答練前にはそれなりの準備は必要。

(b) 答練対策ルーティンは必要な科目の必要な分野に留める。例えば、租税法の基礎答練前には”今回以前”の全出題範囲の法人税法、消費税法は復習不要なくらい完成し、答練対策は所得税法の計算だけにするということです。捻出された時間は他科目へ充当します。

最後に、各種答練の全科目を通じた総合的な結果について表にまとめます。
基礎答練1回目2回目3回目4回目5回目
偏差値判定偏差値判定偏差値判定偏差値判定偏差値判定
財務会計53.5D57.3C63.8A57.5C--
管理会計45.6E49.7E43.3E53.1D--
監査論55.7C48.7E60.6B61.7B--
企業法60.05.7B62.7A51.4E69.5A65.5A
租税法54.2D53.6D63.1B58.9B--
経営学47.2E60.3B60.2B----
総合51.6E54.6D58.3C60.4B65.7A
応用答練1回目2回目3回目4回目
偏差値判定偏差値判定偏差値判定偏差値判定
財務会計65.7A51.7E----
管理会計52.8D51E----
監査論59.7B57.3C----
企業法63.7A50.7E54.3D55.7C
租税法58C63A----
経営学64.4A59.4B----
総合62.7A53.6D54.4D55.7C
全答練1回目全答練2回目
偏差値判定偏差値判定
財務会計63.8A財務会計46.6D
管理会計40.9E管理会計54.3C
監査論65.4A監査論62.1A
企業法A企業法A
租税法59.7B租税法A
経営学61.5B経営学52.1C
総合61.7B総合58.6B
直前答練1回目2回目3回目4回目
偏差値判定偏差値判定偏差値判定偏差値判定
財務会計54.4C50.2C54.2C51.6C
管理会計54C51.1C45.4D(注)(注)
監査論56.3B65.2A48.7D71.9A
企業法52.5C63.4A60.7B41.8E
租税法56.5B44.9D53.2C(注)(注)
経営学52.2C62.5A53.5C59B
総合53.1C54.8C51.8C(注)(注)
(注)・・・TACのミスで集計されていないため不明

ー・・・公開模試で成績優秀者に載ってしまったため伏せてあります

全答練(論文)順位 第1回 359位/3594  第2回 558位/3254

3-2財務会計論

(1)答練の成績推移(論文)
答練素点平均素点偏差値順位判定
基礎110891.953.51191/3059D
基礎211484.757.3657/2616C
基礎312090.363.8186/2332A
基礎412097.657.5501/2124C
応用112583.265.7106/2179A
応用29390.551.7886/2005E
全答19267.663.8228/3343A
直答110883.154.4633/1806C
直答28271.950.2819/1654C
直答3123108.654.2403/1109C
直答49984.551.6583/1242C
全答26271.546.61916/2902D
(2)簿記
(2)-1 入門期

使用教材:テキスト(講義中や不明点があった場合のみ)、問題集(TAC配布)

     トレーニングシリーズ簿記2・3・4・5(市販)   

      実力テスト:第1回 81/100点

            第2回 96/100点

            第3回 76/100点

            第4回 90/100点

 入門期はがむしゃらに問題集とトレ簿を回しておりました。

 各実力テストをマイルストーンにし、できる限り100点に近づけるよう計算力強化に力を入れました。

 回転数は各問題集(5冊)を8回転くらい、トレ簿(4冊)を4回転くらいでしょうか。

 この時期に重要なことは、帳簿組織を除いて、論点の差別を行わないということです。不安があれば、一般商品売買だろうが、特殊商品売買だろうが、建設業だろうが、全ての論点を完璧にし、さらにそれを回転します。今思えば、それが短答直前期へのスムーズな移行につながったと思います。

 但し、やはり前述のように、実力テストのみをターゲットにするのではなく、基礎マスターIVのときでも復習ルーティンでは特商や個別論点を熱くやっていたときもありました。

 また、上級簿記で夏上級をとるために、基礎マスターIVの実力テスト終了と同時に基礎マスターVのテキストを入手し、その週と翌週の週末は土日の2日間×2週の計4日かけて資本連結と成果連結を予習しインプットを行いました。そして6月中旬から7月一杯は他の論点を極力控え、連結のアウトプットに集中しました。

 そのためには、基礎マスターIVの実力テストまでに、基礎マスターI~IVのほぼ全ての論点(特商の金利区分法と帳簿組織を除く)を完成させておく必要があります。このことからも、1.5L本科の場合、入門期の3月~5月の時期が如何に重要であるかがお分かり頂けると思います

 全ては上級期に夏上級をとり、基礎答練~応用答練のインターバルにおいて総確認期間を確保するためです。

(2)-2 上級期(06年内)

使用教材:テキスト(入門期とは異なり例題をアツく)、上級問題集(TAC配布)

     アクセス(但しあまり回転せず)、基礎答練

 年内はアクセス以外では入門論点は一切触れませんでした。とにかく上級テキストの内容を理解し、瞬時に仕訳が切れるようにすることに専念していた感があります。重要なのは、仕訳を記憶するのではなく、

なぜそのような仕訳になるのかということを深くふか~く考えることです。

 特に段階取得などは下手したら仕訳を考えなくてもタイムテーブル(以下TT)上の操作と暗算だけで解けそうなものですが、決してそのような形式だけの勉強はしてはいけません。

 また、上級個別論点では金融商品やストックオプション(以下SO)など細かいものもありますので、それらを網羅的にインプットするためにも、テキストの例題の回転に努めました。

 この時期に特に意識していきたいのは、「短答論点」とか「論文論点」とかいちいち考えないことです。本当に細かいもの(例えば未公開企業のSOなど)は後回しにしましたが、基本的に全てを網羅することを心がけます。また、どちらかといえば、正確な理解を重視し、スピードは度外視していたと思います。なお、答練に対する取り組み方については、前述のとおりです。

(2)-3 上級期(全答1回目まで)

使用教材:テキスト、アクセス(上級期の分と基礎期の連結のみ)、答練

 この時期はひたすら確認です。

 「ちゃんと仕訳が切れるか」

 「総合問題を素早く解けるか」

 「入門期の論点で忘れているところはないか」

この3つを念頭に置いて勉強しておりました。

 あとはひたすら確認作業です。本項の文章は少ないですが、決して手を抜いていたわけではありません。むしろ力を入れていたくらいです。

(2)-4 短答直前期(全答1回目後短答本試験まで)

使用教材:テキスト(不明点を確認するのみで、たまにしか見ない)、アクセス(上級期のみ)

     各種短答答練(あつく回転)

 この時期になるといよいよ本試験を強く意識しだすのではないでしょうか。私見ですが、短答の問題は論文式と違ってほんのちょっとひねったりしているような問題が多いと思います。だからといって特別なことをする必要はありませんが。

