AMさん、質より量の勉強法

Ⅰ プロフィール

こんにちは、AMと申します。多少なりとも今後公認会計士試験を受験される皆さまの参考になれば幸いです。まず簡単にプロフィールを述べます。

・勉強開始時年齢 22歳
・勉強開始時レベル 初心者(勉強開始時は借方貸方も知らなかった)
・受験回数 2回     2005短答 34点/50点(ボーダー34点)(簿記8点、財務諸表論5点、原価計算8点、監査論8点、商法5点)2005論文 不合格。

 2006短答 89点/100点(ボーダー69点)。(財務会計論31点、管理会計論19点、監査論19点、企業20点)2006論文合格

・専門学校 2005年目標 TAC1.5年本科(通常の教材で手一杯、計算は得意という理由でアクセスは受講せず。)
      2006年目標 アクセル
・選択科目 経営学
・得意科目 管理会計論
・苦手科目 無し
・模試成績 2006年目標時
      短答 TAC全答練 C判定
      論文 TAC全答練 1回目1300番台
              2回目800番台
         大原全国模試400番台

Ⅱ 合格までの軌跡

<1年目>

1年目は友達に勧められるがまま(要するに何も考えていなかった)に、TACに入学した。

友達のアドバイスと自身の特性(理論より数字で点数を稼ぐタイプ)を考慮した結果、入門期は計算を固めることに努めた。具体的には、教科書の例題・問題集・トレーニング簿記・原価計算を3~5回転させた。

因みにこの頃、理論は「皆無」と言っても過言でないほど何もしていなかった。商法以外は授業も聞いていなかったぐらいである。計算を入門期にある程度固めて、上級期は理論に力を入れることを意図していたからだ。

しかしながら上級期の簿記は量とレベルが思っていたよりも重く、想像以上に時間を取られてしまったのが現実である。結果として、意図通りには理論に時間を割けず手薄になってしまった。

今から考えると、これが1年目の敗因ではないかと思う。

<2年目>

1年目の合格発表を迎えた後(僕は元来、楽観主義+自信家なので一発合格を信じて試験後は何もしなかった)、アクセルへの入学を決めた。

TACからアクセルへ変更した理由は、第1に受講料がどの予備校よりも安かったこと、第2に講師とテキストの定評があったことである。お金のない僕には第1の理由が切実で予備校を変える決め手となったわけだが、アクセルを受講して合格できたことを振り返ると自身が貧乏だったことに感謝(笑)。

さて、2年目の勉強生活に話を戻そう。

2年目は通学から通信へ変え、DVDの授業が倍速で聞けた(僕は1,5倍~2倍で聞いていた)ので、自習に使える時間が大幅に増えた。自習の時間配分としては、本試験でできたという手ごたえがあった計算は現状維持ができる程度に時間を割き、その分1年目は手薄になってしまった理論に時間を充てた。

 科目別の勉強方法に関する詳細は後述するが、大まかに言うと計算は答練を解くぐらいで留め、理論は教科書を熟読し理解することに注力した。租税法には、理論をやって計算解いて、余った時間を充てるというのが主な方向性である。時期的には、3月末まで論文試験を念頭に置き論文対策を、4月以降短答本試験までは短答対策を行った。

また、2年目は講義を担当する講師が自ら作ったテキスト・問題集・答練でカリキュラムを進めることができたため、講義・テキスト・問題集・答練で整合性がとれ非常に効果的効率的に勉強ができたように思う。

Ⅲ 科目別勉強法(2年目の勉強法)

<簿記>

▼意識していたこと

 常に仕訳の意味を考えていた。例えば、現金で給料を支払ったときには (借)給料/(貸)現金 と仕訳を切る。給料が借方にくるのは「費用」が発生したからで、現金が貸方にくるのは「資産」が減るからである。

 これは簡単な事例であり皆が当たり前だと思うであろうが、連結修正や社債償還・ヘッジ取引等の難しい仕訳になるとその意味を考えずに仕訳を暗記している人が多いのが現実である。僕は暗記をすると応用が利かなくなると思っていたので、常に仕訳の意味を考え仕訳を理解することに努めた。僕の中ではこの作業を「仕訳を翻訳する」と捉えていた。(KEYS)

結果として、ちょっとひねられた問題が出ても仕訳を切ることができた。これは僕の強みになったと言えるだろう。

もうひとつ意識していたことは、基本的な問題を完璧に解くことである。論文本試験は難易度が高く、大多数の人は高得点を取れるものでない。

 従って、基本的な問題をミスなくどれだけ取れたかが合否を分けることになる。アクセルでは実務指針に沿った処理まではあまり手を広げずに、基本的論点が繰返し出されたので無用に手を広げずに済んだ。

