yuraさん、働きながら一発合格

1.はじめに

 合格体験記集を御覧の皆様、はじめまして。yuraと申します。私は、2006年度の公認会計士試験に働きながら一発合格することができました。

 このたび、他の社会人受験生の方に多少なりとも参考になればと思い、体験記を書かせていただくことにしました。自分の体験に基づいて書いていることから、本体験記は主に社会人の入門生向けになっているかもしれません。ただし、上級生の方でも多少はご参考になるところがあるのではないかと思います。

 以下、働きながら受験をするということについて自分が感じたこと、学習で心がけていた全般的事項、科目別学習法の順で書かせていただきます。よろしくお願いします。

2.働きながら受験をするということ

 公認会計士試験は、試験範囲に大変なボリュームがあります。私がなんとかその試験範囲をこなすことができたのは、職場環境に恵まれていたことが大きかったと思います。以下、私の受験環境について列挙して簡単にご紹介します(私を特定できた方はそっとしておいてください・・・)。
  • 職場には受験を伝えてあった。
  • 仕事は午前10時から午後6~7時程度まで
  • 通勤時間は片道45分
  • 一日の勉強時間は、5~6時間(通勤時間やレクチャーも含めて)
  • 土日は休みで、だいたい7~8時間の勉強(ただ時期にもよるので一概にはいえません)
  • 受験開始前に簿記2級所持
 上記の通り、基本的に職場には受験に対する理解があったため、急に飲みに連れていかれるといったハプニングもなく、計画的に学習を進めることができました。また、仕事内容は自分の裁量による部分が大きく、頑張れば早く終わらせることができたため、極力残業しないように気をつけていました。

 私の体験から考えると、一日5~6時間の学習時間が確保できれば、論文試験まで一発合格することは可能だと思います。ただ一日5時間が難しい方は正直かなり厳しいと思います。

 現在社会人で受験にチャレンジしようと考えている方は、ご自分が勉強時間を確保できるかどうか、事前に十分見積もるべきだと思います。

 一度受験を始めたら、仕事以外のほぼすべての時間を勉強に費やすことになります。それでも頑張るという覚悟とないと、長丁場ですからなかなか続きません。

 「一回で自分は合格できる」という信念を強く持ち、自分を追い込んだ方がよいと思います。

 正直なところ、私は運良く1回で合格することができましたが、もし落ちていてもう1回チャレンジすることになっていたとしたら、2年目は1年目ほどには勉強できなかったと思います。それだけ自分を追い込んでいたし、精神的にもきつい1年半でした。

 公認会計士試験は2006年度から新試験制度となり、今後は社会人を含めて幅広い層から合格者を輩出したいという構想のようです。しかしながら、現段階では、あまり社会人のことが考慮されているとは思えず、試験日程も平日3日間連続であったりします。

 それでも、努力すれば合格することは不可能ではありませんし、努力が報われて合格した時の達成感は何事にも変えがたいものがあります。困難を覚悟した上で、やる気があるという人には、チャレンジするに十分値する資格であると思います。

3.全般的事項

 ここからは学習法について書きたいと思います。社会人受験生にとっては、何より確保できる勉強時間が少ないという不利があるので、効率的に学習することが重要です。そこで、自分の受験勉強を振り返って、自分の体験談として以下のポイントを挙げたいと思います。

 *レクチャーの中で理解する

 *細切れの時間を大切に

 *資料の集約は日ごろから行う

 *教材は絞り込む

 *学習計画をたてる

*レクチャーの中で理解する

 入門のレクチャー期と言えば、まだまだ試験は先のことと感じられて、イマイチ集中できないという人もいらっしゃるのではないでしょうか。

 しかし、社会人受験生にとっては(またおそらくそれ以外の方にとっても)、レクチャー期ほど1つの論点をじっくり勉強でき、また自分の頭でも考えられる時間はほかにないと思います。

 レクチャーが終わり答練が始まると、解法や回答例の文章を頭にインプットすることが多くなり、自分の頭でじっくり考えることが少なくなるからです。

 私は、大原に通っていましたが、1コマ3時間の講義が平日1コマずつ毎日、土日も1~2コマありました。1日の勉強時間は5時間程度が限度でしたから、復習にはそれほど時間がとれません(ちなみに予習は効率的でないと思うので全くやりませんでした)。