 この時期に意識したのは、

「如何に短答後のリハビリ期間を短く済ませるか」

ということです。そのため、この時期でもやはり1日1回分のアクセスは欠かさず実施しておりました。以下に主な学習内容を列挙します。

・各種短答答練を回転(具体的には、総合4回、直前3回、全答4回)

・入門~上級期を通じて、身についていない論点を再度リストアップしExcelでまとめる

・↑の論点はテキスト確認

・朝起きたらまずアクセス

 簿記に関して言えば上記以外のことは実施しておりません。短答前日には06の過去問をやりましたが、簡単だったので逆に不安になりました。

(2)-5 論文直前期(短答翌々日~論文本試験まで)

 使用教材:アクセス(上級期)、答練

 この時期はアクセスを1日1回分解くのと、6月中は基礎答練、応用答練を再度解きなおし、

7月中は全答練、直前答練を解き直しました。短答直前期にアクセスを継続していたこともあり、新たなインプットはほとんど行っていません。

 また、時期的に少々遅かったと反省しているのですが、この時期(6月頃)から計算スピードを上げるために下書き用紙の書き方を本格的に工夫しだしました。

 なお、論文まとめの内容については、企業結合は熱くやりましたが、事業分離は切りました。

 実際のところ、論文直前期になればなるほど簿記には敢えて多くの時間を割きませんでした。

 この時期は本当に時間が惜しいので、分かっている論点を何度も解くというインプット式のやり方は意味がない(KEYS)と判断したからです。それでも初見の問題に弱いクセは直らず全答練2回目ではしくじってしまいましたが、本試験ではなんとか他人に見せられる出来だったので(それでも決して高くはないですが)結果オーライという感じでしょうか。
(3)財務諸表論
(3)-1 入門期

 使用教材:テキスト、暗記カード

 財務諸表論の入門期は(上級期もですが)完全に講師の先生に頼っておりました。

 既にTACを退職された方ですが、入門期はテキスト中心に授業を進めて頂き、その上で、覚えておくべき定義、論点を逐一指摘してくれました。

 本稿の冒頭に「自分は講師では選ばない」という旨を書いた手前心苦しいのですが、この先生の良かったところは「押さえておく」というような曖昧な表現ではなく、「暗記しておいてください」とか「文章の流れを暗記して別の聞き方をされてもアレンジできるようにしておいてください」など、非常に指示が的確であったところです。

 講師評はさておき、学習方法の解説をしていきます。

 この財務諸表論は入門期に手を抜く人がいますが、言語道断です。

 財表もやはり入門期は大切です。先生に指摘していただいた点については暗記カードに全て落とし込み、ひたすら暗記しておりました。正直なところ、この時期テキストはあまり見ていません。定義はそのまま、論点は文章の流れを自分なりに理解しフローチャート的にWordの表にまとめ、縮小プリントアウトをし、単語カードに貼り付けていきました。

 そしてそれを毎日10~15カード暗記です。実はここがポイントで、毎日暗記をするということで、入門期のテキストの内容は聞かれたら即答できるレベルにまでもっていきます。

 入門期は特に簿記と管理会計などの計算科目に注力していたため、テキストをじっくり読んでいくという方法はとりませんでしたが、それでも上級期にはスムーズに移行できました。また論点カードは単に書いてあることを暗唱するのではなく、頭の中で説明するように反復しました。(私の勉強方法の場合、この「暗記」という言葉については誤解が生じやすいため(3)-4の最後で改めて補足しておきます)

 ちなみにカード数は入門期で150枚程度でした(但し1枚1論点ではなく、スペースがあれば1枚に複数の論点を入れていました)。

 これでも1日あたり15枚の計算で10日くらいで入門論点を網羅できます。これを3月末の講義開始から上級開始まで延々と繰り返しました。無論言葉だけ覚えてしまい、頭の中でイメージできないと感じたものはテキストに戻りその都度確認しています。

(3)-2 上級期(全答練1回目まで)

使用教材:テキスト(章末問題のみ)、レジュメ、暗記カード、会計法規集(一読するだけ)

 上級期も入門期と同じ先生でしたが、上級期になるとテキストの量が膨大になります。そこで、先生が論文用レジュメと短答用レジュメを作成してくださったので、そこの内容のほとんど全てをカードに落とし込みました。

 簿記の項でも書きましたが、短答本試験を控えている以上、この時期から短答論点も差別することなく網羅的にインプットする方針をとりました。インプットの方法は入門期と同じです。

 また、毎日1日2問は章末問題を文章構成から書き、わずかながらアウトプットの練習もしておりました。ただ、できるだけ暗記の吐き出しにならないように心がける工夫が必要だとおもいます。

 法規集については、できるだけ早い段階から慣れることをお勧めしますが、私は10月に購入し、講義で教わった分野について毎講義後に読む程度しか利用しておりませんでした。なお、来年度(?)以降は、制度改正で法規集が配布されるようですので、早めに慣れておくのが得策でしょう。

(3)-3 上級期(短答直前期)

 使用教材:テキスト(短答まとめのみ)、暗記カード、各種短答答練、会計法規集

 短答直前期になると、短答まとめ講義というものがあります。他科目は薄い小冊子が配布されるのに対し、財表だけはなぜかボリュームがありましたが、過度に実務的な一部を除いて、ほとんどの内容をカードに落とし込みました。

 また、短答答練を復習した際に正確に正誤を判定できなかったものについても、解説冊子を参考にしてカードに落としました。その結果、カードのボリュームが多くなり驚倒しましたが、ここだけは「短答対策だ」と割り切って機械的に暗記しました。

  また、短答後の論文直前期も見据えて、この頃から法規集を1日1本読むようにしました。これで、暗記した内容と実際の条文、意見書や結論の背景に書かれている趣旨がリンクし、とても有意義だったことを記憶しております。ほぼ全ての条文と意見書につき3~5回はじっくり読み返しました。

(3)-4 論文直前期(短答本試験後~論文本試験)

  使用教材:テキスト、暗記カード、法規集

 論文直前期は、短答用カードを取り除き、新たにレギュラー講義のテキストのA、Bランク論点で漏れているもの、および論文まとめテキスト、各種論文式答練で新しく学んだ論点について、例によってカードに落とし込み、暗記(というより覚える?)しました。

 さらに、単純な暗記作業だけでは対応しきれない部分もあるため、曖昧な部分についてはテキストを読み込みました。法規集については短答直前期ほどではありませんが、たまに読む感じでした。これ以上のことはやっていません。

 総じて、財表の対応はカード(と後半は法規集も)中心でした。さて、私はところどころ「暗記」という言葉を使っておりますが、これは単純に暗記(暗唱)するのではなく、

頭の中で説明するように思い描くトレーニング(KEYS)

だと解釈して頂くほうがしっくりくるかもしれません。

 もっと具体的にいえば、例えば先入先出法の話であれば、頭の中でBOX図を思い描いてそこに単価の異なる商品が借方に現れて(くるのを金額まできちんと想像する)、売ったらそれが順番に出て行く(のを金額まできちんと想像する)。

