coolさん

公認会計士二次試験 <2005合格体験記>

by cool

プロフィール
名前:cool(クール)
年齢:25才
得意科目:原価計算・商法・経済学
2004年 短答不合格
2005年 短答、論文合格 → 監査法人勤務
予備校:大原

Ⅰはじめに
 私はこの合格体験記を通して真面目に勉強をしているはずだけれどいまいち成績が伸びないや、勉強慣れしていないため勉強のやり方がわからずなんとなく人に聞いたやり方で(スポックさんや他の人にやり方で)勉強をしている人へ特にアドバイスを送りたいと思って書かせてもらいます。よって、勉強法がある程度確定している人やある程度できる人にはいいアドバイスとならない可能性が高いのでその点ご了承ください。特にⅡは合格体験記というより勉強方を決める上でのアドバイスになってしまっています。
 

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Yさん第2部

公認会計士二次試験
<2003合格体験記>
by Y
その2
目次

第1 部 全体事項についてはその1を参照。
第2部各論

第1章 簿記
第1節 実際の取引を意識すること
第2節 基本は仕訳
第3節 せめて一日一問はやること
第4節 過去のミスは繰り返さないこと
第5節 中級レベルの問題であれば満点が取れること
第6節 電卓について
第7節 下書きについて
第2章 原価計算


第1節 問題構造を把握する能力を向上させる
第2節 毎日やるのが理想だが無理する必要もなし
第3節 電卓および下書きについて
第4節 致命的なミスを未然に防ぐには
第5節 理論について
第3章 財務諸表論
第1節 とにかく論理的に素人でも分かるように
第2節 アウトプット重視
第3節 法規集について
第4章 監査論
第1節 ある程度の暗記はやむをえないもの
第2節 監査基準は真っ先に暗記すること
第3節 修正テープを活用してレジュメを空欄補充問題に
第4節 委員会報告書等の読み方
第5章 商法
第1節 条文重視
第2節 問題に素直になること
第3節 制度説明は知識をしっかりと
第4節 実務に触れる努力を
第6章 経済学
第1節 モデルの必要性を意識すること
第2節 公式に惑わされないように
第3節 基礎を大事に
第4節 数学力について
第5節 図や言葉で説明できるように
第7章 経営学
第1節 基本書
第2節 財務論について
第3節 論理的であることが求められているわけではない
第8章 民法

第3部 おわりに

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第2部 各論
第1章 簿記
 簿記は極めて重要な科目です。どう重要か?それは一度実力さえつけてしまえば、大崩れすることはなく点数がそれなりに計算できるという点です。つまりある程度のメンテナンスさえしていれば、他の科目に時間を割くことができるというように会計士の試験勉強そのものに影響を与えるものです。しかし、実力をつけるには時間がかかります。私は当初会計士の勉強を始めたときは一日の半分くらいは簿記に費やしていました。始めは苦手でして、本当に得意になるものなのだろうか?という疑問を抱きつつ毎日やったものでした。結果的には得意科目となり、安心して得点を計算できる科目となったわけですが、それなりに工夫はしました。

実務でも当然簿記は重要です。改めて述べる必要もないでしょう。

第1節 実際の取引を意識すること
 簿記は基本的には単なるツールでしかありません。こういう取引のときはこういう仕訳をきって、 などといった感じに企業の行った取引を一つ一つ記録として残していくのです。簿記が強くなるために必要なものとしては基本となる仕訳をきちんとやることと、仕訳をきるそもそもの原因である取引自体をしっかりと理解すること、この2 点ではないかと思います。前者は後述するとしてここでは後者について説明したいと思います。

 他の科目においてもそうですが簿記においても見たことのない問題が出てくることは多々あります。良く「初見の問題は解けなくても良い」という言葉をよく見かけますが、本当にそうでしょうか?確かに全く習っていないのに解けというのは酷でしょう。連結を習ってない人に連結の問題を解かせても時間がもったいないだけです。ここでの初見の問題とはいわゆる応用問題を指します。では応用問題とはどんなことでしょうか。特殊な勘定科目を使うことでしょうか。それよりもむしろ何をやっているのかという内容が分かりにくい、もしくは分からないものでしょう。ここで問題を考えるのに役立つのはいかに常日頃さまざまな取引を実際のものとして捉えているかではないでしょうか。具体的にどのような目的でこの取引が行われ、どういう結果がそれによりもたらされるのか。そういったものを理解しているのと理解していないのとでは、応用問題になったところで大きく差が出るものだと思います。例えば、なぜそういう取引が行われており、実際にはどう取り扱われているのかなど調べてみるなどしてみてください。確かに二次試験には直結しない知識も多いかもしれませんが、時間がもったいないなどといっていないで調べてみるのをお勧めします。あくまでも取引があるからこそ仕訳があり、仕訳をきちんと理解しようとするならばやはり実際の取引を想定すべきではないでしょうか。

第2節 基本は仕訳
 簿記は時間との戦いです。ですから下書きも効率的に書かねばならないと思いますし、その結果、ボックス図など様々な方法がなされているのだと思います。ただし、勘違いしてほしくないのはあくまでも「きちんと理解をして仕訳ができる」からこそ、「時間を効率的に使う」という発想が出てくるということです。極端な言い方をすれば、あまりに分かりきっていて仕訳をきるのがもうホントにめんどくさいから下書きを効率化するということです。順番が逆になってはいけません。あくまでも仕訳が当たり前のように切れるということが大前提なのです。新しく学習した分野について講師がこういう図を書くと便利といって勧めることがありますが、あくまでもそれは仕訳がきちんと切れるから意味があるのであって、そうでなければちょっと問題をひねっただけでもろくも崩れ去る実力のままです。

 ちなみに私は昔、全くボックス図やT 勘定を使わずに仕訳のみで総合問題を解いていました。実際には単にそういったものがあることを知らなかっただけなのですが、ひたすら仕訳をきることにより安定した実力がついたことは実感しました。むしろその後仕訳を軽視してテクニックに走った時期もありましたが、そんな時期はあまり成績的には安定せず、結局テキストに戻って一から仕訳をきり直したものでした。
第3節 せめて一日一問はやること
 確かに簿記は応用的な問題もありますが、多くは基本的なものでいかに効率よく正確に解いていくかが、重要になります。しかし、この「効率よくかつ正確に」というのは本当に難しい。毎日ある程度は解いていないとすぐにできなくなってしまいます。くだらないミスを連発したりするのは誰しもでしょう。簿記の実力を維持していたいのであればやはり最低でも一日一問はやるべきだと思います。簿記の実力を伸ばしていきたいのであれば、一日二問でしょうか。

 ただここで注意すべきは他の科目との兼ね合いです。あくまでも二次試験は他の科目も含めた総合得点で競うものですから、簿記ばかりに時間を割いてはいられません。一日簿記をやらねば、簿記の点数を取る能力は落ちていきますが、ここで問題なのは単にミスが増えるだけなのか、それとも問題の解き方が分からなくなるのかということです。単にミスが増えるだけでしたらむしろずっと簿記の実力を維持する必要性もありません。つまり毎日一問やる必要もないと思います。そういったいわゆる「簿記の勘」が鈍るものは集中的にある期間やれば戻ってくるものです。それに対して問題の解き方が分からなくなるなんてことは問題です。これはそもそもきちんと理解できていないことが原因です。きちんと理解し問題が解けるようになるまでは最低でも一日一問はやらないとまずいのではないでしょうか。
第4節 過去のミスは繰り返さないこと
 前節では確かにできるだけ簿記は毎日やれといいましたが、とはいえどもなかなかミスは減るものではありません。引っかけとかもたくさんあり、本当に困ったものです。なかなか抜本的な解決策はないのですが、参考程度に私のやり方を紹介します。