 やはり難易度の高い処理を色々手広く勉強すると基本的な処理が疎かになることは否めない。どこまで手を広げるかという議論には一長一短があるとは思うが、僕は基本的な処理を完璧に解きこなし、そこで点数を失うリスクを最小限にすることを優先した。

▼短答

使用教材:短答答練

勉強法:答練を解いた後に分野別にまとめ、自身で問題別に難易度を設定した(簡単・基本的な順からA,B,C)。   短答前に全範囲をAで一巡、Bで一巡、Cで一巡させようとした。結局Bがギリギリ終わらず、Cには一切手が回らなかった。間違えた問題のみ3日前くらいに再チェックした。

▼論文

使用教材:論文答練勉強法:特にインプットの勉強はせずに(1年目で土台が出来ていたので)、アウトプット中心にした。間違えた論点のみを、その都度テキストでチェックした。     論文前は網羅的に基本的な問題を10~15問くらい集めて適当に解いた。

<管理会計論>

▼意識していたこと

 パターンで解こうとせずに、計算の背景にある理論を意識して問題を解いた。僕は、管理会計を所謂「計算科目」だとは捉えていなかった。むしろ「理論科目」だと捉えて、原価計算基準や計算の結果出てきた数字の意味を理解することに努めた。

 計算は理論の延長線上出てくる、結論を出すための技術にすぎないと考えていた。従って、多くの問題をこなすというわけではなく、答練の中から基本的な問題だけを抽出して解き、実力の維持を図った。週に1~2問を解く程度だったので、浮いた時間は全て1年目に手薄だった財表・監査・商法へ回すことができた。

 因みに管理会計はよく奇問難問が出されるが、特にその手の問題への対策は不要だと思う。上述したように普段の学習時に計算の背景にある理論を意識することで対処できるのではなかろうか。

 その手の問題への対処に時間を割くなら、商法の論証を理解することに努めたほうがよほど有益である。(あまりの奇問は、一部の賢すぎる受験生が完答するだけなので、差がつくことはまずない。)実際、僕の答練・模試の結果はまずまずだったので、このやり方が正しかったのではないかと思う。

▼短答

使用教材:短答答練

勉強法:簿記と同じである。分野別にまとめ自身で問題別に難易度を設定した(A,B,C)。短答前に全範囲をAで一巡、Bで一巡させた。Cはもともと解くつもりはなかった。間違えた問題のみ3日前くらいに再チェックした。

▼論文

使用教材:論文答練

勉強法:特にインプットの勉強はせずに(1年目で土台が出来ていたので)、アウトプット中心にした。間違えた論点は、問題を通して見直した。          論文前は網羅的に基本的な問題を10~15問くらい集めて適当に解いた。

<財務諸表論>

▼意識していたこと

 1年目は一番の苦手科目だった。2年目の勉強を始めて、一年目の自分が恐ろしく無知だったことに気づきテキストを熟読することから始めた。

 単純に定義を覚えたり、論証を覚えたりするのではなく、基準や理論の背景を理解することに努めた。(KEYS)
1つ1つの論点に深入りせず、1日2~3時間で10日から2週間でテキストを読めるようにし、何回もまわした。

 丁寧にテキストを読み込み一回で全てを理解しようとするより、最初は大枠だけを理解し幾度もテキストを読むことにより知識や理解の幅を広げていくほうが、僕はコストパフォーマンスが高いと思う。なぜなら、人間が一度で吸収できる量には限りがあり、順次忘れていく生き物だからである。丁寧にテキストを読み込むと一回転が終わる頃には最初に頭に入れたことは、相当な記憶力がない限り忘れてしまっているものである。

 よって薄く薄くを重ねていくほうが、定着度が断然高いと思った。

▼短答

使用教材:テキスト・問題集・短答答練(全てアクセル配布)*会計法規集等は未使用

勉強法:テキストの熟読を何より優先した。

短答答練は肢を切るための練習とし、1回ずつしか解いていない。

肢は基本的に全て問題集に反映されていたため、アウトプットは問題集を回した。答練や問題集で間違えた問題はその都度テキストにチェックしたり書き込 みをしたりして、テキストを回すときに意識して読めるようにしていた。

テキスト→問題集→テキスト→問題集(1回目に間違えた肢だけ)→テキスト→問題集(2回目に間違えた肢だけ)→テキスト・・・・時間の許す限り繰返す。

因みに会計法規集は読んでいない。費用対効果が良くないし、手を広げすぎるときりがなく基本的なことが疎かになることを懸念した。

▼論文

 使用教材:テキスト・問題集・論文答練(全てアクセル配布)