 そして何が問題で、どのようなメリットがあるのか(ということを思い浮かべる)、それは思い描いたBOX図の中で、数値としてどのように反映されているのか、ということをイメージするのです。これを財務諸表論のあらゆる論点(企業結合も、外貨も)について実施します。他科目でも「暗記」という言葉を用いていますが、

 私の言う暗記とはこのようなイメージトレーニングを指します。それでも概念フレームワークは最後までとっつきにくかったですが。
3-3管理会計論
(1)答練の成績推移
答練素点平均素点偏差値順位判定
基礎15250.445.62169/3206E
基礎23439.549.71298/2700E
基礎3365143.31844/2547E
基礎44849.453.1886/2306D
応用1504852.8932/2316D
応用24147.349.11153/2176E
全答13046.240.92729/3392E
直答1585454753/1986C
直答24751.751.1864/1804C
直答35461.845.41184/1692D
直答451/  
全答24742.154.31042/2935C
(2)-1 入門期

使用教材:トレーニングシリーズ管理会計2・3・4(市販、あつく回転)

レジュメ、問題集(TAC配布)、日商簿記検定1級トレーニング工業簿記(市販)

      実力テスト:データ紛失しました。(申し訳ありません)

 入門期は2月から3月にかけて、

・日商簿記1級の工業簿記の問題集を、それ以降は

・トレ管の2、3、4

 を繰り返し解きました。

 学習範囲としては、費目別~財務諸表分析までのいわゆる入門論点です。ノートにいちいちBOX図を描きながら、正確に、素早く解答できるように心がけました。

 実力テスト前には対応する範囲のTAC配布の問題集を1~2回転しました。今振り返ると、管理会計論の勉強方法として、このような回転数重視の方策を採用したのは、失敗だったと思います。

 なぜなら、問題をパターン化して記憶してしまい、会計士試験では当然のように出題される”ちょっとひねりのある問題”に対応できなくなってしまったからです。

 入門期は簿記ほどではありませんが、管理会計にもそれなりの時間を割いておりましたが、結局上級へ行ってから答練で痛い目に会いました。

 この入門期のパターン化癖は、短答直前期に学習方法を見直すまで直すことができず、試行錯誤の繰り返しでした。

 もし本稿をご覧になっている入門生の方がいらっしゃいましたら、

問題を「無機的に解放パターンで解く」学習方法は絶対にしてはいけない

 ということを忘れないでください。復習の際は必ずテキストを見て

 「何故このようなBOX図を作るのか」

 「何故このような計算になるのか」

 「何故このような計算方法が必要なのか」

 「この方法を採ると、何が良くて何が悪いのか」

 ということを常に意識して、入門期は時間がかかっても構わないので、じっくり取り組むようにしてください。電卓バカになったらおしまいです。

       

(2)-2 上級期(全答1回目まで)

使用教材:テキスト(たまに見るだけ)、上級問題集(TAC配布)、アクセス、基礎答練

 上級期は管理会計にはあまり時間を割きませんでした。上級論点も先生のレジュメを読んで、問題を数問解いて分かったつもりになっていました。

 その結果、答練の成績は惨憺たるものでした。

 基礎答練第3回あたりから、危機感が増し成績をあげるために試行錯誤しました。普段あまり手をつけていなかった上級問題集をやってみたり、テキストを熟読してみたりしました。

 それでも成績は伸び悩み、全答練第1回では過去最低点を叩き出し、途方に暮れていました。

 上級の序盤こそサボっていましたが、入門期や上級の応用答練の時期などは他の科目よりも勉強していたと思います。それでも中々点数が伸びず、この時期は打開策を模索していた時期でした。本稿を執筆している現在においてもその原因は明確には分かりませんが、私の推測では、前述のとおり問題をパターン化していたこと、そして、ケアレスミスが多かったことであると思います。       

(2)-4 短答直前期(全答1回目後短答本試験まで)

使用教材:テキスト(不明点を確認するのみ)、アクセス(基礎期、上級期)

           各種短答答練(あつく回転)

 論文式答練で点数が伸び悩む管理会計でしたが、それでも短答式答練では、それなりに良い点数はとれていました。短答総合答練は財務会計より管理会計の方が成績は良かったです。この時期に実施したことは、

(1)できるだけ毎日アクセスを1問解くこと、

(2)計算が曖昧なものについてはExcelでリストアップし、該当する答練や問題集の問題を解いて不明点をつぶしていくこと、

(3)短答答練を時間内に正答できるように繰り返し演習すること、

 の3点しかしていません。

 特筆すべきは①のアクセスの活用方法です。私はこの時期にアクセス管理会計論を解くにあたり、敢えて時間を計らず、どっしり腰を据えて「完璧な答案」を「自力」で作成することを目指しました。時間がいくらかかってもよいから、自分の理解を理論問題や応用問題で表現できるように取り組みました。数字が合わなければ合うまでやります。理論も丁寧に丁寧に書きました。

 この取り組みの結果が、短答式全答練や短答式本試験に直接的に結びついたかは分かりませんが、論文直前期の直前答練や、論文式本試験につながったと思います。

(2)-5 論文直前期(短答翌々日~論文本試験まで)

使用教材:アクセス(上級期)、答練

 論文直前期になると、管理会計は基礎答練の時ほど足を引っ張らないようになってきました(それでもかなり低い水準ですが・・・)。

 この時期はアクセス、答練のみしかやっておりませんが、取り組み方は短答直前期と同じようにどっしりと構えて丁寧にやるというスタンスです。

 但し、さすがに本試験も近いので、時間配分などを意識するために時間は計りました。このように書くと矛盾しているようにも見えますが、ここまで来ると意識の問題です。日々のアクセス、答練の復習を”あわてずに”解くこと。この時期はこれが全てです。そして、これ以外には何もやっておりません。
3-4監査論
(1)答練の成績推移
答練素点平均素点偏差値順位判定
基礎17671.655.71199/3656C
基礎26567.448.71298/2700E
基礎38763.960.6299/2607B
基礎47861.661.7232/2443B
応用1776459.7378/2553B
応用27967.157.3572/2334C
全答16645.865.4143/3385A
直答15953.556.3560/1930B
直答26349.365.282/1704A
直答36366.148.7943/1558D
直答47055.371.95/1216A
全答25340.762.1318/3018A
(2)-1 入門期

      使用教材:レジュメ、テキスト

      実力テスト:データ紛失しました。(実力テストってありましたっけ?(笑))

 これまでの3科目は「入門期が大事である」と言い切って、自ずと入門期の記述も長くなってしまいましたが、監査論に関しては、”私の場合は”入門期はほとんど勉強しておりませんでした。

 1.5L本科の場合、監査論入門基礎期が始まるのが9月に入ってからであり、できるだけ(特に理論科目は)夏上級をとろうと計画を立てていた私にとっては、8月末から始まる監査論夏上級をとってしまうと、入門と上級がかぶっている状態になります。このため特別に入門期の学習範囲に焦点を当てた学習はしておりません。