 基本的にミスは無くならないのですが、結構似たようなミスをするものです。そこで私が取った方法は、ミスファイルを作成するというものでした。よくミスノートとして自分が間違えた箇所をノートにメモする人もいます。ミスファイルというのは少々それとは異なっていまして、基本的にはミスした箇所の問題もしくは解答ごとコピーをして、そこにコメントを記入した上でTAC ファイルにはさんでいくというものです。そしてそのミスファイルを何度も何度も見返すことによって自分のミスを完全に覚えてしまうというものでした。これをしっかりとやりこんでいると問題に接したときに起こりうるミスが頭にいくつも浮かんでくるようになるので、当然ミスも少なくなります。問題もしくは解答ごとコピーをするのは、どんな場面でミスしたかをしっかりと自分に印象付けるためです。単にミスをメモするだけではどんな形式の問題で、どんなシチュエーションでミスしたのかが分かりにくく、当然印象も薄いと考えられるのです。

 またミスファイルは時間の節約にもつながります。総合問題を解いていても間違える箇所はいつも同じところであることが多くあります。何度もミスファイルを見るようにすれば、さすがに何度も解く必要はなくなるでしょう。

 さて、ここで注意すべきなのはミスファイルを作る以上は二度とそのパターンの問題は間違えないという気持ちでいる必要があるということです。そうでなければそもそもミスファイルをつくる動機が薄くなり、三日坊主で終わるのが関の山です。ミスをしたことによる悔しい気持ちを忘れず、「もうこれっきりにしよう」という気持ちでミスファイルを作成してもらいたいと思います。さらにミスファイルを作成することの副次的な効果として挙げられるのは、そういった心構えでコピーにコメントする場合にはミスファイルを次に見てすぐにミスが分かるようにする必要があるため、そのようにミスファイルを作成することは結果としてその分野に対する理解が深まるということがあります。誤解していただきたくないのはミスファイルを作成することは、決して解答を覚えるということとは異なり、なぜ間違えたのかをきちんと理解し、二度と同じ過ちを繰り返さないことが目的にあります。これを実践するようになってから成績が上がったように思いますので、ぜひ試していただきたいものです。

第5節 中級レベルの問題であれば満点が取れること
 簿記は中級レベルの問題であれば満点が取れるようになることが必要不可欠であると思います。ここで中級レベルとはアクセス25 回以内の問題レベルでしょうか。「満点じゃなくても一問位ミスしたくらいならいいじゃないか」と思う人も多いと思いますが、実際にはそこに大きな差があると思います。ただでさえ簿記は時間との戦いです。みんながとってくる問題でさえミスするようでは、上級レベルの問題であれば時間もさらに足りなくなるのでその差は一問どころか二問三問と広がっていくものなのです。取るべき問題をきちんと取れるようになる、これはとても大切なことです。

 満点というのは狙わないとなかなか取れるものではありません。細心の注意を払ってミスしないように問題を解いていっても間違えることが良くあります。つまらないミスを繰り返してイライラすることもあるかと思います。それでもめげずに満点を狙って、きちんと解いていくその姿勢が上級レベルの問題のときに効果を発するものだと思います。地道な作業で大変かと思いますが、必要なことですのでしっかりとやったほうが良いと思います。
第6節 電卓について
 電卓についてよく聞かれるのが右手で打つか左手で打つかということです。結論としてはどちらでも電卓を打ちやすい方で構わないと私は考えていますが、一般に左で電卓を打つ方が早いということを理由にして左手で打つべきと考えている人が多いと思いますので、これに対して右手で電卓を打つことの利点を述べていきたいと思います(ここでは右利きを前提としています)。

 当初会計士試験の勉強を始めたとき、私は単に「問題を解くのが早そうだから」という理由のみで左手で電卓を打っていました。しかし、私は不器用なのか一向に電卓技術が向上することはありませんでした。貸借対照表の合計を出そうと加算していっても、合計が合わないことばかりで、思うように動かない左手にいらだったりしていました。困った私は、たまたま本屋で電卓についての本を発見しまして、その本に書かれていることを実践してみました。さまざまなトレーニング方法がその本には記載されていたのですが、最も納得したのは「利き手で電卓はうつべき」というものでした。実際、自分の利き手である右手で電卓を打つようになってから簿記の成績も上がったように思います。若干内容をアレンジした部分もありますがその理屈はこのようなものでした

 そもそも人は日常を利き手中心で生活しています。箸をもつこともそうですし、ドアを開けるとき、モノをとろうとするとき、そして何かを書くとき、これらのときに活躍するのは利き手だと思います。確かに電卓を利き手でないほうの手で打っていても慣れてくれば大丈夫なのでしょうが、所詮1 日のうち利き手でない方の手で何かをするという時間は多くはありません。逆に言えば、ほとんどの時間は利き手を中心にして生活していて、電卓だけが利き手でないという状態になるわけです。これではなかなか上達するとは思えませんし、それよりは正確にそして確実に電卓を打つことができる利き手の方がよいのではないでしょうか。

 これに対し、利き手で答案を書く以上問題を解くスピードが落ちるという反論があろうかと思いますが、私は正直大してスピードが落ちるとは思えません。ペンを持ち替えるのと持ち替えないのでコンマ何秒違うのでしょうか。そんな細かい単位にこだわったところで、問題が解けずに悩んでいる時間で何分と費やされてしまうわけです。本来問題を解くスピードを上げるのはそういった悩んでいる時間をどれだけ短縮するかであってコンマ何秒の世界での短縮を試みようとするのは、チャッチャと問題が解けるようになってから考えればよいでしょう。まあ、それだけ解けるときにはもう問題を解くスピードについて悩むことはないことはご承知のとおりですが。

 もちろん利き手でない方の手で電卓を打つことを否定するわけではありません。別にそれで慣れてしまっているのであれば無理に修正する必要はないと思います。ただ勉強を始めたばかりの人たちがたいした根拠にも基づかずに左手で電卓をうとうとして四苦八苦するのはバカバカしいなと思い偉そうにコメントしてみました。
第7節 下書きについて
 簿記においては時間との戦いであることが否めない以上、効率的な下書きを作ることは絶対に必要なこととなります。とはいえ、間違っていたら何の意味もないので正確かつ効率的な下書きが必要になるでしょう。人それぞれ自分の下書きがいいとか思うものですので、あくまでも参考として自分の下書きの書き方を述べてみたいと思います。

 まず人と大きく私の下書きが違っていたのは、定規を使って下書きを書くということでした。よく時間がもったいないという意見を言われましたが、そうやっていうほど時間がかかるとは思えません。慣れてくると大差はないと思います。実際もし遅いのであれば私の解答時間は人よりも長くなりえたと思いますが、実際にはそうでもない。時間がもったいないという人ほど、何も書かずに思考が止まっていたりして時間を費やしているものです。ただ大差はないとはいえ、若干遅くなることは否めませんが、ではなぜそれでも定規を使って下書きを書くのか?まず、きれいに下書きを書くことによって、考えるときに頭の中がずいぶん整理されやすくなります。大体汚い下書きを見ながら考えていても単にイライラするだけではないでしょうか。さらに見やすいということは、それだけケアレスミスが減る可能性があります。無駄に時間をかけて綺麗な下書きを書く必要はないと思いますが、見た目すっきりとした下書きである必要はあると思います。