 よって、レクチャーの中で理解しておかないと、積み残した論点はずっと放置されることになってしまいます。実際、多くの社会人受験生にとっては、おそらく1日の勉強時間は講義を含めて5時間程度が限界でしょうから、レクチャーの3時間を集中して取り組むことは極めて重要です。

 その際、どの程度までできていればよいのかということですが、私は、計算科目であれば、解き方とその意味を理解すること(つまり、問題集を授業後に自分で解くことができ、さらにその意味も分かっていること)、理論科目であれば、自分の中で内容が理解されイメージが固まる程度になっていればよいと思います。

 そして、自分が講義中に内容を理解できていなかったら、早めに講師や友人に質問してしっかりつぶしておくことが大事です。分からないことや疑問に思ったことは、学んで頭がフレッシュなうちに解決しておくとよいと思います。

 また、必ず一日一回講師に質問するというノルマを課してもよいと思います。そうすることで自分の頭で考える癖がつくからです。自分の頭で考えて理解しないと、記憶がなかなか定着しません。

 レクチャーは毎日あるので、さすがに仕事の都合で参加できなかったり、気分がどうしても乗らないこともあると思います。そういう時は、私の場合、自宅でDVDで講義を受けるようにして気分転換を行っていました。基本的に大原の講義はDVDとライブの進度を同じにしてくれていたので、その点はやりやすかったです。

*細切れの時間を有効に使う

 時間に常に追われる社会人受験生にとって、通勤時間などの細切れのフリータイムは貴重な時間であると思います。僕の場合、通勤時間(片道45分程度)がもっとも大切な復習時間でした。満員電車でも必ず何かしら勉強するようにしていたと思います。

 私は、電車内で復習する内容についても予め計画しました。例えば、レクチャー期であれば、その日の夜に講義がある科目の前回の授業の復習を出勤の電車の中で行い、帰りの電車では当日の講義の復習を行いました。例えば、当日の夜に監査論の第3回の講義があれば、出勤電車にて監査論の第2回の復習をして当日の授業にすんなり頭がついていけるように準備し、帰宅の電車にて第3回の復習をして当日の講義の内容をできるだけ頭に残すように工夫しました。

 通勤時間の場合、到着までの制限時間があります。そのような場合にノルマを課して計画を立てておくと、時間制限のプレッシャーがある分かなり集中することができるはずです。社会人受験生にとっては通勤時間は本当に大事にするべきです。

 また社会人受験生以外でも、学校に通う通学時間は同様に大事にした方がよいでしょう。

通勤時間以外でも、会社の昼休みや、仕事で外出するときなど、細切れの時間は割とあると思います。僕は思いがけず時間がとれた場合のために、ポケットコンパスや会社法の条文は必ずカバンに入れておきました。

ただでさえ学習時間が不足しがちな社会人の方は、細切れ時間を有効に活用しましょう。

*資料の集約を常に心がける。

 これも受験勉強ではよく言われることですが、資料は分散させず、できるだけ集約した方がよいと思います。

 集約させると、自分のこなさなければならない分量がはっきり見えて、精神的にすっきりしますし、またあちこち探す手間を省いて効率的に勉強することができます。特に先述の細切れ時間で効率よくインプットを行なうためには、情報がよく集約された資料が準備されていることが不可欠になると思います。

 その際、おすすめしたいのがテキストをばらす方法です。有名な学習法ですのでご存知の方も多いかと思います。レクチャー期にはこのやり方がわからなかったのでやっていなかったのですが、やり始めてからはすごく良いと思いました。

 最終的に理論科目についてはすべて基本的にはテキストはばらして使っていました。テキストをばらばらにすることで、テキストのページの間にレジュメを挟んだり、また手書きのメモを挟んだりと容易に加工ができるようになります。僕はテキストをきれいに使わないタイプなので、テキストには講師の話のメモや板書、レジュメの図などいろいろと書き込みをしていました。

 こうすることで、これ一冊でOKという自分だけのテキストができ、復習が大変効率的にできますし、持ち運びもラクです。特に電車内で復習などするにあたって、何冊も広げるわけにはいきませんから、一冊にまとめておくことはとても有効です。資料の集約は何も試験直前期に限らず、入門期からでも積極的に行うべきと思います。

*教材は絞り込む

 1つの予備校だけを信じろとは言いませんが、現実問題として、社会人受験生の方にとって、多くの学校の教材に手を出す余裕は全くないと思います。

 自分の予備校の教材をこなすだけで精一杯という状況になると思いますので、腹を括って教材は絞り込むべきです。自校の教材であれば質問もしやすいですし、手を広げると中途半端になってしまうからです。