 勉強法:テキストの熟読を何より優先した。

論文答練は書く練習だと捉え、時間をきっちり計り、わからなくても白紙答案にすることだけは避けた。答案構成時は講師の言う上下のポジション・左右のポジション(論理の流れ、背景にある考え方、対照となる概念)を意識した。問題集は論点の確認のためだけに用いて、最後までテキストを回した。

<監査論>

▼意識していたこと

 定義を覚えるのは最後まで好きになれず、理解しておけば何らかの形で書けるだろうと思っていたので暗記作業はしなかった。財表と同じように、テキストを何回も回すことで頭に染み込ませようとし、1日2~3時間の勉強で1週間から10日で1回転するようにしていた。基本的には何回もテキストを回していれば勝手に覚えるだろうと楽観視していた。

▼短答

使用教材:テキスト・問題集・短答答練(全てアクセル配布)*委員会報告書等は未使用

勉強法:財表と基本的には同じだが、財表のほうがより多くの時間を要した。
    委員会報告書は読んでいない。重要なものはテキストに反映されていたのでそれだけはチェックした。

▼論文

 使用教材:テキスト・問題集・論文答練(全てアクセル配布)

 勉強法:財表と基本的には同じだが、財表のほうがより多くの時間を要した。

<企業法>

▼意識していたこと

 2年目の授業を受けて、自身の理解の乏しさに気づいた。根本からの理解が必要だと強く感じ、テキストの熟読・理解に努めた。

 アクセルの授業・教材は正直重かったが、根本からの理解を促す大きな一助となった。因みに、根本を理解するためには「法律」の設定趣旨・根拠を考えることが必要だと思う。

 こんなところで僕が偉そうに言わなくても周知の事実であろうが、そもそも法律というのは何かの問題が生じた又は生じる可能性があるからそれを規制するため、そして秩序良く世界を存続させるために設定されるものである。

 従って、全ての法律には意味がある。僕はそれを強く意識して、各々の条文の設定根拠やもしこの条文がなかったら起こりうる問題等を考えるようにした。(起こりうる問題というのは類型化できるため、最初に幾つか想定するとあとは大体どれかに該当すると思う)

そんなこんなで法律の背景を考え勉強していたことで、最終的には企業法は得意になっていた気がする。

▼短答

用教材:テキスト・問題集(全てアクセル配布)*条文等は未使用

勉強法:アクセルは数千問もの驚異的な肢別問題集を提供してくれたので、ひたすら問題集をやりこんだ。

機関、設立、株式に多くの時間を割いた。

総則商行為と証取法は好きになれなかったため、費用対効果が悪いと勝手に割り切り短答前に軽くテキストを読み問題を見た程度。

▼論文

 使用教材:テキスト・問題集・論文答練(全てアクセル配布)

 勉強法:テキストの熟読を何より優先した。

論文答練の見直しには時間を割いた。返却された答案と優秀答案を照らし合わせ、自身の足りなかった点や良かった点を認識し、よりよい答案作成ができるよう軌道修正等を行なった。

論文前は論文問題集のAランク、Bランクを1日15~20問くらい回した。

1問にかける時間は5~10分くらい。頭の中で答案構成をするのみ。     

<租税法>

▼意識していたこと

 今年から課された科目なので、皆のスタートラインが同じで且つ出題傾向も読めないことから、僕の中では完全に守り科目だと位置づけた。分量が多く予備校に拠って扱う範囲も異なっていたこともあり、最低限基本的なことをおさえ、苦手にさえならなければいいと思っていた。

 アクセルでは範囲を絞り込み基本的なことだけを取り扱っていたため、それだけは完璧に点数に繋げることに注力した。他の予備校からの情報は完全にシャットアウトし、他の予備校の模試で出ていても気にしないようにした。実際、本試験では計算は分量もそれほど多くなく、計算も基本的なものが多かったので問題はなかった。

 これは租税法に限ったことではないが、保守的になって範囲を広げるあまり、基本的なことが疎かになるリスクが高くなる。

僕はやはり基本的なところでミスなくどれだけ点数を稼げるかが勝敗を決めると思う。(KEYS)

▼論文

 使用教材:テキスト・問題集・論文答練(全てアクセル配布)

 勉強法:総合問題は個別問題の組み合わせに過ぎないと思い、主に個別問題を解いた。おそらく総合問題は1時間問題を全部で20問も解いてない(アクセルでは租税法の答練が少なかった)し、解きなおしもしなかった。

短答対策に入るまでに、法人税の練習問題を2回転くらいした。短答後、もう一度法人税の練習問題を2回転。その後所得税と消費税の対策、具体的には練習問題3回転くらいした。理論対策は配られた問題に目を通す程度でほとんど何もしなかった。