 次に問題を解く際に無理に頭だけで処理しないで、下書きにその過程を残すというのも大事なことだと思います。私が思うに、みんな自分の頭を過信しすぎです。人の頭はそんなに出来がよくないですよ。頭の中で処理できたほうがいいに決まっていますが、よっぽど簡単な問題でない限りはしっかりと下書きに書いたほうが無難です。むしろそんなところで見栄を張らないでほしいですね。私は少しでも頭の中で処理するのに不安を感じたら、情けなくても一つ一つ書いて正確に答えるようにしていました。できる問題を落とすほどバカバカしいものはなく、自分がその問題を落とす可能性を限りなくゼロにするように努力すべきではないでしょうか。これに対し、「そんなことではいつになっても効率的に問題が解けないではないか」という反論もあるかとは思いますが、効率的に解くということを考えるのは自分の中で「簡単だ」と思える段階でよいと思います。

 あと下書きの書き方は定型化してください。どんな問題でも同じようにやること。これがミスを防ぐためには大事なことになります。例えば私は未処理の事項については必ず仕訳をきっていました。売上の返品といった簡単な仕訳であってもです。前回はやったり今回はやらなかったりでは、ミスの可能性は格段に増えます。いろいろ例はあると思いますが、自分がどうしてミスするのかを考えればその解決策は自ずと出てくるはずです。

第2章 原価計算
 原価計算はもともと得意な科目でしたが、それでもいつミスするだろうかと毎回ヒヤヒヤしながら解いていました。原価計算は処理能力よりもしっかりと考えることが大事な科目だと思います。一見難しそうでも、ひるまずにゆっくりと一つ一つ解きほぐしていって下さい。

 さて実務では当然ですが製品原価を算定する製造業等でなければあまり原価計算に触れることはありません。しかし、製造業等では、まさにこの原価計算がその企業の肝になる部分ですから、理解していなければ何もできないといってよいでしょう。ただ、この原価計算という科目は2次試験レベルで十分なレベルに達することができる唯一の科目ではないでしょうか(その次は商法かな)。実際にある企業の原価計算の構築作業をしましたが、自分の原価計算の知識で十分に議論可能です。そして、まさにあの答練でよく目にする経理部長と経営者の会話が行われるのです。また管理会計論は一般企業の内部で働く場合にはとても大切になるでしょう。予算、意思決定などですね。まさに経営者が利用したい情報だと思います。
第1節 問題構造を把握する能力を向上させる
 原価計算は問題量が多いだけではなく、ミスが命取りとなる恐れのある科目であり、一般に怖い科目であるといえます。時間がなくなったり、ミスが多いということの一つの要因としては問題構造を把握できていないまま、問題を解いてしまっているということがあげられます。つまり、問題構造を把握できていないため、何度も解答には直接関係のない無駄な作業を繰り返すことが多くて時間がなくなってしまったりとか、その問題においては出るはずのない解答に満足してしまい、実は自分がミスをしているのに気づかなかったりすることがあるわけです。

 さて、原価計算では問題を解く際にまず問題構造を把握するため、電卓を叩かずに問題をしっかりと読み込むことが大切だ、といわれることが多いです。私もそう思います。1 時間答練であれば開始後5 分、2 時間答練であれば開始後10 分は電卓を叩かずにとにかく問題構造の把握に努めるべきです。たとえ他の人が問題を解いていようとも自分は電卓を叩かず問題をじっくりと読む、そんな勇気を持つべきです。特に2 時間答練の場合、どの問題から取り組むかが、最終的な得点に大きな影響を与えます。当然簡単に得点できる問題からやるべきで、よく分からない問題は後回しです。こういったことは頭では皆分かっているもののなかなか実践できるものではありません。1 時間答錬も含めて開始後すぐに電卓を叩かない癖をつけなければなりません。

 では、実際にそれをやってみるとどうなるか?始めは問題を読んだだけではなかなか問題構造が把握できないものです。実は皆さんかなりの部分を電卓で出てくる数値を頼りに問題を解いているのです。ある意味、行き当たりばったりです。出てきた数値がよさそうだから、とか、解いているうちに次にやるべきことが見えてくるというのは往々にしてありがちです。しかし、そんな解き方ではいつミスをしてもおかしくないことは一目瞭然でしょう。問題を読むことで解答の道筋を理解し、あとはそれに従って電卓を叩いて実際に数値を出していく、そんな解答方法が理想的であるといえます。

 しかし、やはり1 時間のうち5 分間何もしないで問題を読むというのは不安に感じるものでしょう。私も実際のところ最初は時間に間に合わないこともままありました。それは単に電卓を叩かないで問題を読んでいるだけであって、問題構造を把握するには至っていなかったため、電卓を叩く段階に至って再び問題を読むということをやらざるを得なかったためです。つまり結局は電卓に頼らないと問題構造が把握できなかったのです。もちろん徐々に慣れてきて、問題を読むことで問題構造を把握できるようになります。ただそれには随分訓練が必要になります。だからこそしっかり答練において5 分間は問題構造把握に努めるということを何度もする必要があるのです。しっかり問題構造が把握できたときは結果的に点数が良かったのが私の経験です。原価計算ができる人たちは皆同じことをいいます。「まず問題構造の把握に時間をかける」と。

第2節 毎日やるのが理想だが無理する必要もなし
 簿記においては毎日1 時間は問題を解くのが原則ですが、同じことが原価計算に当てはまるわけでは決してありません。もちろん毎日やれるにこしたことはありません。しかし、実際問題としてなかなか時間はとれないものです。原価計算は問題をいかに解くか、すなわち問題構造の把握が命であり、計算はそのための手段でしかありません。そのため問題構造の把握ができるのであれば必ずしも毎日やる必要はなく、2 日に1 時間でも問題はないかと思います。

 しかし、一日全く原価計算に触れないと言うのも不安が残ると言う人もいるでしょう。そんな人は15 分間だけやるというのはいかがでしょうか。これは問題構造把握だけしかやらず実際に電卓を使った計算はしないというものです。まず問題を読み、問題を解いていく手順を考える。自分の中で「こうやって解いていこう」というのが固まったら、解答を見る。考えた手順が正しければそれで終わり。これで15 分ほどになると思います。この際、理論のように答案構成を行うように矢印を使ったりして問題構造把握をやると良いと思います。電卓を使わずに問題を解くということの難しさを痛感するでしょうし、結果として自分がまだ良く理解しきれていない部分というのも浮き彫りになるものだと思います。結構頭を使うので大変ですが、こういった練習がきっと本番で力を発揮してくれるものだと思います。
第3節 電卓および下書きについて
基本的に簿記と心がける点は同じだと思うのでここでは省略したいと思います。
第4節 致命的なミスを未然に防ぐには
 原価計算で怖いと言われることは、やはり問題の始めでいきなり間違えてしまいその後が全て間違えてしまうような状態でしょう。標準原価を間違えてしまったり、部門費の配賦率が間違っていたり、、こういったミスは何度もミスすることによって徐々に少なくなっていくものですが、とはいえ完全に無くなるわけでもなくいつになっても怖いものです。こういったものはひたすら注意をするしかないものもありますが、原価計算の実力が上がってくるにつれ予め予防線を張れるようになるものもあります。