 この試験は基本的な問題を落とさなければ最終合格できるのですから、自校で取り扱っていない問題を他校がやっていたからといっていたずらに手を広げる必要はありません。どの学校に行ったにしろその学校のカリキュラムをきちんと抑えられれば合格レベルに達すると思います。

*学習計画をたてる

 当たり前の話になってしまいますが、闇雲に勉強するのではなく、自分の学習計画をたてた方がよいと思います。

 計画はそれほど詳細にたてる必要はありませんが、いつまでにどのような状態を目指すかという大きな目標をまず考え、そこからブレイクダウンして今週の予定、今日の予定を作成します。その際、学校の授業と答練をペースメーカーとして、学校のスケジュールに沿って作っていけばよいと思います。

 例えば、大きい目標として、「年内で計算科目を一度完成させる」とたて、そこから、朝は簿記と管理会計を交互に一問ずつ解くようにします。その上で、来週は監査論の入門答練がある、という状況であれば、夜の自習時間は監査論を重点的にやる、というように自然とスケジュールが埋まってくると思います。そのように答練をペースメーカーにして自分のスケジュールを立てて行けばよいと思います。その際、いくらかバッファーを作って、計画の遅れを取り戻せるようにしておいた方がよいと思います。

 また、自分で立てた計画は、日々確認するクセをつけた方がよいと思います。例えば自室の壁に貼っておくよりは、自分で常に携帯するようにした方がよいです。私は、学校の授業のスケジュールと、学習計画をすべて仕事で使っている手帳に書き込んでいました。毎日見る手帳に勉強のことも勉強以外の予定もすべて書き込んであるので、進捗状況の確認にも役立ち、新たな計画作りのベースとすることにも役立ちました。

 計画をたてないと、試験までに何をすればよいのか分からなくなり、気持ちばかりが焦ることになりますから、計画は必ずたてて、たんたんとこなしていくようにしましょう。

4.科目別学習法

 それでは、ここからは、科目別の学習法について書かせていただきます。

(ア)簿記

 簿記は苦手な科目でした。簿記という科目はどうしても練習量がモノをいう所があります。

 そのため、学習時間が少ない社会人受験生にとってはきつい科目だと思います。あくまで本試験までに完成させればよいのだと考えて、答練の点数が思うように取れなくてもそれほど落胆しないようにしましょう。

 私の場合、レクチャー期のときは自習時間の多くを簿記にあてていました。このときはレクチャーをこなしつつ、テキストと一緒についてくる基本問題集をやり、入門答練前に時々総合問題を解くという感じでした。

 成績は入門答練レベルでは上位20%くらいだったと思いますが、その後答練期に入って上級生も混じってくると一気に成績は下がり、平均点付近になりました。答練期に入りたてくらいの時期が一番きつく、簿記に対する苦手意識も大きかったです。

 この答練期の始め頃(10月頃)から、簿記のレベルを強化したいと考え、総合問題に慣れるために過年度のステップ答練を入手し、出勤前の早朝に1時間問題を1問、毎日解くようにしました。また、この頃からルーズリーフにミスノートをつけるようにしました。

 このミスノートは、計算科目全般に採用できる方法で、非常に有効だと思います。私の場合、簿記は図を書いて解くことも多いので手書きでつけるようにしました。そして、ミスした項目は連結、外貨、建設業、製造業、などのようにある程度の適当な分野別にわけて綴じるようにしていました。

 個人的には、総合問題で同じ問題を満点をとるまで何回もやるというのは非効率的だと思います。総合問題を繰り返すと、自分が得意な論点までも何度も解き直す羽目になるからです。(KEYS)

 総合問題は形式に慣れてしまえば所詮は個別の論点の集合に過ぎず、連結のような構造論点もある程度慣れてくるとパターンが身に付きます。慣れてしまえば後はミスノートでミスした論点だけきちんとおさえていけばよいので、満点がとれるまで何度もとく必要はないと思います。

 秋以降から冬にかけて、ミスノートと総合問題への慣れで徐々に成績は上がっていきましたが、一番簿記の実力が伸びたのは短答答練を通じてでした。

 簿記の短答答練は、論点別に1問ずつまとまっているので復習しやすく、また個々の論点も少しひねりを加えてあるものが多いです。私は、短答答練が始まった頃から、総合問題形式のものは基本的に学校で一回解いて復習するだけにし、短答答練の方を繰り返し何度も解くようにしました。