  但し、誤解していただきたくないのは、「入門期はスルーでOK」ではないということです。私は学習計画の都合上入門期の学習が手薄にならざるを得なかったため、その分上級期の勉強を頑張ることでカバーしましたが、本質的には監査論でも入門期が大切です。これを忘れないでください。

(2)-2 上級期(全答1回目まで)

使用教材:テキスト(たまに見るだけ)、レジュメ、暗記カード

 財務諸表論同様、基礎答練の第1回と第2回はほぼ準備なしで挑みましたが、やはりそれなりの結果しか残せませんでした。

そこで、上級講義で配布される中里先生のレジュメの全ての論点を講義後にWordでまとめ、暗記カードに落とし込み、「毎日」暗記です。

 このように言うと、財務諸表論の勉強方法と同じだと思われるかもしれませんが、本当に同じです。

 また、これに加えて、テキストは要約されており情報量が少ないと判断したため、資料集を「毎日」1日1号熟読しました(9号、29号、30号、35号、平成14年改訂前文など長いものについては数日に分けて読みました)。

 監査基準や委員会報告書に込められた「思い」を肌で感じるためには原本に当たるのが最良の策だと思ったからです。まさに「急がば回れ」ということです。

 さらに、資料集を読む際にも、文字を追って読んだつもりになってしまっては全く意味がありません。(KEYS)
分かりきっている条文でも、細かい内容でも、常に

「何故そういうことが書かれているのか」ということを意識しながら読まないと資料集は単なる遠回りになってしまいます。企業会計審議会や日本公認会計士協会の偉い方々と対話するつもりで読むのです。
そして、自分なりの理解を資料集の該当箇所の余白に書き込んでいきます。これを何回も繰り返しました。

 監査論の場合、財務諸表論と異なり、イメージトレーニングが難しいと思います。そのため、暗記だけだとあまりにも形式的すぎる解釈しかできなくなるおそれがあったので、資料集を”読み込む”ことで理解不足の論点を補填しました。逆に、その分テキストは3~4回読んだだけでほとんど使用しておりません。

参考として、私が資料集をテキスト代わりに使用していた様子を掲載します。

<図>クリックで拡大
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(2)-4 短答直前期(全答1回目後短答本試験まで)

      使用教材:暗記カード、資料集、各種短答答練

       監査論の短答対策は特別なことはしておりません。以下の3つ以外はやっておりません。

        ・短答答練(総合、直前、全答)で自分に備わっていなかった知識を改めて暗記カードへ

        ・毎日資料集1日1号

        ・いつもの暗記

       以上を高速回転です。(高速回転といっても資料集はじっくりと読み込みます)

(2)-5 論文直前期(短答翌々日~論文本試験まで)

      使用教材:暗記カード、資料集、答練

 正直なところ、論文直前期も同じです。上級期のインプットの時期や短答直前期とほとんど学習内容は変わりません。但し、答練を受けるにあたっては、企業法ほどではないものの、素早く下書き用紙に文章構成をしてから書き始めるようにしました。

 そして、監査論の問題を解く際には、特に

・「この問題の作問者は何を聞こうとしているのか」
・「自分はその問いに対してなにを解答したいのか」

ということを常に強く意識しました。
3-5企業法
(1)答練の成績推移
答練素点平均素点偏差値順位判定
基礎17553.561.4341/3069B
基礎28554.262.7259/2873A
基礎36748.151.41186/2641E
基礎49347.769.543/2429A
基礎58957.765.778/2261A
応用1724763.7176/2485A
応用26249.650.71190/2388E
応用36650.7v 54.4810/2296D
応用47053.855.7623/2095C
全答133.7A
直答16544.752.5755/1864C
直答27644.363.4119/1672A
直答37545.360.7218/1573B
直答45150.641.81196/1501E
全答241.5A
-・・・公開模試で成績優秀者に載ってしまったため伏せてあります

(2)-1 入門期

      使用教材:レジュメ、テキスト、暗記カード

      実力テスト:第1回 88/100点

            第2回 96/100点

 企業法の学習方法は入門期と上級期で大幅に変更しました。

 入門期についは、先生のレジュメ及びテキストに記載されている制度、趣旨、論証について、財務諸表論と同様の方法をとっておりました。

 しかし、900条以上ある条文と法律的に問題となる点の論証を全てを暗記カードに落とし込み、それを暗記するのは至難の業です。実際、Wordのフォントを小さくして1枚のカードに詰め込んでも、入門期終了時点でカードが400枚以上に上ってしまいました。

入門期~上級期の狭間である8月には、商法、証券取引法を含む全てのカードの暗記は達成し、入門論点(の暗記)は完璧にマスターしていました。

 しかし、8月下旬2006年度の本試験を見て、「暗記はして知識はあるが、それを使いこなして自分なりに論証できない」ということに気づき、上級期には勉強方法を大幅に見直すことにしたのです。

 企業法が、監査論や財務諸表論とは大きく異なるのは、緻密でかつ一貫した論理構成により、比較的長文を書かなければならないという点です。

 したがって、出題可能性のある論点問題の回答を丸暗記したところで、「考えさせる問題の出題」を標榜する昨今の制度改正において無意味であると思いました。

 ただ、結果論ですが、ガチガチに暗記した知識は時間の経過と共に徐々に地ならしされて、論文を書く上での材料となりましたし、短答対策をそこまで頑張らなくても(六法の素読などしなくても)ついていけたと思います。

 しかし、やはりこの科目に関しては、暗記はお勧めしません。

(2)-2 上級期(全答1回目まで)

使用教材:レジュメ、問題集

 企業法という科目は、他の科目に比べて入門期からの上積みが少ない科目です。ですから、上級で新たに学習した論点や制度を除き、基本的には入門期のレジュメを「毎日」読み込んでいました。

 レジュメの読み込みで注意したのは、条文番号がレジュメ中に出てきたら、分かっている条文でも必ず六法を引くということです。

 これには2つ意味があり、

・第一に本試験に向けて条文の位置付け、条文の構成(特に組織再編など)を頭に定着させること、
・第二に該当する条文の前後の条文もチラ見しておくことにより少しでも知識を広げること

です。

 また、上級カリキュラムが開始されてからはアウトプットの練習も少しずつ始めました。

 教材としては問題集を使用し、1日1問を「毎日」文章構成をしました。企業法のアウトプットの練習は時間がかかることから、あまり実施されない方も多いかと思われますが、やはり頭で分かっているのと、それを文章で表現するのは別問題だと思いますので、是非少しずつで構わないので、やってみてください。

 時間的にも、初めは時間がかかってしまうかもしれませんが、徐々に本試験に合わせて

答案構成15分⇒解答と突合せ5分⇒足りなかった部分、誤っていた部分の確認20分

という具合にやれば、企業法のアウトプットに限っては40分で済みます。

 重要なのはこれを毎日継続することであり、逆に1日40分の時間すら捻出できないというのは怠慢です。あまり日の目を見ることがない問題集ですが、是非活用してみてください。