 こういった予防線の張り方の基本的な考え方は、問題文そのものに記載されている数値と自分の下書きに記載した数値とを照合することです。例えば部門別計算でいうと、各部門費の金額が問題に変動費・固定費別に掲載されていたりします。部門別計算では補助部門費を製造部門費へと集計していくわけですが、その過程ごとに問題文に記載されている金額の合計が各集計段階(共通費配賦後、補助部門費配賦後、配賦率算定後)における金額の合計と一致しているかを検証していくわけです。この方法は実際配賦の場合にしか使えませんが、確実に転記ミスは発見できます。この考え方は他の問題でも応用できると思います。問題文の数値は正しいわけですから常にその数値と照合する癖をつけると幾分かは大怪我をする可能性は減るのではないかと思います。
第5節 理論について
 原価計算の理論と言えば、大きくは短答用の原価計算基準と論文用の理論に分けられるかと思います。ともに得点を稼ぐチャンスですので、計算ばかりに目を向けないでしっかりと対策をするべきだと思います。

 原価計算基準については基本的には短答対策といえますが、たまに論文でもその内容を問う問題が出るのでやはり正誤が判断できるだけではなくどういう内容のことを言っているのかを説明できるようにしておくとよいでしょう。しかし、基準は読んでいてもどこのことを言っているのかわからないことが往々にしてあります。そこで役に立つのが上級の基本テキストです。上級の基本テキストなんてあまりしっかり読んだことがない人がほとんどだと思いますが、基準を理解する際には意外に役立つものです。原価計算基準は随分昔に制定されたものではありますが、とはいえその昔の人たちがその当時一生懸命考えて一語一語丁寧に作っていたものであることには変わりがありません。おそらく基準の文言一つを取ってもかなりの議論が行われたことでしょう(これは別に原価計算に限ったことではなく、財表でも監査でも同じことでしょうが)。ですから読み手としてもその苦労に配慮しつつ読む必要があり、その解説書として上級の基本テキストが役に立つのです。上級の基本テキストにおいては基準の一文一文に解説が加えられています。別にそれを覚える必要はないと思いますが、内容を読んで「ああこういうことを言っているんだな」ということが分かると随分と基準も読みやすくなると思います。

 論文式の理論の内容としては講義の範囲内で十分かと思います。それでもそれなりにボリュームがあるのでその範囲内で自分の言葉で説明できるようにしておけばよいかと思います。さて、よく問題になるのは論文の答案作成においてどの段階で理論に取り掛かるかです。よく知ってる問題・よく知らない問題によっても違うと思いますし、その人の性格によっても最初の段階で解く人、最後に回す人それぞれだと思います。最初に理論を解くと、簡単な問題にも丁寧に解答するため時間をかけすぎてしまい、最終的に時間が足らないという事態に陥る可能性があります。かといって計算の後で最後に理論を解くと言うのも、結局計算に時間を費やしすぎて理論が書ききれないという恐れもあります。私の場合は両方試していたのですが、どちらもうまくいかず結果的に時間が足りないということがあったので、最終的には大体中間くらいで理論をやるようにしていました。2 時間問題であれば、計算を2 問分ほどやった後で理論をざっと埋めて再び残り2 問の計算をやるという感じでしょうか。さすがに計算も2 問やるとどういう時間配分で残りをやっていかねばならないかが分かってきますので、その余裕度合いに応じて理論にどれだけ時間を割くかを考えていました。個人的には最後にやるというのはお勧めできません。せっかく点が取れるのに焦ったために汚い稚拙な文章でみすみす点数を逃してしまうというのは、やはり問題でしょう。

第3章 財務諸表論
 得意でも不得意でもなかった、財務諸表論はそんな科目でした。いかに論理的に書くかがかなり重視される科目です。しかし、最近は会計基準からそのまま出るのもあるので論理性及び深い知識が要求される科目でしょうか。

 会計士が指導的機能を発揮できるのはまさにこの財務諸表論がきちんと理解できているからだと思います。相手を納得させるのにきちんと論理を踏んで説明することが求められます。
第1節 とにかく論理的に素人でも分かるように
 財務諸表論は商法以上に論理が求められる科目かもしれません。商法のように長く文章を書くのであれば多少気の抜けた文章を書いても大差はありませんが、財務諸表論では解答欄もそれほど多くないため限られたスペースの中に簡潔かつ論理的に答案を作成する必要があるのです。

 論理と言うのは一つの文章でも抜けてしまえばたとえ結論が合っていたとしても全く意味を成さないものとなってしまいます。「~だから~、それゆえ~」というように前の文章を受けて後の文章が作られていくのです。この関係の極端な形が数学でしょうか。数学が得意な人は基本的に論理的な考え方をするので比較的、財務諸表論や商法に強い気がします。「A=B かつ B=C それゆえA=C」というのは、見た目当たり前のようなのですが、多くの人はこの関係式が文章に変わった途端、「A=B それゆえA=C」と書いてみたり、「A=B かつ C=D それゆえA=D」などというように論理的におかしい文章を書くようになってしまいます。

 では、どのようにしたら論理的な文章となるのでしょうか。なかなか難しいことですが、よく何も知らない人に説明するように書くと良い、と言われます。何も予備知識がない人に対して丁寧に順序だてて説明をしていく・・・そうすれば自然と論理的な文章になっていきます。私は金融機関に勤めていた頃、案件について何も事情を知らない上司に書類を提出し、承認を得ねばなりませんでした。論理的でなく分かりにくい文章で書類を提出しても、「これどういうこと?説明して?」と言われ結局は書き直しを何度もさせられる羽目に。それではなかなか仕事も進みません。するとそのうち書類を作成する時点で上司を意識するようになります。つまり、読み手を意識し後で説明を求められ書き直しを命じられないように順序だてて説明を展開していくようになるのです。答案を作成する際は、常に読み手を意識してください。そして常に、「本当にこのように書いていいのだろうか?根拠は?これで分かるだろうか?」ということを頭に置きながら書いてみてください。自然と何度も読み返し、より論理的で分かりやすい言葉で答案を作成することができるようになるはずです。

 もちろん解答欄が狭くて入りきらないと言うこともあるでしょう。それは仕方ありません。論理的な力がつくまで諦めてください。力がついた上で、文章を取捨選択するようにすべきでしょう。中途半端に答案に収めようとすると、論理的な力はいつまでもつきません。

 お手本のひとつとしては論点集がよいのではないでしょうか。論点集はかなり論理的に簡潔に書いてあります。一文が抜けたら全体がおかしくなるくらいです。一文一文、この文章が全体に対しどのような役割を担い、これが抜けるとどうおかしくなるのかを考えながら、答案構成を真似してみると良いと思います。

第2節 アウトプット重視
 財務諸表論においてだけではなく理論全体にいえることではあるのですが、日々の勉強においてもインプット以上にアウトプットを重視して勉強をしていくのが良いかと思います。確かに理論はインプットをしないことには何も始まらないのも確かです。しかし、インプットするためにレジュメやテキストを読んでいても、そのうち眠くなってさっき読んだところをまた読んで、、、といったように無駄に時間ばかりが過ぎてしまい、あまり頭を使った勉強ができないことが多いのではないでしょうか。私はそんな状態が嫌だったのでできる限りアウトプットを重視した勉強をしていました。

 具体的には次のようにしていました。まず財表の授業が終わったあとにまず行うことは自分で問題を作ることです。例えば保守主義の原則でいうと、「保守主義の原則とは?」「保守主義の原則と真実性の原則との関係は?」「過度の保守主義とは?」というように授業で習いレジュメに記載されている論点を余すことなく全て問題にしていくわけです。次に一通りインプットをしてみたうえで、早速その問題を解いてみます。その際、実際に書いて解答するなり、答案構成をするのです。当然一通りインプットをしてみただけなのでスラスラと解答できるわけもなく頭の中で一生懸命思い出そうともがくわけです。一通り解答し終わった後はレジュメやテキストで採点をします。習ってすぐのときは当然間違えてばかりなのですが、それはそれでよいと思います。読んでいるだけのときよりは随分マシであると思います。そして最終的には次の授業までにそれが完璧にできるまでやることになるわけです。