 その結果、簿記の成績も上位10~20%くらいにコンスタントに入れるようになっていました。短答答練は苦手な論点をまとめて解くなど効率的な学習が可能になりますので、時間がとれない方にはお勧めしたいです。短答答練だけを繰り返し解いても、計算力はかなりアップすると思います。個人的には繰り返し解き直すのは短答答練だけにするという方法をお勧めしたいです。

 短答後は細かい論点はすべて捨て(ミスノートは時々見ていましたが)、基本的な総合問題だけを十数問程度(1時間問題)選び、それらを繰り返して一日一問程度ときました。細かい論点は皆できなそうなのですべて捨て、退職給付、減損など出題可能性が高いところは絶対に落とさないように繰り返しました。

 直前期の答練の成績は上位20~30%程度だったと思います。全科目を通じて一番時間を費やしたのは簿記でしたが、上位まで食い込む実力はなかなか身に付きませんでした。ただ、それでも短答本試験の財務会計論は32問取れましたし、論文本試験でも手堅くとれたと思います。書き出しにも述べましたが、あくまで本試験で点を手堅くとれればよいのですから、答練の成績がのびなくても最後まであきらめずに頑張ってください。

(イ)管理会計

 管理会計は私が入門期から直前期まで終始一番得意としていた科目です。

 管理会計は、伝統的な原価計算にしても、新しい管理会計の分野にしても、要領さえ掴めば学ばなければならない範囲は狭いと思います。(KEYS)

 そのため、計算にしても理論にしても、要点を理解すれば習得は比較的容易で、ブランクを置いても計算のカンはそれほど鈍りません。そのような特徴があるため、他の科目と比較すると学習時間は少なかったです。

 具体的な学習方法を時系列で書くと、まずレクチャー期には、講義を受けたその日に該当部分の問題集を解くようにし、入門答練前にいくつか総合問題を解いてみるという方法をとりました。入門答練の成績は上位10%以内であったと思います。理論については講義を受講するのみで全く対策はしませんでした。

 答練期に入っても、学校で受ける答練は繰り返し解くことはせず、ほぼ1回解くのみで、ミスした部分だけミスノートをつけて管理しました。大原には通常の答練の他にオプションとなるステップ答練というものがありますが、このステップ答練も基礎期は受けませんでした。

 受けたい気持ちはあったのですが、当時(秋ごろ)は簿記や他科目で手一杯になっており、管理会計は勉強しなくてもまずまず点数が取れていたこともあって、手薄にせざるをえない感じでした。

 短答前は短答答練の復習に力を入れました。簿記同様、短答答練は復習するには良い教材だと思います。個別論点が要領よくまとまっていて、さらにある程度ひねりを加えたものもあるので、これを繰り返すことによって計算力がつきます。管理会計は、例年本試験のボリュームは多い科目ですので、簡単な計算を正確に速く解けることは大事です。私の場合は、短答答練を通じてスピードを養うことができたと思います。

 理論については、短答前までは特別な対策はせず、答練で出題された部分を確認していくという程度でした。

 短答前になると、短答対策として、短答答練と肢別チェック、原価計算基準の読み込みを行ないました。原価計算基準の問題は、出題パターンがある程度決まっているので、聞かれやすい部分について原文をマーカーを引くなどして確認しやすいようにしておくとよいと思います。

 原価計算基準以外のハイテク管理会計等の分野ついては、原価計算基準のように拠るべき文章はないので、答練に頼り、特別なことはしませんでした。

 論文の理論対策としては、論文総まとめのテキストを使って答練で出題された理論問題をまとめて抑え、キーワードを抑えるようにしました。

 管理会計の理論については暗記というよりは、内容を理解さえしていれば、キーワードレベルで十分だと思います。試験本番になると、時間がかなり限られているため、結局自分の作文で論述することになります。そのため、理論の暗記の精度を高めるというよりは、答練などを通じて、理論を素早く埋めて計算に時間をまわすという訓練を意識した方がよいと思います。

 論文本試験の結果としては管理会計の出来が一番良かったです。管理会計は本番では理論と計算が半々で出題され、ボリュームが多いので、試験における問題の取捨選択の判断が非常に重要です。本番で数値が割り切れないような場合、一気に焦りの気持ちが湧きますが、そこでクールに対処できるかどうかがポイントです。本番でその判断力を発揮できるように普段から答練を大切に受けるようにしましょう。