 答練については、場数を踏んで慣れていくしかないでしょう。上記のアウトプットのトレーニングを繰り返し、答練を解いて試行錯誤すれば自然にそれなりのものが書けるようになります。この時期に限らず、企業法の答練ではたまにありえない答案を作成してしまい、E判定やD判定をとっていましたが、C判定以上を「守れた」と表現するならば、成績は比較的安定的であったと思います。

(2)-4 短答直前期(全答1回目後短答本試験まで)

      使用教材:TAC出版肢別問題集(市販、かなりあつく回転)、レジュメ(商法)、各種短答答練

 短答対策は肢別問題集と短答答練に頼りっきりでした。この時期の短答科目では短答対策の時間が最も短かったのが企業法でした。具体的には、

・各種短答答練を解きなおす(全答練後3月末)⇒
・肢別問題集をとりあえず1回転(2日以内)⇒
・1.)で分からなかった点を肢別問題集に書き込む⇒
・自己株式や譲渡承認手続きなど制度がごちゃごちゃしているところは、肢別問題集の大きめの余白に細かい文字で書き込む⇒
・「書き込み済み肢別問題集を1日100ページ+商法証取法レジュメを1日1回分」のルーティンを2ヶ月間ひたすら繰り返し

です。

  愛用の肢別問題集に、短答本試験に必要な情報のほとんどを書き込んでしまい、肢別問題集を回転するだけで、他の教材に手をつけずに済むようにしました。短答本試験前日でも上記⑤のルーティンは継続しておりました。

(2)-5 論文直前期(短答翌々日~論文本試験まで)

      使用教材:レジュメ、問題集、答練

 なんか論文直前期になるにつれて、本稿の文章が短くなっておりますが、この時期は本当に確認のオンパレードです。したがって、企業法においても例外なく、学習方法も上級インプットの時期(全答練1回目まで)と変わりません。本当に変わりません。

 強いて言えば、これまで受けたら解答を一読してそのまま放置していた答練の復習を少ししたくらいでしょうか。上記の方法でも細かい論点がでると弱いですが、本試験で守れるくらいの実力はつきます。
3-6租税法
(1)答練の成績推移
答練素点平均素点偏差値順位判定
基礎16555.254.21126/2715D
基礎26961.153.61021/2373D
基礎39259.863.1163/2002A
基礎47656.858.9392/1748B
応用15840.958415/1734C
応用27851.663157/1547A
全答15637.159.7587/3210B
直答16249.457.1374/1516B
直答25660.145.11040/1473D
直答35146.953.2543/1448C
直答4735657.4367/1395B
全答237.4A
-・・・公開模試で成績優秀者に載ってしまったため伏せてあります

(2)-1 入門期

      使用教材:問題集(TAC配布)、テキスト

 1.5L本科の場合、租税法の講義開始は3月末頃だと思います。

 しかし、新しく登場した科目に手をつけることを厭う悪い癖がありまして、計算問題をしっかり解き始めたのは5月末くらいからだったと思います。

 租税法(計算分野)という科目は私の感覚では、細かい雑多な税法上の処理を覚えていくという感じでした。このように範囲が比較的広く、かつ細かいものについては、特定の時期に集中して詰め込むというよりも、「毎日」少しずつでもいいから問題を解いていくのが最良だと思います。5月末ごろから法人税法を、6月中頃から所得税法、消費税法を通常の復習ルーティンに組み入れ、回転数重視で問題集を何回も繰り返しました。

 また、問題を解く際には、単に正答を導き出すことを目的とせず、

「なぜそのような処理をしなければならないのか」

ということを頭の中でつぶやきながら解きましょう。

 例えば、

・「なぜ納税充当金支出事業税を減算しなければならないのか⇒債務確定主義の話
・「受取配当金の益金不参入⇒二重課税の阻止⇒所得税法上の配当控除との兼ね合い⇒法人擬制説

といった具合に、計算方法をインプットするだけではなく、その計算の根拠というか、裏にある思想を遡って意識するように日々の計算問題を取り組みましょう。もちろん入門期からです。そうすれば、本試験の理論も対応できるはずです。

 あと、この科目では、所得税法、消費税法の計算を後回しにしがちですが、簿記の項でも書いたとおり、論点の差別は厳禁です。所得税法の計算も入門期にガッチリ固めたため、上級の答練前の所得税法の一夜漬けが非常に楽になりました。

 また、所得税法は本試験で処理の根拠を説明させることがありますが、上記のとおり、所得税法においても計算演習の際につぶやきながら問題を解くことで、なんとか対応できるようになります。       

(2)-2 上級期(全答1回目まで)

使用教材:上級問題集(TAC配布、年内7回転)、テキスト、答練

入門問題集(上級法人税の期間に入門所得消費を実施)

 上級においても、やることは同じです。特に租税法は上級での知識の上積みが非常に多く、さらに理論も加わってきます。計算については、教材を上級問題集に変えただけで、入門の時と方法を変えませんでした。くどいようですが、重要なのは「毎日」やること。しかも所得、消費も差別することなく「毎日」やることです。

 TACの上級租税法のカリキュラムでは、前半9回の講義が法人税法の講義でしたが、この時期は上級問題集(法人税法)数問と、入門所得数問と、入門消費数問をセットにして、「毎日」やります。

 上級所得・消費の時期に入ったら入門には一切戻らず上級の法人、所得、消費をそれぞれ「毎日」やります。それぞれの税法の問題数は少量(法人10、所得3、消費5)程度で構いません(もっと少なくてもOK)ので、「毎日」やることです。上記の他にたまに答練も解いたりしました。それでもやはり、所得の全体的な計算体系などは手薄になりがちだったので、答練前に詰め込みました。

 理論については、TACのテキストと先生のランク分けをベースに財務諸表論と同様のアプローチです。もちろんこれも「毎日」ちょっとずつです。

 あと、蛇足ですが、消費税法の計算は上級論点の細かいところまで計算過程が完璧に書けるようになるまで指を痛くしてがんばりましょう。

(2)-4 短答直前期(全答1回目後短答本試験まで)

      使用教材:なし

       この時期は短答に特化していたため、租税法は一切勉強しておりません。       

(2)-5 論文直前期(短答翌々日~論文本試験まで)

      使用教材:入門(1回転のみ)、上級問題集(2~3回転)

 この時期も基本的に同じです。6月は問題集と基礎答練を7月以降は応用答練と直前答練と全答練を繰り返しました。したがって7月以降は問題集には触れていません。ただ問題を解くのみです。これに加えて効率的に計算過程を書くためにはどうすればよいかという工夫もしました(07本試験では無意味でしたが)。
3-7経営学
(1)答練の成績推移
答練素点平均素点偏差値順位判定
基礎1525147.21539/2412E
基礎2815760.3286/2040B
基礎37658.960.2243/1780B
応用18249.564.4112/1764A
応用2785459.4294/1507B
全答15238.361.5324/2682B
直答16446.752.2575/1347C
直答26853.762.5132/1231A
直答37057.853.5502/1273C
直答48048.659247/1238B
全答24845.352.11007/2380C
(2)-1 入門期