 さて、そもそもこのやり方をするようになったのは必ずしもアウトプットをするためというわけではありませんでした。それは答錬を受けていたりすると、「あれ、こんなのレジュメにあったかな?」と思うような問題がたまに出てきます。さて答練が終わってレジュメを見てみると確かに書いてある、、、いかに自分が読んだ気になっているだけかということに気づかされたわけです。そこでレジュメに書いてある論点はすべて問題にして、自分の知識の上で漏れをなくすということを目的としたわけです。こういった効果もあるので、問題を作ってアウトプットすると言う方法はなかなか良いかと思います。

第3節 法規集について
 最近の本試験において法規集の果たす役割と言うのは大変大きなものがあると思います。新会計基準が次々と制定される中で、その中からの問題が本試験においてかなりのウエイトをもっているためです。短答対策としても法規集は読み込むことになると思いますが、気をつけたいのは単に字面を追っていくと言うだけではなく、瑣末な部分でもきちんと理解をするということです。短答であれば、「ああそういえば書いてあった」と言う程度の理解でも十分かもしれませんが、論文ではそれをしっかりと説明する能力が必要になります。金融商品や退職給付などでは細かい部分というのは、なじみも薄い部分も多くなかなか理解しづらいところがあるかとは思いますが、本試験の解答のネタ本ともいうべきものが法規集ですので、できる限り理解して自分で説明できるようになっていてほしいものです。まずは短答用にしっかりと読み込んで、正誤を判断できるようにした上で、短答後には自分の言葉でそれが説明できるようにしておくのが良いかと思います。

 しかし、法規集は必ずしも分かりやすく書いてあるわけではないため、なかなかその内容が身につかないのが現実です。そういう場合には、例えば表示であれば実際に有価証券報告書にどのように書いてあるのかを見たりすると随分イメージが湧いて身につきやすくなります。あくまでも会計基準は現実に適用されるためにあるのですから、それを理解するのには現実にどのように適用されているかを見るのが一番近道であるのは当然のことといえるのではないでしょうか。

第4章 監査論
 はじめは暗記ばかりで嫌いな科目でした。ただ監査論を学び理解が進むにつれなかなか面白い科目だなと思うようになりました。本試験直前になって監査基準の暗記をし、そこで初めてその効用に気づきました。「ああ、なんでもっと早くやらなかったのか」そう思いました。

 さて監査論の知識は実務で当然使います。ただ、受験生時代にはさほど重要視していなかった分野(品質管理や監査調書など)が実は実務の中で大きなウエイトを占めていることに気づきました。監査論は当然理解していなければならないものですが、最後は職業的懐疑心とやらをきちんと持っているということが何よりも大事なのかなと最近はよく思います。

第1節 ある程度の暗記はやむをえないもの
 私は基本的には暗記に頼るような勉強は嫌いです。そんなものは知的なものではなく応用の利かないつまらないものだと考えるからです。ところが、監査論においては、ある程度割り切ってしっかりと暗記をすべきだと思います。暗記すべき項目としては定義と監査基準でしょうか。確かにこんなの暗記している必要が監査の現場であるのかと言えばおそらく否でしょう。しかし、試験には暗記をしていればできてしまう問題が出てきます。本来であれば暗記などせずとも理解さえしていればそこそこ書けるはずであり、無理して暗記をする必要もないのかもしれません。しかし、実際にはそうはいかないのです。ここでは監査論で暗記をすることのメリットを述べます。

 まず暗記をすることによるメリットの一つはもちろん確実に点を取りにいくことができると言う点です。監査論は他の科目と異なり暗記していれば簡単にできてしまう問題が出ます。やはり一点でも惜しい本試験においてそのような問題を落としてしまうのはかなり痛いです。実際多くの受験生が暗記をしてくる以上、かなりの差がつくことが予想されます。他の受験生にハンデをつけてやろうとか思わない限りは多少時間をかけてでもしっかりと暗記することが大切かと思います。

そしてもう一つメリットがあります。監査論の問題量はかなり多く、テキパキと答案を作成していかないと間に合わない恐れがあります。とくに何問かはどうやって書いたらいいか迷うものがあり、そういったものに時間を費やすことも多いです。監査論が暗記で対応できる問題が多い一方で、応用的な問題も数多く見受けられるのです。ある程度の受験生であれば暗記で対応可能な問題では差がつかないとすると、差がつく可能性があるのは応用的な問題であることになります。ここで応用問題を解く際に最も必要なのは、心の余裕です。ゆっくりと考える余裕があるかが応用問題を解く際のポイントになります。暗記をあまりせず、暗記をしていればあっさりと終わる問題に時間をかけた挙句に応用問題を解く人と、さっさと暗記で対応できる問題は終わらせてからじっくりと腰をすえて応用問題を解く人、結果は言うまでもありません。

 監査論であってもしっかりとした理解が応用問題を解くには大事です。しかしその理解をしっかりと答案に反映させるために暗記が必要なのも確かです。少し嫌かもしれませんが、暗記くらいはしっかりとしておきましょう。最低限の心構えではないでしょうか。

第2節 監査基準は真っ先に暗記すること
 そこそこの量はあるとは思いますが、監査基準を暗記することをお勧めします。暗記はしなければしないほうがよいには決まっていますが、とはいえ暗記していれば素早く解ける問題が出題されるのも確かです。実際、試験委員は当然受験生は監査基準程度は暗記しているものとして出題するようなので、彼らの問題の大前提くらいはクリアしておいたほうが良いでしょう。

 さて、私が監査基準の暗記を進めるのは単に試験に出題されるからと言うわけではありません。監査基準の暗記は様々な効用をもたらすと言えます。例えば、監査基準を暗記することで論文問題を記述する際に、文章をうまく書けるようになります。つまり、自分が暗記している監査基準の一部を使うことによってより公式的見解に近い答案が書けるようになります。これはかなり答案作成に際し楽になります。実際に監査の答練の解答を良く見ると、大体が監査基準の文章を用いて解答が作られていることに気づきます。

 さらに、監査基準を暗記することで今まで曖昧であった部分が随分頭の中で整理できるようになります。今まで明確に区別できていなかった概念について、監査基準と言う練りに練られた文章を暗記することによりその違いが把握できるようになるのです。監査基準は設定者が考えに考えた上で作られた文章です。それなりに監査のエッセンスが詰まっているものですので暗記して損はないと思います。なお、暗記の際には八田進二・高田敏文対談「新監査基準を学ぶ」などを読めば、より理解も深まり暗記もスムーズに行くのではないでしょうか。

第3節 修正テープを活用してレジュメを空欄補充問題に
 私は監査論は南先生の講義を受講していました。そして南先生の講義では委員会報告書などの補助レジュメとしてコンパクトにまとまったものを使っています。さて、私はこのレジュメを加工して空欄補充問題にしていました。具体的には

覚えたい部分を修正テープで消してしまいその部分を空欄にしていき、別にコピーしたものを解答として参照していく
というものです。この方法は随分私の監査論の実力を上げるのに貢献してくれたと思います。単に空欄補充するだけでなく、そうやってレジュメを読む際にアクセントをつけることにより、レジュメ全体を印象付けることができ結果として一つの委員会報告書の体系が頭の中にインプットできるのです。

 別に空欄補充にするのだったら色ペンと下敷き(らしきもの)を使う方法があります。この方法の欠点は下敷き(らしきもの)を常に持ち歩き、またそれをかぶせた上で見ないといけないと言うように面倒なところです。私も以前はその方法を用いていたのですが、面倒であっさりと止めてしまいました。一方、修正テープを使う方法は本当に空欄になっていますのでその後何かを用意する必要はありません(もちろん解答用のコピーを同時にファイルしておく必要はありますが)。今まですぐに止めてしまっていましたが、この方法だけは長く続いたのでなかなか良い方法なのでは、と思い紹介させていただきました。もちろんお気づきかとは思いますが、別にこの方法は監査論だけしか使えない方法ではありません。私は主に監査論でこの方法を利用していましたが、他の科目でも試してみてください。

第4節 委員会報告書等の読み方
委員会報告書を読むことは主に短答用の勉強において必要になるかとは思いますが、これがなかなか内容的に細かくて頭に残りにくいものです。ではどのようにして読んでいけば頭に入りやすいか?