(ウ)財務諸表論

 財務諸表論は、可もなく不可もなくというレベルで、稼げるほどの得意科目ではないが、これで負けることもないという感じでした。成績としてはだいたい上位20%前後だったと思います。

 学習方法を短答対策と論文対策に分けて書きたいと思います。

 まず短答対策ですが、使用した教材は大原の短答答練と法規集です。そして、ポイントとして、短答答練で間違えたところや、法規集でチェックすべき細かい論点は、ミスノート兼チェックリストとして論点別に箇条書き程度にしてエクセルにまとめておきました。

 財務諸表論・監査論・企業法といった理論科目については、短答でかなり細かい知識を問われることがあるかと思いますが、そのような部分をずっと暗記して維持していくのは精神的にストレスもたまるし、非効率です。そのような細かい点は、試験3日前くらいでもおさえられるので、試験直前に見るためのチェックリスト作りを普段の答練のときにやっておけばよいと思います。そして、細かい知識の暗記にあまりこだわりすぎない方がよいと思います。

 次に論文対策ですが、レクチャー期にある程度全体の理解を固めて、定義の暗記もポケットコンパスを使って日常的に行なっておきました。

 暗記ペン(マーカーに似たペンで、塗った部分を下敷きで隠せるようなペン)をポケットコンパスの答えの部分に塗って隠すようにして、通勤時間等を暗記の時間に充てました。暗記は、結局後になると忘れてしまうのは事実ですが、それでも一度徹底して頭に入れたものは、次回以降暗記するときに頭に入りやすくなるので、個人的にはレクチャー期に一度暗記しておいた方がよいと思います。

 また、答練期以降は、テキストに載っていない事項もバンバン出題されてくると思いますが、これらは答練を通じて抑えていきました。抑えるコツとしては、一字一句覚えようとするのではなく、論理展開やキーワードのみ抑えておいて、後は作文で書くということです。そうすると、答練では少し表現が違ったりして点数がこないこともあるかもしれませんが、暗記の負担は減ると思います。

 本試験では財表と簿記は同じ会計学として3時間以内に同時に解くことになります。私の場合は、まず先に財表部分を終わらせて、少しでも多くの時間を簿記に回すという戦略をとりました。すると、本番中に文章表現をあれこれ考えている暇はなく、かなりの程度自分の作文力に頼ることになります。どのみちそうなるのだから、答練でじっくりと一字一句間違えずに書く必要はないと思います。

 ただ、自分の作文能力に自信がない人であれば、むしろ事前に高い精度の暗記をしておくことによって、本番であれこれ考えず手を動かせるという利点もあると言えるかもしれません。この点はご自分の考えでご自分にあったやり方を採用してください。ただ、精神的負担としては全文暗記よりもキーワード暗記の方が圧倒的にラクです。

(エ)監査論

 監査論の学習方法は財表の対策とほぼ同様でした。すなわち、短答対策としては前述のミスノート兼チェックリストというものをエクセルでつくり、これを直前暗記用資料としました。また論文対策としては、テキストと答練の読み込みが基本です。

 監査論は、一般的には、暗記の精度を高めないと点数がつかない暗記色の濃い科目だと言われることが多いと思います。私も学校の答練を通じて、監査論はしっかり暗記していないと点数がつかないという印象を受けたため、暗記色の強い科目だというイメージをもつようになっていたと思います。

 しかし、本試験を受けた感想として、予備校で全く勉強していない内容や、現場思考型の問題も相当程度出題され、事前の暗記はあまり役に立たず、結局その場の判断や思考力で解答を考えざるを得ませんでした。今になって考えると、基準の文言をごり押しで暗記していくという対応は、本試験対策としてはあまり良くなかったかなと思います。基準を頭ごなしに覚えるのではなく、もう少し自分の頭で考えることが必要だったように思います。まあ、事前には問題が分からないので仕方がなかったとは思いますが・・・

 監査論は、答練の成績は上位10%~20%程度には入っていましたが、本試験の出来は一番自信がなかったです。落ちていたとすれば監査論が原因だろうと思っていました。学習方法も、私は暗記重視だったのですが、本試験ではあまり役立たなかったため、このあたりで終わりにしたいと思います。