      使用教材:なし

 07目標の経営学はイントロダクションのようなもので、各論には触れませんでしたので、入門期は一切勉強しておりません。

(2)-2 上級期(全答1回目まで)

使用教材:テキスト(ファイナンス論)、暗記カード(組織論・戦略論)

 経営学は租税法と並び、短答式試験が課されない科目です。これに加え、学習範囲が比較的狭いことから、後回しにしてしまう方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。

 しかし、またまたくどいですが、論点(科目)の差別は厳禁です。

 特に私は経営学に関しては、朝7時にTACに登校してから、アクセスが始まる7時45分までの間に組織論・戦略論の暗記を終え、アクセス終了後にファイナンス論のテキストを熟読する、といった具合に1日の学習を必ず経営学から始めるようにしました

 具体的な学習方法については、組織論・戦略論とファイナンス論の2つの軸を「毎日」回転するという方法です。

 前者については財務諸表論とまったく同じアプローチを、後者についてはテキストを中心に読み込み、数値が出てきたらその都度電卓を叩いて確認しました。

 但し、経営学の知識は雑多なものが多く、体系だっておりません。このような知識は、いくら詰め込んでもすぐ忘れてしまうという経験則があったので、組織論・戦略論、ファイナンス論共に講義が終わるたびに一旦ノートにまとめて整理しました(下図参照)。

 あとは、上記2つの軸を「毎日」回転するのです。今年の本試験ではTACのテキストを信じきって勉強した結果、非常によい手ごたえを得ることができました。また、試験委員の書籍などは、読んでみても良いと思いますが、個人的にはTACの教材だけで本当に十分だと思います。

(クリックで拡大)
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(2)-4 短答直前期(全答1回目後短答本試験まで)

      使用教材:なし       

       この時期は短答に特化していたため、経営学は一切勉強しておりません。

(2)-5 論文直前期(短答翌々日~論文本試験まで)

      使用教材:暗記カード(組織論・戦略論・マーケティング論)、答練、問題集

 この時期は、組織論・戦略論の暗記ものに加え、新試験委員対策としてマーケティング論が登場してきました。やや厚めの論文まとめテキストに、これでもかと言わんばかりにマーケティングの用語と意味が列挙され、詰め込み型教育の最たるものだと若干憤りましたが、合格のためだと思い、マーケティング論の部分はランクに関係なく全て暗記カードに落とし込み、それを2日間で丸暗記しました。一旦暗記してしまえば、あとはこれを繰り返し引き出すのみですので、従前の組織論・戦略論に合わせて直前まで「毎日」暗記です。

 一方ファイナンス論については、これまでのテキスト中心の勉強方法から一歩進んで、問題集や答練の具体的数値の導出を練習しました。とは言っても計算自体は他の科目に比べれば処理量も少なく、できるだけ正確に、かつ理論的な背景を意識しつつ計算しました。

  経営学は、ただでさえ学習範囲が広い中からTACが重要性の高いものを抽出してくれた結果がテキスト、問題集、答練なのです。ですから、さらにその中からランク分けして、例えば「Cランク論点はやらない」というような対応をとるのは、非常にリスキーだと思います。

 TACの教材に記載されている話は凝縮されたものであって、時間がないことを理由にその中のいくつかを切るというのはもったいないでしょう。本年度においても、ブランドエクイティの問題などはまさに切った人はできないものでした。

4-1 短答式本試験

  まず、短答式本試験の結果を記します。

   財務会計論:150点
   管理会計論:70点
   監査論  :80点
   企業法  :75点

     得点比率 75%

 短答式試験は、監査論、企業法の理論科目については多くの方がそこそこの点数をとってきます。したがって、この2つで貯金を作っておかないとミスが出やすい計算科目での失点を補填することができません。中でもやはり財務会計論の出来は全体の成績に大きく影響を及ぼしますので短答式答練の財務会計論で思うように点数が伸びていない方は危機感を持ったほうがよいでしょう。

  なお、08年度より短答式試験がより基本的になるという話もありますので、ケアレスミスを如何になくすかという点に重点をおいて各科目を学習するのをお勧めします。

  短答対策というと、とかく細かい論点までカバーしなければならないという意識が働きがちですが、今後を見据えると(前からそうかもしれませんが)最も怖いのは論点漏れよりもケアレスミスなのかもしれません。

  論文直前期も含めて、重要なのは手を広げすぎないこと(月並みですが)。自分で学習する教材を限定して、それ以外は一切やらないことが大事です。

 他の専門学校の公開模試を受ける方もいらっしゃいますが、正直TACの答練をマスターするだけでも精一杯でしたので、個人的には必要無いと思います。むしろTACの教材をマスターしてもいないのに論点の宝くじ感覚で他校の模試に手を出すのは本末転倒の極みというか愚の骨頂です。

また、TAC以外の母集団の中での位置について確かめたいという理由で他校の模試を受ける方もいらっしゃいますが、それは論文直前期にしましょう。論文式では出題方法、採点方法や配点方法、判定方法に差異がある場合があるため、有意義かもしれませんが、短答レベルでは位置付けもなにも、普段の答練で本当に出来ない人から順に落ちていくので、他校のものに手を回す必要は無いし、時間の無駄であると考えます。

 また、早め(1月2月くらい)に短答に特化される方もいらっしゃいますが、一発合格を狙うのであれば、却ってそれは遠回りになります。これは実際に経験してみないと分かりにくく詭弁に聞こえるのですが、早くから短答に特化された方の”短答”合格率は低くなっているそうです(TAC調べ)。

4-2 論文式本試験

  論文式試験については、記述問題などがあり自分の成績が分かりにくいため、客観的なものさしが必要です。そこで、2ちゃんねる税金経理板の07論文スレの配点表(テンプレ)を基準に自己採点した結果を以下に記します。

 なお、自己採点の慣習に習い、理論科目及び記述問題は想定配点の80%を満点として減点方式により採点しております。(といっても理論の自己採点は主観に頼らざるを得ないため、あくまで参考程度にご覧ください)

    監査論 51/100点
    租税法 60/100点
    会計学(午前) 53点
    会計学(午後) 98点
    企業法 60/100点
    経営学 75/100点
     合計 397点

   以下、各科目の印象を述べます。
監査論:
 監査論はおそらく第一問が考えさせる応用的な問題で、第二問が手続の理解を問う問題であったと思いますが、結局のところ第一問も暗記した知識を如何に自分なりにアレンジできるか、一つの問題に複数の論点(会計上の見積り、品質管理、専門家)を絡めることにより、実際に監査するときに留意すべきことをまとめることができるか、ということが肝だと思います。

 そのためには普段から「「専門家」だったら専門家の論点しか想起しない」という硬直的な思考ではなく、論点横断的に、より大局的な視野で問題に対峙することが大事だと思いました。