私は委員会報告書を読む際はいつも自分が監査の現場にいることを想定して読んでいました。「こういうことを知ってないと監査の現場で間違えて怒られそうだな」とか、「こういうことを知っていたら監査の現場で不正を発見できて褒められそうだな」とかそういう感じにです。委員会報告書は実務的であるがゆえに、監査の現場を想像するのに向いています。合格後にやることになる監査の現場で失敗しないようにしようという気持ちでよいと思うので、実感を持って読むとその内容についてもスムーズに入っていくのではないでしょうか。

第5章 商法
 商法は非常に大好きな科目でした。しかし、実力が伴っていたかはなんとも言えず、実際にも本試験では自分が納得できるような答案は書けませんでした。それでも勉強をする中でいろいろと試行錯誤し、それなりの考えを持つに至ったので以下に述べたいと思います。

 商法もかなりの部分が2 次試験レベルで実務上カバーできると思います。カバーしきれない分野は、計算書類規定や組織再編のあたりでしょうか。

(なお、以下は旧商法を前提として説明をしています。)

第1節 条文重視
 とにかく条文を重視してください。商法とは法律のことなのですから当然法律の条文に慣れる必要があります。私は商法の勉強がある程度進んできた段階で六法の条文を何度も読み返しました。それによりどこにどんな内容が書いてあるのかと言うことをしっかり把握してください。それが商法の力を伸ばすための大前提です。

 そして論文の答案にはしっかりと条文を示してください。条文で書かれていることは絶対でありそれを前提とした上で論証は行われていくのです。さて、法律とは説得の学問とよくいわれます。つまり自分の答案で相手を納得させる必要があるのです。例えば「株主は間接有限責任を負う。」とだけ書いたとしましょう。確かにそのとおりです。しかし説得されるほうはどう思うでしょうか。もし読み手が素人だったら「えっ、そうなの?」となるでしょう(まあそもそも間接有限責任の意味自体が分からない可能性が高いので本来もう少し詳しく説明すべきですが)。これでは相手は納得してくれません。しっかりと「法律にこうやって書いてあるんだ。だからこれは正しいんだ。」ということをアピールするために(200 条1 項)というのを文章の最後につけてあげる必要があるのです。根拠条文が書いてない文章など何の価値もないと思っておいたほうが良いです。単に書いてあるだけで、説得力がありません。根拠条文を示すことによりその文章に命が吹き込まれる、そういった認識を持っておくべきだと思います。

 では、条文に書いてない場合はどうするか?これこそが商法の力の見せ所です。根拠条文と言う圧倒的な力を使うことができない以上、制度趣旨による拡大解釈、類推解釈といったものを駆使することにより読み手を納得させてみてください。答案の読み手に「なんで?」と思わせたらそこで終わりです。もう答案は提出しているのですから追加の説明をする機会は与えられません。読み手に説明する機会は答案を作成する一度しかないことを肝に銘じて答練を受けていただきたいと思います。

第2節 問題に素直になること
 論文を解答する際にはとにかく問題に対して素直に解答してください。「名義書換未了の株主に対する株主総会の召集通知が行われた場合に、株主総会決議の効力について説明せよ」といった問題があったとします。問題を素直に読めば「株主総会決議の効力」について答えることが求められていると分かります。そしてそれに対して解答するのですから当然に答案上、株主総会決議の効力からスタートしていかないと問題に素直に解答しているとはいえません。すなわち、決議の効力→瑕疵はあれば効力に影響→名義書換未了の株主に召集通知→瑕疵といえるか?→会社側から権利行使を許容できるか?と進んでいくことになります。自然に問題提起もできるはずですし、このような流れを論理的であるというのではないでしょうか。ところがいきなり名義書換未了の話から入っていったりすると読み手としては「あれ?効力の問題じゃなかったかな?」となっていまいます。読み手に優しい論理の流れを心がけてほしいものです。問題を読んだ際に一部分に飛びつかないで、ゆっくりと素直に問題に答えていってほしいと思います。

第3節 制度説明は知識をしっかりと
 制度説明の問題については定義→総論・制度趣旨→各論という流れで論理を展開していくのが普通だと思いますが、差がつくのは各論つまり個別の制度をどれだけ書けるかにあります。短答の勉強をするようになると、どんどん知識が増えていくので制度説明型の問題に取り組みやすくなっていきます。往々にしてみんな知識不足ですので、短答レベルの知識をしっかりと定着させれば自ずと制度説明型問題の点数は上がっていくのではないでしょうか。もちろんそれぞれの制度の内容・趣旨を軽く述べるのは最低限のことですが。昔、小飯塚先生が「溢れ出してくる知識をいかに整理するか迷う」という表現を使っていたことがありますが、これが商法の上級者の感覚なのだと思います。知識は溢れ出てくるものであって捻り出すものではないようです。制度説明の答案構成に悩む人がいたとしたらその大きな原因は各論の知識不足にあります。溢れ出してくる知識をいかに整理するかと言う贅沢な悩みを持った上で答案構成をしたいものですね。

第4節 実務に触れる努力を
 商法という法律が特殊であるのは、民法など他の法律とは異なり、毎年のように改正がなされるという性質があるためです(ついには会社法になってしまいましたが)。そのため、昔から改正されずに残っている部分は少なくなってきており、なんらかの形で改正されている条文がかなりあります。さて、ここで何が言いたいのかというとそれだけ改正されることには理由があるということです。そう、時代の変化による実務からの要請により改正が促されるという法律が商法なのです。どんな法律であれ、その法律の趣旨は大事なものですが、特に商法においては実務からの要請により改正されることが多いことからその趣旨というものが重要になってくると思います。なぜ前の条文では不都合が生じ、実務からの要請により今の条文に改正されたのか、そのことをできるだけ念頭に置きながら勉強すると商法がより身近に感じることができると思います。

 一例を挙げれば、株主の帳簿閲覧謄写請求権です。なぜこれは発行済株式総数の100 分の3 以上の株式を保有している株主に与えられているのでしょうか。確か、昔の商法は10 分の1 という規定だったそうです。ところがアメリカの会社乗っ取り屋が日本の会社を乗っ取ろうとしたところ、株主の帳簿閲覧謄写請求権の行使権者がアメリカよりも制限されているのに腹を立て日米の協議により10 分の1 から100 分の3 へと要件が緩和されたそうです。別に細かいオタク的な知識を仕入れろ、と言っているわけではありません。たったこれだけ知るだけで、今まで自分の中では大した機能とも思っていなかった(それゆえ、答案に書き忘れることも多かった)株主の帳簿閲覧謄写請求権が意外に実務では必要にされるんだな、だからこそ株主の権利として強調されるべきなんだなということを感じることができるのです。