(オ)企業法

 企業法は管理会計に次いで得意としていた科目です。本試験でも、短答・論文とも奇抜な問題は出題されなかったので、順当に得点できた感がありました。

 企業法は入門生にとってはとっつきにくく、始めはかなり難しく感じる科目ではないでしょうか。実際、入門期の授業は新しく覚えることが多すぎてかなり嫌なイメージをもってしまった記憶があります。これには、入門期のうちから細かい知識まで一から教えようとする学校のカリキュラムにも問題があるのではないかと思います。会社法という科目の全体像が分からないうちから、例外を含めて細かくインプットされると、誰しもうんざりしてしまうと思います。

確かに、企業法は、短答科目として捉えた場合、覚えなくてはならないボリュームは理論科目の中でも一番多いと思います。ただし、論文科目としては、理論構成のみ暗記できていれば、論証の暗記の精度は高くなくても高得点を取ることができます。その点で、時間の少ない社会人でも、他の受験生と勝負することは十分可能です。

 このような特徴をもつ企業法ですが、レクチャー期の学習法としては、他の理論科目同様、レクチャーに出て通勤時間にテキストで復習するという程度でした。ただし、他の科目と比べてあまり知識が頭に入っている感じがありませんでした。まだ全範囲を一回転していない状態では、全体像が掴めていないので、細かい知識がうまく頭に入らなかったのです。

 このとき思いついた勉強法として、短答用の肢別問題集を買って、毎回講義の範囲を復習するというものがありました。これは問題を通じて知識をチェックできる点で、入門期でも有効ではないかと思います。ただ、2006年は突如新会社法に範囲が切り替わってしまったため、問題集も当然存在せず、そのような学習を行なうことはできませんでした。

 レクチャー基礎期が終わり、応用期の論文の勉強になってきた時点で、ようやく企業法の全体がつかめてきて、科目のおもしろさが分かってきました。応用期のレクチャーを通じて、会社法の基礎にある論理展開というのが分かってきて、すると基礎期に教わっていた細かい知識も頭に入りやすくなってきたのです。

 私の場合、論文の学習は、答練以外の自習時間で論述を書くことは一度もしませんでした。時間がかかりすぎるからです。よって、基本的にはテキストを何度も読みこむという方法をとりましたが、時々答案構成だけは紙に書き出してみました。また、友達などに口頭で論理的に説明できるように練習するのもよいのではないでしょうか。

 本試験では、学校で習っていた問題がそのまま出ることはありえませんから、必ず自分の頭で作文する必要が出てきます。

 今回の論文本試験は奇抜な問題ではありませんでしたが、回答スペースが学校の回答例よりも少なく、学校の答案そのままを書くことはできないという状況でした。

 そのような場合、学校の答案に固執してしまうと、全体としてバランスのとれた文章にならなくなると思います。そこで、テキストの回答例を丸暗記するのではなく、あくまでキーワードを含めた言い回しを文章のパーツとして抑えて、そのパーツを組み合わせることで論述を書いていくとよいと思います。

その際、そのパーツも一字一句覚える必要はなく、意味が同じであれば異なる書き方でも問題ないと思います。

(カ)租税法

 租税法は2006年から始まった必須科目です。ボリュームが多いために、上級生・入門生の区別なく苦労した人が多かったはずです。しかし、新しい科目であるが故に、上級生のアドバンテージもないので、入門生の私でも上位に入ることができました。

 租税法のうち法人税の授業は、学校側も初年度でカリキュラムをうまく組めていないという印象であり、一講義に大変なボリュームを詰め込まれていました。おそらく2007年度以降は改善されていると思いますが、2006年度の講義はハイペースだったと思います。またちょうどその頃は講義が週7コマくらいあって、平日も土日も全く休みがなくフリーな時間がほぼゼロになってしまった時期だったので、私にとっては大変な正念場でした。
 租税法を早々に切って講義に出なくなった人も多かったようです。しかし、ここであきらめずに、授業でやった範囲は必ず問題集を解くようにしました。そのおかげで入門期はかなり上位の成績がとれていたと思います。

 この入門期に成績が良かったことで、自分の中で租税法の計算に得意意識がつきました。よって、レクチャーがひとまず終わり短答が近づいてきた年明けの頃、一度租税法は放置することにして、短答が終わるまではステップ答練は基礎も応用もすべて受けませんでした。