 要するに「自分が監査人だったら実施論の範疇を超えてどんなことをケアしないといけないか」を意識することです。

 この問題は自分の社会人経験、プロジェクトマネジメント経験が大いに助けになりました。プロジェクトを成功さえるためにはいろんな不安要素に対して防御線を張って準備しなくてはなりません。監査もそれに近いものがあるのかなと思いました。第二問については、暗記勝負、暗記していなくても手続をイメージしてどんなところに気をつけるべきかということを発想できた人はとれたと思います。
租税法:
 租税法は、06年度から一変し計算過程の記述が要求されませんでした。でも木戸先生のおっしゃるとおり、計算過程が書ける人はできる問題だったと思います。

 また、消費税法では、TACの入門問題集に掲載されていた細かい論点が出題されており、入門レベルであれば細部まで網羅しておくのが得策だと思いました。また、理論については、私は付け焼刃的に暗記対応をしてしまいました。本年度の問題でも所得税法の理論は書けましたが、法人税法の理論はダメでした。どちらも典型論点だと思うので、普段から理論を意識した計算演習をすると知識の幅が広がると思います。私は租税理論は半分運任せでした。
会計学(午前):
 管理会計論は答練でも成績が伸び悩み不安の残る科目でしたが、ふたを開けてみると、部門別に関してはごく平易な問題であったと思います。ここや予算実績差異分析で失点すると相当痛いと思いますので、簡単な問題ほど時間をかけて見直すようにしましょう。私も本試験では部門別に40少々を費やして3回は見直し、解き直しをしました。
会計学(午後):
 計算問題については、C/F計算書が8割、連結が11問という具合です。本年度はC/Fが入門レベルであり、やはりこれ以上の失点はNGです。

 また、本年度の連結は外貨が2通貨(ドル、ポンド)あり、さらに新株予約権などの応用的な問題が出題されていました。もちろん連結貸借対照表の貸方と借方を一致させることが目的ではないのですから、問題を取捨選択して、取れるところをとるようにすべきでしょう。

 第4問の仕訳問題については、本当にその場で考えました。一取引基準や二取引基準、リースバック取引、交換取引などの定義や典型論点は完璧に暗記していきましたが、それを応用して出題の仕訳をどのように説明するのか?ということについては、本番中にじっくり考えました。

 C/F計算書で稼いだ時間的余裕を全て第4問に費やしたといっても過言ではありません。その場の対応力が問われる問題だったと思います。逆に個人的には、TACの解答速報に掲載されている模範解答のような典型論点のベタ書きだと、却って試験委員の心象が悪くなるのではないかとも思いました。
企業法:
 企業法は答練の成績も安定しており、また06の問題から今後はあまり細かいところまで突っ込むような問題は出にくいだろうと予想していたため、比較的落ち着いて取り組めました。

 いわゆる典型論点も出題されていましたし、TAC阿部先生のレジュメ末尾の例題に書かれているような、「細かいところまで指摘する」答案を作成する必要は全くありません。そのような問題は既に過去の試験傾向だと思っています。むしろ問題に自分なりに素直に答えて、その制度なり論点なりの裏に流れている趣旨というか根拠を丁寧に書けるかどうかにかかっていると思います。

 しかし、「自分なりに素直に答える」ためには、ある程度材料となる知識が必要ですので、「細かい制度の知識は必要ない」と杓子定規に割り切るのではなく、ほどほどに知識を記憶しておくこと(それこそ07短答レベルで構いません)、そしてそれを文章構成の短時間で引き出せるように柔軟な頭を用意しておくことが必要だと思います。
経営学:
 経営学は本来は学習範囲が非常に多岐にわたり、手の付け所がないような科目だと思います。ですので、経営学に関してはTACのカリキュラムを完全に信じきって、TACのテキスト、問題集、答練を完璧にすることにより対応してきました。

 この結果、本試験ではダブルループ、ナレッジマネジメント、逆選択といったワード以外は全て埋まりましたし、ファイナンス論もWACC、株価以外は正答することができました。経営学に関しては論文まとめも含めて貪欲に知識を増やしていってください。テキストの補論以外は切ってはいけません。この科目に限っては論文まとめも絶対にやってください。

5 就職活動

5-1 就職活動の開始時期

   公認会計士業界の就職活動は一般事業会社のそれに比べて非常に早いです。本試験終了後翌日から説明会を催している監査法人もあります。07年は人手不足であるらしく、新日本監査法人など合格発表後にも面接を実施しているところもあるようです。

  就職活動の開始時期は人それぞれだと思いますが、リクルートスーツと靴があるのであれば、本試験の出来具合がどうであれ早めにやっておくべきでしょう。特に07年の合格者数が大幅に増加したことから、08年は人手が余ることも予想されています(本稿執筆時点)。業界全体の動向の影響を直に受けるので、本試験後の開放感に浸る前に身を固めておくことをお勧めします。

5-2 就職活動にを始める前に

  皆さんは何を目指して公認会計士試験を受けるのでしょうか。大学のゼミの後輩など、多くの学生の方と会話すると、どうも職業観が幼い人が多いように思います。

 ステータスだとか、社会的信頼だとか、難関資格だとかそのような他律的な基準が公認会計士試験受験のモチベーションであるのであれば、試験合格後の実務が空虚になってしまうと思います。

 巷でも、本年度の合格者大幅増を受けて、公認会計士の資格の価値は落ちたなどと嘯く人もいました。このような人々(主に自分のゼミの後輩)を見ていると、まるで「偏差値や就職率が高い大学ならどこでもいい」というような高校2、3年生と同じに見えてしまいます。その気持ちも分かります。人間なら自分に箔を付けたいでしょうし、他人から羨望の眼差しで見られるのは気持ちのいいものです。

  しかし、実際に組織で働いてみると、

「思想(志)の無い仕事ほどやりがいのないものはない」

ということを肌で実感できます。

 仕事というものは他人に見せびらかすためものではないのです。それに対して公認会計士はどうでしょうか。監査論で散々勉強したように、非常に意義のある、社会に貢献できる仕事なのではないでしょうか。また、監査法人に行かないにしても、会計の知識を備えることが、自分が目指す(志す)方向へのアクセルとなるのではないでしょうか。

 キャリアとかビジョンとか横文字的なものは必要ありません。座学で監査論を勉強しただけの学生に実務の厳しさはわからないでしょうし(私も学生の時は全然わかりませんでした)、学生だと見えている範囲も狭いです。価値観も成熟しきっていません。入学偏差値の低い大学の方や、なかなか本試験で結果が出ない方は、ある種の劣等感が自分の可能性を邪魔しているかもしれません。

 でも、皆さんの内面に「日本の経済に貢献したい」という熱い、むさくるしいほどの想いがあるのであれば、それは何者にも邪魔されることはありませんし、そのような高い次元の議論の上では大学のレベルや国家試験の難易度などというものは歯牙にかける必要もないほど小さな問題です。