 何度も言いますが、商法は実務に大きく影響を受けます。毎日新聞には商法上の規定にもとづいて様々な公告がなされています。そういった実務にも思いをめぐらしつつ、効果的な勉強をしていただければと思います。

第6章 経済学
 経済学は得意・不得意が大きく分かれる科目です。ただ得意と言っている人のうちでも本当に理解している人というのは少ないと思います。つまりほとんどの人がよくわかっていないのです。よくあるパターンに乗せて計算していくと正解が出る、こんなのは理解しているとはいえません。経済学は言葉でもしくは図で説明できて初めて理解しているといえるのです。

 さて、経済学は実務で役に立つのでしょうか。よほど高度に勉強した方でない限り、直接的には役に立つ場面は少ないと思います。ただ、以下に述べるモデルの必要性を理解するということは会計士という業務においてだけでなく、その考え方自体が重要なのではないかと思います。

第1節 モデルの必要性を意識すること
 よく経済学を学ぶ人から、「実際の経済はこんなのじゃないから、こんな学問は無意味だ」と言う趣旨の言葉を聞くことがあります。確かに一見そのようです。ミクロ経済学で言えば企業が一つ、消費者も一つなんていう世界は現実にはありえません。実際私も昔はそういう考えでいたこともありました。しかし、実はこのモデル化という技術こそ経済学の要であり、だからこそ現実の問題を考えることができるのです。どういうことでしょうか?

 では実際に現実の経済と言うものを説明してみましょう。どう説明しましょうか?これは極めて難しいことです。現実の経済には本当に様々な要素が絡んでくるため、どうにもこうにもこのままでは説明することができません。「~とは、~ということだ」という何か結論を打ち立てようにもにっちもさっちもいかなくなっていまします。そう、あまりに現実の経済は複雑すぎるのです。

 しかし、なんとかして現実の経済と言うものを説明してみたい。そこで用いられるようになったのがモデル化という技術です。現実は複雑なのだから一つ一つ仮定をおいてみる。徐々に単純化することにより、こういう仮定であればこうなる、もしこういう仮定であればこのようになる、ということが分かってくるようになります。モデル化を行うことによって初めて、経済の性質の一部が浮かび上がってくるのです。それでは、様々な経済現象の性質の一部が分かってきたとします。では、現実をどう説明するか。それが経済学を学ぶものの腕の見せ所ではないでしょうか。モデル化により判明した様々な経済現象の性質をもとにそれぞれが味付けをして自分なりの見解を作っていくのです。「現実にはこの要素が大きいからこうなるな」とかいうふうにね。

 少しでもモデル化の必要性が分かると、経済学が苦手な人も興味が湧くのではと思って説明をしてみました。

第2節 公式に惑わされないように
 よく経済学が苦手な人の多くが、テキストに書いてある公式(例えばMRS=Px/Py)に妙に縛られてしまっていることだと思います。全体事項の第4 節でも述べましたが、経済学のテキストに太字で載っているこういった公式は、あくまでもその考え方を理解していることがそれを使うことの大前提にあるものです。しかし、実際には多くの人がこの公式に縛られすぎて逆に経済学を難しいものと考えてしまっているように思います。

 仮に利潤最大化問題を考えてみましょう。上にも書きましたがよくMRS=Px/Py を条件式として問題を解くと思います。しかし、個人的にはほとんどこの条件式を使って問題を解くということは私はありませんでした。極端なことを言えば、こんな条件式を使う必要なんて問題を解く上では必要ないのです。この条件式は楽に問題を解こうと思ったときにだけ利用すべきものだと思っています。利潤最大化問題は企業行動に関する問題ですから、Max 収入-費用(=利益)を解けばよいだけです。このことは、独占であろうと寡占であろうと同じことです。ここにMRS=Px/Py といった条件式を使う必要は何もありません。なぜならMRS=Px/Py という条件式はMax 収入-費用(=利益)を解く際に自然と登場してくるものだからです。機械的に条件式を使えば、間違える可能性も高いですが、毎回Max 収入-費用(=利益)を定式化して解く分には、あっても計算ミスくらいでしょう。それゆえ一番重要なのはこの定式化の作業になるわけです。
 このことは経済学のほかの条件式でも同じことで、実際のところ自分は公式というものをほとんど覚えたことはありません。MRS=Px/Py すらあやしいくらいです。ただ、答練の解答はいきなり条件式を用いて解説しているケースが多く、経済学が余計に難しく感じてしまう理由になってしまっているとは思います。条件式そのものよりもその背景にある理屈をきちんと理解していけば、自然と条件式に頼る解法はしないですむと思います。

第3節 基礎を大事に
 「基礎を大事に」とよく言います。第4 節でも述べたことですがなかなかそれができないものです。これは経済学においても同じでしょう。私はよく入門・基礎マスターのテキストを読むことを薦めています。経済で行き詰る人、結構得意な人、ともにです。入門・基礎マスターのテキストはかなりよくできていると思います。しかし、皆さん一旦上級コースに入ってしまうとなかなか入門・基礎マスターのテキストには戻らないようです。しかし、そこには極めて重要なことがいろんなところに散りばめられているのです。

 特によくマクロが苦手という人が多いようですが、私はその一つの原因としてマクロ基礎マスターの始めに出てくる三面等価、45 度線分析をしっかりと分かっていないことがあると思います。この辺りは学習が進んでくるとほとんど出てこない分野なのでみんな疎かにしがちではありますが、マクロを理解をする上で最も基本的で重要な部分だと個人的には思っています。三面等価が45 度線分析にどのように取り入れられているのか、貯蓄と投資がバランスするということはどういうことか?きちんと説明できる人はそう多くはないと思います。結局はそういったものへの理解が足りないことがその後のマクロに対する理解に影響しているのではないかと思います。

 入門期のテキストには結構経済学が分かっている人も戻って読んでみると意外に新しい発見があると思います。苦手な人はなおさら何度も読むべきです。

第4節 数学力について
 経済学は数学を前提として成立している部分が多いのが事実です。それゆえ、会計士試験においてもある程度の数学の実力は必要になりますが、ただ問題なのはどの程度まで数学の実力が必要になるのか?ということです。

 個人的には会計士試験レベルの経済学ではそんなに高度な(大学レベル)数学は使わないので数学に不安を感じたことはないのですが、やはり本当に数学が苦手な人は大いに不安を感じる、もしくは実際に分からないということがあるんだと思います。しかし、よく考えてほしいのはあくまでも経済学の試験であって数学の試験ではないということです。経済学においては数学はあくまでも問題を解く際のツールにしか過ぎません。本来であればツールである数学に対しても「なぜこうなるのか?」という疑問をもち理解をしていくことが大切なのですが、数学の試験ではない以上あまり深入りする必要もないですし、本質的に理解をしていないとしても致命的な状況にはならないと思います。幸いにして会計士試験で必要とされる数学は中学レベルの数学と微分です。これらであれば理解をしていなくても最悪は公式で対応してしまっても仕方ないと思います。数学の問題であればそんなやり方では点も伸びませんが、経済学は数学をあくまでもツールとして用いているに過ぎずそれ自体は学問の対象としていないので経済の応用問題を解く際もそれほど問題にはならないはずです。経済学ができないのは数学ができないからでは決してなく経済学が分かってないからであるだけです。