<経営学>

▼意識していたこと

ファイナンスは得意だったため、2年目はテキストや答練で出てきた問題をチェックする程度だった。また戦略論・組織論はテキストを何回か読み軽く頭に入れた。

僕はファイナンスを仕上げた上で他の大まかなことをおさえれば、経営学に時間をかけるのは得策でないと思う。
 なぜなら、戦略論・組織論は量が多く極めようとするときりがなく、また多くの受験生もそこまで力を入れていないからである。

 これは、逆に自分が突出するチャンスだとも捉えられるが、やはり戦略・組織論の範囲を考えると費用対効果が悪いと思われる。今年の問題からも、ファイナンスをある程度完璧にし、あとはテキストや新聞を読んで「経営」に関する様々なことを広く浅く概要を掴んでおくことが重要だと言えるのではなかろうか…。

▼論文

 使用教材:テキスト・論文答練(全てアクセル配布)

 勉強法:テキストを何回か読み、答練を軽くチェックした。

ファイナンスは深い理解をするようにした。(KEYS)

Ⅳ 勉強に対する基本姿勢

▼今年絶対に合格する!

 僕は常に「今年絶対に合格する!」という気持ちを強く持って勉強した。

 特に余計なことは考えないことを意識していた。

 余計なこととは、勉強以外のことは当然ながら、勉強のことでも無用な不安を抱くことや失敗したらどうしようなどと考えることである。とりあえず目の前にあることだけを考え、毎日同じペースで淡々と勉強をこなした

▼質より量

 これは1年勉強してみて判明したことであるが、僕はどうやら集中力がないようである。

 勉強を始める前は自身の集中力を過大評価していて、僕は短時間で人より多くのことが覚えられるし、できるだろうと思っていた。しかし、実際はそんな夢のようなことは起こりえず、むしろ人より集中力がないことに気付いてしまったのだ。(苦笑)

 そんなわけで、2年目は質より量を重視し集中できなくてもとりあえず一日10~12時間は机に向かうことにした。

 質で勝負できないなら量で勝負と考えたわけである。結果としては、体育会系の僕にはこの勉強法はぴったりだったのだが…。

 確かに集中力があって短時間で勉強が終われる、量より質の勉強は理想でそれを実行している自分はかっこいい。

 しかし、それが本当に集中力のある人なら良いが、僕のように自身の過大評価と世間体を気にして短時間で勉強を切り上げてしまう人は勉強の絶対量が足りなくなってしまい非常に危険である。

 僕のような集中力のない人は量をこなすのが恥ずかしいというプライドを捨てて、速やかに体育会系勉強法に移行することをお奨めします。

▼費用対効果

 科目別勉強法のところで散々書いたが、僕は「費用対効果」を強く意識していた。予備校から提供される資料は同じであるが、何をどこまでやるかは個々人の判断に任されることになる。僕はこの判断こそが合否の鍵を握っているのではないかと思う。

 普通の人は、睡眠やリラックスの時間等が不可欠であるため、本試験までの時間は限られている。非凡な人を除いては、全てを完璧にやりつくすことは不可能に近い。従って、何をやって何を捨てるかの選択が必要になってくる。

 僕は、あくまで基本的なことだけは取りこぼしのないようにすることを最優先に考え、その軸で選択を行なった。

 従って、細かな実務指針や難易度の高い処理をマスターすることは捨ててしまった。これが正しかったのかどうかはわからない。

 ただ、大切なことはその選択は自身が納得して行い1度決断したらそれが正しいと信じ邁進することではなかろうか。僕は自身の判断が正しいと信じていたからこそ、本試験前に錯誤した様々な情報(あれが出るとか、これが危ないとか)に流されず、無用に手を広げたりしないで済んだのではないかと思う。

▼苦手な科目は必ず克服する

 僕は1年目財表・商法が嫌いで且つ苦手だった。

 大抵、嫌いなものはイコール苦手なものであり、嫌いだと苦手になりその苦手が更なる嫌悪感を生むという、2つは負の相乗効果があるだろう。

 しかし、会計士試験では嫌いな科目はあっても苦手な科目があってはいけないと僕は思う。(KEYS)

 なぜなら、会計士試験はどの科目も難易度が高く、得意な科目でも苦手な科目の失点を挽回させるほどの高得点を狙うことは難しいからである。科目間偏差値のばらつきがある人より、全科目でそこそこできる人が模試の上位にいることからも、これは明らかだと言える。

 従って僕は2年目、苦手科目の底上げに努め、科目間の偏差値の差がなくなるようにした。結果、本試験ではどの科目も大きな失敗はせず無難にこなせたことが合格に結びついたのではないかと思う。

以上です。最後まで読んでいただきありがとうございます。