  「希少価値があるから資格を取る」

という高校生のような稚拙なマインドを捨てて、

「社会に貢献したいから資格を取る」「自分の夢を実現させたいから資格を取る」

というように上を向いて歩きましょう。

 そして、そのような志を持って勉強すれば、努力はきっと報われますし、就職難でも法人の採用担当者にその想いは伝わるはずです。受験勉強は大変だと思いますが、ちょっと息抜きにそういうことを考えるのも有意義だと思います。これからの受験生の方々が常に巨視的な視点で、仕事全体、人生全体を俯瞰しながら邁進されることを期待して止みません。

5-3 enferの就職活動

 本項の最後に、私の就職活動について述べます。私は当初「社会的に意義のある仕事をしたい」という想いから、監査法人への就職を希望しておりました。

 しかし、とある書籍で旧産業再生機構の代表取締役をお勤めになられた斉藤惇氏のインタビュー記事を読んだことがきっかけで、財務コンサルティングの世界に関心が移りました。旧産業再生機構は事業再生を通じて直接的に日本経済に貢献したことから、自分も将来それに近い仕事ができればと思ったからです。

   9月にとある会社の説明会に参加し、面接を受け、内定を頂きましたので、12月より仕事が始まります。

  監査法人の就職活動は一切やっていないため、あまり参考にならないかもしれませんが、面接で質問されたことを以下に列挙します。

・略歴について簡単な自己紹介
・なぜ監査法人ではなく当社を志望したのか
・貴方が考えるプロフェッショナルとは何か
・前の会社での業務の概要
・前の会社で得たもの
・貴方が半生で一番うれしいと感じたことはなにか
・貴方は壁にぶつかったとき、どのような方法でそれを乗り越えてきたか
・↑の具体例
・英語のスキル
・PCのスキル
・最後に質問があればどうぞ

 という感じでした。監査法人ではもっと監査に突っ込んだ質問を受けるかもしれませんが、残念ながら私にはわかりません。

6 終章

 2007年度の公認会計士試験は合格率が14.8%と大幅に増えました。前項でも述べましたが、「資格の価値」(笑) に依存してふんぞり返って仕事をする人間が淘汰される時代になっていると思います。

 でも一般事業会社で働いていた私としては、それが当然であって、資格はあるが仕事ができない人間、必要とされる努力を惜しむ怠慢な人間はそれなりの評価が下されるべきであると思います。

 弁護士業界とも同様に、これまでの閉鎖的な業界が解放されたことにより、本来恩恵を受けるべき人たちが幸せになる社会になるのであればそれは歓迎すべきであり、「努力した甲斐が無い」という風に受験生本位の視点で物事を語るのは的がはずれていると思います。

 ですから、重要なのは、試験合格後にどのような自分を描くかという意識を持つことであり、その方向に愚直に邁進すれば自ずと結果はついてくるのではないでしょうか。

 最後に、私があまり好きではなかったTAC阿部講師の言葉(元ネタは違うかもしれません)で、唯一私が感銘を受けた言葉を受験生のみなさんに送り、本稿を締めさせて頂きます。(結局オレ講師選んでんじゃん・・・)

今日どう過ごすかで、明日どう過ごせるかが決まる。
今週どう過ごすかで、来週どう過ごせるかが決まる。
今月どう過ごすかで、来月どう過ごせるかが決まる。
今年どう過ごすかで、来年どう過ごせるかが決まる。
この5年どう過ごすかで、今後5年どう過ごせるかが決まる。
昨日どう過ごしたかで、今日どう過ごせるかが決まっている。
先週どう過ごしたかで、今週どう過ごせるかが決まっている。
先月どう過ごしたかで、今月どう過ごせるかが決まっている。
去年どう過ごしたかで、今年どう過ごせるかが決まっている。
過去5年どう過ごしたかで、今年5年どう過ごせるかが決まっている。

この因果の流れを変えることができるのは、本人の意思の力だけである。

enfer体験記執筆者が直接質問に答えます(至2008年11月)。この体験記へ質問は下のコメント欄からどうぞ。

SS:

はじめまして。現在TAC2年本科コースに通っている者です。
自分が言うのもなんですが合格おめでとうございます。
ここまで詳細に書かれている合格体験記に出会ったのは始めてです。すごいの一言です。

現在TACでいう基礎期で、この時期は計算科目をとにかく重視しろとよく言われます。
enferさんはどのようにお考えでしょうか?理論科目などは理解にとどめる程度で本当に上級期でついていけるでしょうか?
時間に余裕のあるときでかまいませんのでよろしくお願いします。

ssさん

はじめまして、enferです。ご返信遅れまして申し訳ありません。

おっしゃるとおり、基礎期に計算科目を固めておくことはとても大切だと思います。基礎期に「これでもか!!」と固めていても、全答練、直前期の答練では、やはり過年度受験生は既に一通りやっているだけあってなかなか成績が伸びにくいのが計算科目だと思います。

だから、基礎期には周りのクラスメイトの中で「そこらへんのヤツには負けないぜ!!」と自身が持てるレベルまで持っていけば上級直前期にほどよい(笑)レベルになっていることでしょう。逆にSSさんがまだそのレベルにないのであれば、いまからでも十分なので計算科目は是非マスターしておきましょう。

基礎期にしっかりやっておけば、上級期には基礎期の内容に戻る手間が省けるのですが、実はこれが非常に大きいのです。

但し、これは理論科目にもいえることだということは、肝に命じておくべきだと思います。企業法や財務諸表論などは基礎期の内容を知っておくと上級期の知識の上積みがスムーズにいけますし、その分論述構成など、テクニカルな部分の練習時間を上級期に確保することができます。また、理論でも基礎期の内容がしっかりしてれば、例え基礎期の内容反復練習したとしても相当短時間で済みます。

状況は人それぞれだとおもいますが、私の意見としては「基礎期の理論も実践レベルに仕上げる」というのがベストプラクティス(笑)なのだと思います。時間がなければ、「自力で、何かを捨ててでも捻出すべき」だと思います。私はテレビを見る時間、お友達としゃべっている時間、昼ごはんの時間を捨てて時間を捻出しました。

それでも、重要なところと重要でないところのウェイト付けはきっちりやらなければならないと思いますので、私は管理会計の理論ですとか、租税の理論、監査などは基礎期には時間をあまり割かず、上級期にアツくアツくやりました。でもその代わり財務諸表論と企業法については、過去問で喰らいつけるぐらい、典型論点については聞かれたら即答できるレベルにまで持っていきました。

周りの落ちた人間を見ていると、「日常生活の中でどこか妥協している人」「妥協した学習方法を実践して合格した人間の話を鵜呑みにしている人」が多いように見受けられます。友人などの情報を得ることは大事なことですが、それに流されないようにしたいものです。

時間配分は大切だと思いますが、基礎期から勝負は始まっています!できるだけ、直前期の受験生と同じような意識で学習計画の立案や日々の鍛錬に臨んでいただければ、きっと合格できます!

がんばってください!!