 短答後は、今まで放置していたステップ答練をまとめて解いて、過去の記憶を思い出して計算力を高めました。レクチャー期に頑張っていたおかげで、短答後一ヶ月もするとまた感覚が戻りました。おそらく2006年度は将来的に他の年度と比較したときに、一番受験生の租税法のレベルは低かったと思います。
 そのくらい他の受験生も手が回っていなかったので、数ヶ月放置していた僕でも直前期には再び上位に入るようになれました。何よりもレクチャー期で力をいれ得意意識がついていたことが大きかったと思います。

 租税法は、総合問題も個別の論点の集まりに過ぎず、簿記のような構造問題というものは出ません。

 よって、論点ごとに問題集を使って各個撃破していけばよいと思います。本試験でも、各論点が独立しているために回答の取捨選択もしやすいです。簿記同様、練習がモノをいうところがあるので、レクチャー期に早めに練習を積んでいくとよいでしょう。その際、私は問題集や答練の回答の計算パターンのところにペンでチェックすべき点をいろいろ書き込んでいくという方法をとりました。回答の計算パターンに自分の字で色をつけて書き込むと理解がしやすいと思います。

 租税法は、2006年は本試験で理論問題が多く出るというサプライズがありましたが、本試験までは計算科目なので理論はホンの触り程度でよいというスタンスがとられていました。実際、2006年対策の講義は計算ばかりで、理論について講義を受けたことはほとんどありませんでした。よって、理論についてはなんともコメントができないので控えたいと思います。

(キ)経営学

 経営学は、得意科目ではありませんでしたが、苦手でもなく、上位10%~30%くらいの成績でした。

 自分にとって経営学は捉え所がない科目で、あまり印象に残っていないため書きづらいのですが、時系列的に体験談としてご紹介します。

 まずレクチャー期ですが、授業の内容はすべてテキストに書きこんで、資料を作成することを目指しました。復習は、週に1時間程度軽くテキストを読み、入門答練前だけ、テキストと問題集を読んで対策しました。入門答練は内容が簡単だったこともあって上位10%以内には入っていたと思います。

 応用期になると、他の科目が忙しくてほとんど経営学は放置に近い状況になりました。この頃は、普段はまったく勉強せず、応用答練がある日だけ2時間程度テキストを読んで答練を受けていました。そのため、さすがに準備不足の感が否めず、応用期の答練の成績は平均点より少し上程度であったように思いますが、他の科目で忙しかったので全く気にしませんでした。応用答練が終了した後短答が終わるまでは、まったく勉強せず、完全に放置状態になったと思います。

 短答終了後、大原では論文総まとめという新しいテキストが配られます。私は基礎期のテキストにもかなり書き込みがしてあって、ある程度テキストとしては完成していたのですが、論文総まとめの方が図表を使ってあり、文章もコンパクトにまとまっているので、繰り返し回転させるには論文総まとめの方がよさそうだと判断し、基礎テキストへ自分が行なった書き込みのうち、自分で必要と判断したものを全て論文総まとめの方へ転記するという作業を行ないました。

 始めは、こんなことなら最初から論文総まとめを配ってくれればよかったのに、と思うこともあったのですが、実はこの転記するという作業自体がなかなか勉強になったと今では思います。

 そのようにして論文総まとめのテキストを完成させ、テキストをばらして答練と一緒にまとめて、一冊のファイルに集約しました。そして、直前期は毎日30分程度それを回転させました。

 本試験の経営学は作文のような問題が出たので、対策が功を奏していたのかは不明ですが、出来としてはそこそこだったと思います。論述部分は、どのように出題されるのか予測しにくいところがあるので、ファイナンスに力を入れて、ファイナンスで落とさないようにするのがカギになるのではないでしょうか。

5.最後に

 いろいろと書いてきましたが、勉強には人それぞれのやり方があります。よって参考になった部分だけを取り入れていただければよいと思います。

 いろいろな勉強方法があると思いますが、社会人として仕事を続けながら合格を果たすために、一番必要なのは精神力だと感じます。効率的・計画的に学習することは重要ですが、その前提として、絶対に合格できると信念をもち続けなければ、毎日仕事の合間を縫って勉強を続けていくことは困難です。

 社会人で現在挑戦を考えている方、また現在挑戦している方は、絶対に自分は合格してみせるという信念を持って、頑張っていただきたいと思います。時々、受かったときのことをあれこれ想像して、明るい未来を思い描いて糧にしてください。それでは、長文に最後まで付き合っていただいてどうもありがとうございました。