 数学が苦手な人は反復練習して、理解はできなくてもとりあえず「どのような時にどの式を使うか」「どうやって式を変形するか」は押さえておく必要があるでしょう。

第5節 図や言葉で説明できるように
 経済学というのは計算でカタがつくことが多いために、実際によい点が取れたからと言ってもそれが経済学を良く分かっているということには繋がりません。なんとなくいつもやっているようにやってみたら答えが出てしまう、そういう人が多いと思います。それが経済学の怖いところです。正解の意味するところが分からなくても点がついてしまう、それゆえ自分の真の理解が分からない。もちろん答えが出ないことにはお話にならないわけですから、当然しっかりと正解を導き出していただきたいわけですが、できる限り計算に頼らずに図や言葉を用いて「これはこういうことをやりたくて、そしてその結果出てきた答えはこういう意味がある」と説明してほしいところです。もしくは説明できるよう努力してほしいのです。大体、説明できない場合にはその分野の基本的な理解が足りないと言うことが多いと思います。逆に言えば図や言葉で説明できたらもう完璧といってよいのではないでしょうか。それくらい難しいことですが、だからといってもやらなければ自分が理解していない部分についても気づきませんし、見たことのないような問題に出くわしたときも対応することができないものだと思います。別に難しい問題を解けというわけではありませんが、普段から単に計算するだけという解き方をしている人では見方を変えた基本的な問題ですら点が取れない恐れもあります。どんな基本的な問題であっても単に答えがあっていたからいいと終わらせないで、ゆっくりその意味について考える習慣をつけてほしいと思います。特に自分で理論でやっているように論述してみると効果的でしょう。その習慣は本試験前にはかなりに実力となって貢献してくれることと思います。

第7章 経営学
 この科目は極めて捉えどころのない科目です。特に戦略論・組織論においては試験委員によって見解が違ったり、そもそも学問として成立しているのかすら疑問に思うこともあります。費やす時間という点では他の科目に比べて格段に少なくて済みそういう意味で楽なのですが、自分の解答に対する出来がいつも分からず、得点がなかなか計算できない嫌な科目でした。

 ある程度基本書を読んで、苦手にならない程度に勉強をしておいたうえで短答後に頭の中を整理するという形で勉強するのが良いのではないかと思います。意外にこの経営学の知識、最近よく使います。特に財務論は企業価値評価の業務をやろうとすれば必須の知識だと思います。

第1節 基本書
 経営学は確かに捉えどころのない科目なのですが、実は基本を押さえておけば本試験においては対応できるというのが最近の傾向だと思います。私も含め経営学は分かりにくいというように感じがちであるのは一つにはTAC の教え方のまずさがあると思います。テキストはやらずにむしろ試験委員などが書いた基本書的なものを読んだほうがよっぽど理解は深まると思います。

 では、なぜこんなことが起きるのか?経営学が実務から形成された学問であることは周知の事実かと思います。それゆえ、本来説明をする際には実際の話に多くの重点が割かれなければ理解しにくいのです。しかし現在のテキストではあれもこれもと様々な概念を掲載するがゆえに、一つ一つの説明があまりに貧弱なものとなっています。これはなかなか気づきませんが、学者が書いた基本書を読むとその分かりやすさにびっくりとします。「プロセス型って何だよ、複雑適応系リーダーシップってなんだよ(もう試験委員じゃないけど)、いまいち実感できないぞ」という感じに私はいつも思っていましたが、実際にその著書に触れると「なるほど、そういうことだったのか」というようにようやく試験委員の問題意識を理解できるわけです。実際に試験委員特有の問題が出るかは分かりませんが、授業を聞いても分からないようでしたら、基本書というめんどくさそうで実は理解するのに近道といえるものが用意されていることを思い出してみてください。

第2節 財務論について
 財務論はこれといった対策があるわけではありませんが、基本的なところを押さえておけばそれで十分かと思います。具体的には、資本コスト、配当政策、CAPM などといったところでしょうか。財務論は実際に実務において活用されているものなので、どのような場面でどんな目的でこの概念が活用されるのかということを常に念頭において勉強すると理解が深まると思います。

 例えば、ある企業が別の企業の株式を買収しようとする際、市場において購入するのであれば市場価格で購入するのが最も合理的かと思いますが、実際に株式を公開していればいざ知らず公開していない会社では株式の価値はなかなか分かりません。監査法人ではその際に資本コスト、CAPM を駆使することによりその企業の株価を算定する業務を行っています。なぜCAPM が必要なのか?そういったことを考えながら勉強することが面倒ですが最終的には近道かと思います。

 デリバティブはいらないと思います。人に差をつけられないように最低限のことが分かっていれば良いのではないでしょうか。

第3節 論理的であることが求められているわけではない
 経営学では厳密に論証をすることよりも、数多くの事柄を記述することのほうが評価が高いようです。この点、財表や商法とは異なる部分です。このことは学者に直に聞いてみたので、多分採点者もそういう考えで採点をするのだと思います。なんで?と言われるとこちらも困るのですが、おそらくこういうことではないでしょうか。すなわち、経営学での問題意識はいかによい企業経営を行うかにあります。こういった問題意識においては、世間一般に言われている経営を行うのではなく、よりよい皆が気づいていない経営の仕方を模索していると言えます。このような場合、世間一般に言われるような経営という一面しか見られないのでは経営学が求める能力とは合わないでしょう。それゆえ物事を多面的にみる能力というのが求められる、つまり一つの物事に対して数多くの事柄を列挙できることが求められるのではないでしょうか。

第8章 民法
 私は民法選択ではないので、民法の勉強法については基本的に何も言えません。ただ前職で金融機関に勤めていたことから民法が実務でどのように活用されているかはよく分かります。もちろん会計士の業務でも知っていれば十分にプラスアルファが期待できるものだと思います。最近は企業再生がブームになっていますが、その世界では民法の基礎知識があるのとないのとでは大違いです。当然不動産登記簿を読みこなして抵当権者の権利関係を把握する、そしてどういった弁済を行っていくか、などということはまさに民法の世界でしょう。

 どうも民法は大変そうな印象を受けますが、その苦労に見合うだけの知識ではあるので大事に勉強していただきたいと思います。

第3部おわりに
 会計士を目指している方々はどうしても、財務諸表の作成~監査の過程が自分達の気持ちの中で大きなウエイトを占めてしまっているような気がします。ですから、会計士試験に合格した後は、監査法人に行こうと考え、または一部の人が一般企業の経理に行こうとするのでしょう。

 さて、世の中で会計をきちんと学びたいという人たちはかなりの人数に上ると思います。特にビジネスマンであれば誰だってきちんと会計を理解したいと思っているでしょう。では、その人たちというのはどうして会計を理解したいと思っているのでしょうか。財務諸表の作成がしたいのでしょうか、それとも監査がしたいのでしょうか。実は多くの人が、会計士を目指す方々とは違った視点から会計を理解したいと思っています。それは、財務諸表を利用するということなのです。投資家はもちろんのこと、経営者であれば自分の会社がどうなっているのかが一番よく分かるのが自分の会社の財務諸表なわけですし、営業をする人だって取引相手がどんな会社か分からないと危なくて仕方ありません。

 会計士試験で勉強する知識は、一般社会で役に立つものばかりです。多くの人が本当は欲しいと思っている知識を、今まさに皆さんは勉強しているわけです。しかし、それも学んでいる人の意識が単に財務諸表の作成~監査という段階までであればどうでしょうか。本当は幅広く使えるはずの知識を自分でその範囲を限定してしまっていることにならないでしょうか。結構、そういった方が多いように思います。もっと幅広く可能性のある知識だということをよく理解してほしいのです。そして多くの人が本当はきちんと会計を理解したいと思っていることを。

 どれだけ試験勉強に集中できるかは、そのモチベーションにかかっていると思います。少しでもその手助けになればと思い、最後にこのようなことを述べさせていただきました。

以上